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ハードルとスパイラル

旅行するときのハードル

海外旅行をするとき、ぼくはその都度少しずつハードルを上げるようにしている。

はじめて1人で行った上海は、びびっていたので2泊3日で空港からホテルまで送迎があるパック旅行にした。現地では1人行動したが、上海の街をひたすら練り歩いただけだ。

次は送迎なしで、香港から深センに入る旅。また中国?と人には言われつつ、自分ではハードルが一個上がっていることを密かに感じていた。香港から電車で深セン入りしたときは本当に感慨深かった。
その旅行では、香港に着いてホテルで財布に入っている現金を数えていたとき、どう考えても最後の日のホテル代を払えない額しか持っていないことに気づいて(クレジットカードも持ってなかった)、最後の日のホテルをキャンセルし、最後は空港で一夜を明かす失敗もあった。

こういうハードルを少しずつあげる過程でUberやAirbnbを使ってみたり、州境や国境を越えてみたりした。まあ、ハードルとしてはかなり低いレベルである。

それに、そんなふうに少しずつハードルを上げなくても、一気に放浪の旅をしたり、年単位で海外生活とかすれば効率良くできることではある。それに対しては何を言っても言いわけにしかならない。

そうやって何年も経った末に、そういえば現地で人とほとんど交流していないことに気づいた。知り合いの知り合いとか身内レベルでは話したことがあっても、赤の他人とはコミュニケーションを取ったことがない。

知らない人とコミュニケーションを取るというのは、道行く人に声をかけて道を聞いたり写真撮ったり、食堂でそれ美味しそうだねとかそういうことではなく、もう少しガッツリ、相手と知り合いになるくらいのイメージ。そんなわけで、今回は外国で行われるワークショップに参加することにした。

短期講座を受けるスパイラル

日本では何度もワークショップや講座に参加して、知り合いができたり、誰とも知り合えなかったり、さまざま学んできて、もうこれ以上のレベルのものを学ぶとしたら、大学とか専門学校に行かないとダメかな、と今は思うようになりつつある。

それに、ワークショップを受けている自分は、「学びの最中」だから居心地が良い。ワークショップ後に、その学んだことを活かすことは面倒なので、すぐに次の「学び」へと進んでしまう癖を数年前からうっすら感じていた。
若者が社会に出ることを避けるために大学に行くことを以前は「モラトリアム」と言っていたが(最近はどうだろう)、講座やワークショップも、勝負を避ける言い訳に使うことができる。

1つの講座が終わると、すぐに次の講座を探す。
これは学びにまつわる何らかの負のスパイラルにはまっている状態だろう。実際、講座やワークショップだけで確固たるスキルは身につかないので、ほとんどの講座は物足りないまま終わる。得られるのはいわゆるひとつの「気づき」であって、気づいたことを活かすも殺すもその後の自分の行動にかかっている。本を読むのと同じ。
本当の意味でスキルやマインドセットが身につくのは日々の練習と実践が必要だけど、練習や実践は面倒でもあり、孤独な戦いでもあり、勝負に出る意味もあるので、それを避けるため策として、講座が終わった途端に次の講座を探す方法がある。
深く学び続けることと、表面的な受講で終わってしまうことの違いは紙一重だ。どんな講座であれ、それをきっかけに大きく伸びる人はいる。
もともとなにかしらのスキルがあったり、可能性に蓋をしてしまっていた人が、短い講座をきっかけに大きく開花することがある。だから短期の講座やワークショップが悪いとは思わない。

ハードルとスパイラルを経て

さて、それを踏まえた上で、デンマークのコペンハーゲンにあるインタラクションデザインの教育機関「CIID」が主催する5日間のワークショップを受けることにした。日本の講座を受けると、失敗しても金額的にそれほど痛くなかったり、まあいっか、と思ったりしてしまうことがあるが、海外までわざわざ行って「まあいっか」はないだろう。わざわざ行くのは、貪欲に元を取ろうとする策でもある。

しかし、上で書いたようなスパイラル的問題を考えていたこともあって、ぼくはこのワークショップを受けるかどうかずっと迷っていた。
あまりにも迷いすぎて、参加申込の最後の項目まで記入し、あとはクレジットカードの番号を入れるだけのところまで来て「やめだ!」 とブラウザを閉じたりしていた。
ところがその数週間後、事務局の人から「お前、申込フォームほとんど完成してるけどどうした?」とメールが来た。その後押しと、その後のやりとりで事務局の人の優しさに触れて、やっぱり参加することにした。

よし、今年の旅のハードルは、海外で知らない人とコミュニケーションを取ること、ワークショップに参加することだなと、あたかも最初から目標があったかのような形で、今年の夏、デンマークのコペンハーゲンに行くことに決めた。
意気揚々と行ったわけではなく、むしろ逆で、不安がずっと頭にこびりついていた。授業は英語で行われる。コミュニケーション以前にそもそも、授業の内容が何もわからないかも、という不安。このハードルは自分には高すぎるのではないか?と思いながら、会場に向かった。会場は、コペンハーゲンにある国連の施設UN CITYだ。

▶︎つづくかもしれない。


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