人生初歌集「あなたのための短歌集」でべしょべしょに泣いた

初めて買った歌集の感想を残しておこうと思います。
買ったのはこちら。

木下龍也さんの
「あなたのための短歌集」

購入したのは23年3月なので半年以上前ですね。
最高すぎて各位におすすめしまくったところ、何人か本当に買ってくれたみたいです。嬉しい。同時期に買った人もたくさんいて、みんなでどの歌が好きかという話もたくさんしました。

この歌集は依頼者がお題を送り、木下さんがそれを元にその人のためだけに作歌する、というものです。そんなふうに生まれた歌たちを、100首選んで本にしてくださっています。

さて、私がこの本を強くおすすめできる理由は、
・お題が具体的なものも多く、何を詠まれているのか汲み取りやすい
・人のための短歌なのでやさしさを感じられる
という点からです。
その短歌が何を詠んでいるのか、自分で考えたり深読みしたりするのも楽しいんですが、初心者的にまずはわかりやすく答えがある方がよいと私は思います。そして暗い歌もとても良いものなんですが、まずはあたたかく寄り添いがあるものの方がよいと思います。少なくとも私にはこの2点がとても合っていました。

載っている歌全部が良すぎて、少しページを進めては泣いて息切れして休憩する、という形で全部読み切るのに結構体力が必要でした。それくらい、刺さった歌が多かったです。いいなあと思った歌のページに付箋を貼り始めたら付箋まみれになってしまいました。

付箋をこんなにたくさん本に貼ったのも初めてです。

勝手ながら、いくつかご紹介します。
お題は私がぎゅっと短くしています。正確なものはぜひ本を手に取って読んでいただきたいです。お題を出している依頼者たちの文章も素敵です。

「悩む」とは想像力に火をつけて無数の道を照らすことです

033

決めることが苦手で踏み出すことが怖い人へ自分は大丈夫だと思える短歌
悩むことへの肯定がこんな風に表現されることに感動しました。
今まで悩んできたことも、これから悩むであろうたくさんの未来も、少しだけ大丈夫かもしれないと思えました。悩むとき、色んな選択肢を考えてしまいがちですが、そのたびにああ今私は無数の道を照らしているんだなと思えるといい。すぐにはそうなれなくても、そうなりたいなと祈っています。

愛された犬は来世で風となりあなたの日々を何度も撫でる

038

愛している犬との別れを考えて寂しさと恐ろしさを感じる人へお守りの短歌
なんてあたたかい歌なんでしょうか。いまだに読もうとすると声が震えてしまいます。かつて犬が家族にいた私に刺さります。大好きだったのに、してあげられなかったことばかり思い出してしまいます。風となった犬が飼い主を探して、見つけたら何度もじゃれつきに来る情景を思い浮かべると愛おしくて泣いてしまいます。私の頬を撫でる風が彼だったらいいなあと思います。

「まっすぐ」の文字のどれもが持っているカーブが日々にあったっていい

078

まっすぐ生きたいのにそうできない人へまっすぐ生きられる短歌
この歌集の表紙にも採用されている歌です。私がこの歌集を買おうと思ったのはこの歌を知ったからでした。まっすぐ生きられる短歌を、というお題に対してまっすぐじゃなくてもいいよ、とただ返すのではなく、ひらがなの柔らかさが寄り添ってくれているような許されたようなあたたかさを感じました。まっすぐ、まっすぐ、と思ってしまうときに、その言葉にはカーブがたくさんあるということを思い出せるといいなとおもいます。

絶望もしばらく抱いてやればふと弱みを見せるそのときに刺せ

094

人生のどん底にいる人へ一筋の光のような希望を与える短歌
このお題に対してこの歌を出されるのか、と感嘆のため息と涙が出ました。
この本の中で、選べないですけど、選べないですけど1首だけ選ぶとしたら私はこの歌が一番好きです。
飼い馴らしたり忘れたりするのではなく、懐柔して刺せという強さに痺れました。これが希望だというところも含めて最高です。いつか私の絶望も私の手で刺してやりたいです。

これを書きながらまた涙ぐんでしまいました。
初めて手に取った歌集がこの本でよかったです。短歌にある背景を、ある程度答えを提示された状態で読めたのが私には合っていました。
こんな風に言葉を紡げるといいなあと思って、今では私も短歌を作っています。上手にできているかわかりませんが、楽しいです。楽しめていることがうれしいです。詠んだものは全部noteに残しています。
>たとえばこんな感じ 短歌の記録(お題なし)|八重倉 (note.com)
短歌は中学校の国語の授業で触れたのが最後だった私が、短歌に泣いてしまう日が来るなんて、ましてや自分でも詠むようになるなんて。

いつか私も木下さんに短歌を詠んでいただきたいなあと思っています。

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