見出し画像

今野敏「迎撃〈新装版〉」(徳間文庫)

今野敏「迎撃〈新装版〉」(徳間文庫)。電子書籍版はこちら↓
https://www.amazon.co.jp/dp/B0CKHVWH61/
 セルビア戦地に特ダネ記事取材のために訪問したフリージャーナリスト・柴田邦久は、日本人傭兵と出会う。彼に「シンゲン」という、世界中から慕われる孤高の日本人傭兵がいると聞く。セルビア🇷🇸→アフガニスタン🇦🇫→メキシコ🇲🇽と追って、遂に柴田邦久は「シンゲン」と巡り会う。柴田邦久を自らが支援している民族運動のPRにしようと「シンゲン」は、同行を希望する柴田邦久を鍛えながらルワンダ🇷🇼に連れてゆく。「シンゲン」の訓練は厳しいものであったが、そこには故国を同じくする同胞への愛情が感じられた。その経験を経て、柴田邦久は異国の風土と本物の戦闘を体験する。
 人は興味のあることには深入りして、その世界に勘が働くようになるのだろうか? 柴田邦久が世界を放浪する「シンゲン」に出会えたことは奇跡的だ。人が人を殺すシーンは、初めて見た人には衝撃的である。ましてや柴田邦久は、自らが体験することになった。真実は虚構を圧倒する。戦場の現場を伝える記事が書けるようになった柴田邦久は一皮剥ける。本作品はもう70年近く戦争を体験していない日本人の平和ボケに警鐘を鳴らしている。さらに経済大国として天下泰平に生きている日本とは違って、飢えて犯されて殺戮される生命が世界各国にあることも示唆している。そして何よりも、平和という平凡がいかにありがたいことか。それでも戦地に何かを求めて訪れる人間の性も真実なのである。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?