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テキーラを飲みほして(10)


…やっぱり何処にも行けなかった。
今日、あいつが私を誘ったのは、あの女の差し金ね
わざわざ、元嫁に見せつける為の策略。

それとも知らずに、私は・・・・。
本当に私ってピエロね。昔の夢を追い続けていた何て。
本当にお馬鹿さん。お人好しにも程があるわ。
これでキッパリと別れられる。
こちらから言うわ!あの人に
「グッバイ」てね。…



アスカはタクシーを降りて店へと向かった道で、以前会った娘に遭遇する。
泣きながら歩く娘の姿を見て、放置することが出来ないお節介者のアスカである。

「どうしたの、お嬢さん」
と、声を掛ける。
「あ・・貴女はあのお店のママさんですね。」
と、涙を拭う事も無くメグミは聞いた。

「そう、貴女は以前お店に来られた方ですね。
どうなされたのですか?」
と、聞いたとき、アスカは娘に抱きつかれた。
泣きながら娘は言う

「私、ママさんの店にいるヨウちゃんと喧嘩したの。
私が悪いの、ヨウちゃんの事好きだったのに、
お父さんに頼まれて、他の男と付き合ったの」
暗い夜道で人通りが少ないとはいえ、
二人の女が抱きあうのは人目につく。
怪訝な顔で通り過ぎる人を尻目に
アスカは言った。
「ヨウちゃんって誰?大岸君の事?」
と、言って娘の顔を見る。

「大岸君って誰ですか?ヨウちゃんの事?
あの人の名前は大木洋介ですが・・・」

「大木洋介?大岸君偽名を使っていたのね。
そんなことより、貴女はそのヨウちゃんの事、今も好きなの?」

「好きです。あの男と付き合ってから、
ヨウちゃんの良さがはっきりと解るようになったの。
でも私が悪いの二人の男を手玉に取る様な事をして・・・。」
と、また涙ぐむ。

「そうね、女って馬鹿よね。中々素直になれないのよね。
でも、恋愛って勝負事では無いわ。勝ち負け何て無いのよ。
最初に好きになったから負けでも無いし、
告白したからって負けでも無いわ。
素直に言葉にする事は素晴らしい事だわ。
お店に行きましょう。
振られた者同士、ハッピーエンドにしましょうか?」

「ハッピーエンド?」
訝しがる娘を連れて、アスカは店のドアを開ける。
アスカの目に入ったものは・・・・。

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