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テキーラを飲みほして(2)


「ところで、大岸君は何歳なの?」

「僕ですか?24歳です。大学卒業したばかりです。」
と、何気に大卒をアピールした。

「そうなの、一流の大学だった?卒業したのは。」
「一流では無いです。・・・三流です。」
と、俯きながら答えてしまう。
「大学なんて、何処でも同じよ。
一流も三流もないわよ。
安心しなさい。」
と、陽気に言うのだ
…だったら、最初から一流なんて?聞くなよ…

「ここの店は働き易いわよ。ここで働いた人は皆んな言っているの。
良いところだと」

「だったら、何故アルバイトを募集してるのですか?
皆んな辞めなきゃ良いのに」

と、僕は素朴な疑問を持ち聞いた。

「私ね、ちょっと・・・ね、・・・・
個人的にね。・・・・」
と、言葉を濁しながら言う。

…もしかすると、若い男を誘惑するのか?
僕も誘惑されるのか!……

「私、こんな人間だから、お節介なのよ。
プライベートな事まで口を挟んでしまうの」

と、今度は饒舌に話してきた。

「それは、嫌だな〜。プライベートまで言われると・・・。」

僕は最近入社したばかりの会社を辞め、
尚且つ、大学時代から付き合っていた女性からも別れを告げられたばかりだ。
そう、僕は失恋したばかりなのだ!
その事根掘り葉掘り聞かれたら嫌だ!

「だから、もう聞かないって決めたのよ。
プライベートには関心持たないってね。
だから、大岸君安心してね。
2階の部屋空いているのよ、
住み込みで働けるわよ。
良いところでしょ。此処
明日から、きても良いわよ。」

…住み込みで働ける?アパート代が浮く!…
と、頭の片隅を通り抜ける

「でも、僕まだここで働くとは決めて無いし」
と、言っているのに、おばさんは何も聞いていない。
「明日から来てね。貴方の名前と住所を此処に書いて。」
と、ペンと紙を渡される。

結局僕はここで働く事になる。

だが、ここでの住み込みは
遠慮した。
そう簡単にアパートを変えるわけにはいかない。

この店は、開店が午後の7時からで
午前3時迄の営業。お酒を扱うお店
バーである。
従業員は僕と、若い女性が一人。

おばさんの事は「ママ」と呼ぶ様に命じられた。

ママは事を紹介しよう。
40代後半の女性であろう。
女の人に年齢を聞くのは、失礼にあたるからあくまでも想像だ。
見た目は美人だがスッピンは知らない。
芸能人で喩えると、伊藤ゆかりに感じが似ている。(ちょっと古い人だが)
いつも小綺麗にして魅力的ではあるが、
何故か独身。身に着けている物も何故か高級品。
もしかすると、金持ちのパトロンがいるのかも知れない。

もう一人の女性。
名前はサチコ。
おそらく偽名。
髪は茶髪でショートヘア。
これはママと同じ。
服装は派手な色合いの安物を着ている。
顔は丸顔でアンパンマンに似て、愛嬌だけはある。
ただ、おつむが少し足りないのか天然ボケだ。

「ママの作るカクテルは最高に美味い」
と,評判であり、料理も美味しいらしい。
常連の客が多く、店はそれなりに繁盛している。
午後の9時を過ぎる頃から忙しくなる。
二次会の場所として使われるみたいだ。

僕が働き出して1ヶ月が過ぎようとしていた頃、
店の前で転んでいる老人を発見する。





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