見出し画像

日傘の下 #虎吉の交流部屋初企画

夏なので、暑い。
毎日日傘を握りしめている。
買い換えたので、今年から新しい相棒になっていた。
前の日傘は約12年使っていた。
小6だ。大きくなったな。
最近は少し面倒になってきて、ちょっとぐらいは陽に当てられてもいいかと思う様になったが、日傘デビューした18歳の時は一瞬の日光も許さなかった。
日焼けをしたくなかったというのが理由だが、それとは別の想いもあった。

当時から永作博美さんに憧れていて、出演しているドラマ「四つの嘘」を借りて見た。
劇中、永作さんは質素な服を着て日傘を持っていた。
それがかっこよくて、真似したかったのだ。

長く使ってきた日傘は大分汚れた。
生地にはあちこちに白い線が入っていたし、柄の部分もめくれてはいけなさそうな所がめくれていた。
雨に降られた時が幾度もあったし、UV効果が無くなっていそうだった。
物に思い出を感じないタチだが、この日傘に対しては「捨てるんだな」と思った。

新しい日傘は、毎年人気で売り切れてしまうというものを、気合いを入れて冬の間に購入していた。
18歳の時に買ったものより値段が高く大きいので、身体をすっぽりと守ってくれて安心している。

日傘の中から外を覗くと、明るい陽射しに目が眩む。
暑い風と混ざって、憧れた人の白い肌が動く映像がよぎる。
柄を掴む手は、18の時と随分違うものになっている。
私は大きく遠くなっているのだと気付く、夏の下。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?