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3年後の日本の恐怖

安生正「ヴァルキリー」(徳間書店)。この作品は、日本の3年先の近未来を描いている。その時の日本は、海外移民によるテロが頻発し、街中では多くの人々が口論する不寛容な社会。「悪は悪と戦い、悪を殲滅する」。グノーシス主義を現代に持ち込んだテロリストたち。ソマリア沖海賊への合同特殊作戦部隊に参加した、陸上自衛隊の香椎雄二・24歳はそこで地獄を見る。たとえ女子供であっても殺さねば、自分たちが殺される。帰国後に除隊して、防衛庁相手の桜徽商事を立ち上げる。しかし不景気で資金繰りに苦しむ。そんな絶対絶命時に、謎の男からの紹介で、上場企業の東都銀行から融資を受ける。その代償として、海外テロリストを捕縛する義務を負う。一方で拐われて人格改造された高山俊彦は、自分の親の仇が右翼の大物とドイツ首相と刷り込まれて暗殺を目指す。公安の東郷一郎警部は、それを阻止せんと自らの生活を犠牲にしてまで、暗殺犯を追う。数々のテロと暗殺事件の果てに、運命の糸に引き寄せられるような東郷と香椎。壮絶なクライマックスの先に、人が人を救おうとする希望が見える。「ヴァルキリー」とは古ノルド語の「ワルキューレ」(ワーグナー「ワルキューレの騎行」が有名)であり、北欧神話における、戦場で生きる者と死ぬ者を定める軍団を指す。
https://www.tokuma.jp/book/b524414.html

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