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柳生の駅にて

柳生やぎゅうの里ではない。

そちらは奈良県。
こちらは埼玉県。

ちょいと用事があっての東武日光線の柳生駅。場所は、栃木県の南の端、埼玉県の北の端、さらには群馬県の東の端。それらが交わるところ。の、すぐ近く。ああ、埼玉の北の端はちょっと違うか。まぁ、いいか。

駅から少し歩くと「三県境」という名所、とは言い難いかな。珍所かな。三歩で三つの県を巡ることができる。そんな場所である。寝転がれば、身体が三県にまたがって‥‥まぁ、水路に転げ落ちるのがオチ。


全国津々浦々から見物人が訪れるとのこと。
この一点が境界。


柳生駅へ。遠目に改札が見えた。そんなタイミングで電車が来た。上り方面は階段を登って下る必要がある。ダッシュしても間に合う気がしない。仮にダッシュしたとしても途中で力尽きるに違いない。あーあ。

改札へ。時刻表を見上げる。時計を見る。次は、ざっと30分後。待つ以外の選択肢はない。さて、どうするか。


少し歩いてみる。静かな町である。駅前に精肉店。カレーパンが有名らしいが定休日。もう少し歩く。柳生沼。水鳥が少々。そしてうなぎ屋。ちょうど昼メシ時。たまにはウナギでも、なんて思ったが、こちらでも待つことになるだろうしねぇ。


柳生沼。オオバンかな。


駅に戻る。無人駅ではない。はずだが、改札付近に人気ひとけなし。呼び鈴的なものがあった。奥で作業中とかそんな感じか。ホームをぶらつく。ここに止まるのは4両編成である。つまり短い。あっというまに端に着く。

見渡す限り誰もいない。天気もいい。のどか。漢字では長閑。忙しい時なんかに憧れるアレ。ぼーっと空を見上げる。ふぅ。なるほど。これは、しかし、すぐに飽きてしてしまうね‥‥。


長いっちゃあ長い。東京のそれと比べるのも野暮ってもの。
上り方面。信号が赤に。踏切が鳴りはじめて‥‥。
特急スペーシア登場。100系。ほぼ無人のホームを駆け抜けていく。


テキトーに写真を撮る。それなりに年季の入った建物である。Wikipediaによれば開業は1929年とある。昭和4年である。戦前である。もうすぐ100年か。

来年2025年は昭和100年。そして昭和100年問題というのがある。2000年問題と似たようなもので、要は桁数が不足する。ちなみに我が実家で請求書なんかを作っているシステムは今も平成で動いている。


駅舎は木造。質実剛健。屋根を支えて数十年。たぶん。
やきゅう。ではない。
昭和感たっぷりのコンセント。用途は何だろうか。
サビだらけでも見るからに頑丈。
ただただ味わい深い。


年季の入った駅舎に新しめのスピーカー。びってやつか。違うか。まぁいいか。チラと時計を見る。もう少し。なんとなしに鉄骨のサビを眺めていると、チ、チ、チ、と、かすかな音が聞こえた。周期的と思われた。マイクがなにかを拾っているのか?

とも思ったが、どうもなんとなく聞き覚えがある。壁は数メートル先で途切れている。ちょいと歩いて裏側を覗き込む。音がほんの少し大きくなった。目を凝らす。む。なにか動いた。


カシラダカだ!


素早くカメラを引っ張り出して撮影。数枚撮ったところでアナウンス。慣れてそうなものだが、音に驚いたか、逃げてしまった。

電車、来ちゃったか。

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