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矢月秀作「警視庁特務部逮捕特科アレストマン」(徳間文庫)

矢月秀作「警視庁特務部逮捕特科アレストマン」(徳間文庫)。電子書籍版はこちら↓
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 矢月秀作と言えばバイオレンス小説のイメージ。肉体のぶつかり、血飛沫舞う決闘、秘密結社の謎。今回は警察小説であるから、いつもの大暴れよりは秩序立っている。しかし6人の手勢は、男女ともども屈強の腕利き。それも捜査ではなく、逮捕そのものが目的の特殊部隊(アレストは逮捕の意)。だからこそ修羅場の危険も伴い、捜査の方針で手を引かなければならない事案もある。
 本作はヤクザの跡目争いに、結成した強盗団による上納金で巧く立ち回ろうとする輩の包囲劇。今流行りのSNSによる強盗団は、この小説の近似する社会現象だ。そこにはヤクザだけでない半グレや金に困った素人までが、事件に巻き込まれてゆく。だからこそ犯罪集団には、お互いに信頼がなく、どこかで綻びが生まれる。逮捕特科の優位性は、チームとしての結束力と信頼がある。それにしても神原チーフは、いかに格闘技の腕が立とうと、妹の璃乃をこんな危険なチームに加えるとは豪胆なことである。

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