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【小説】「きみはオフィーリアになれない」

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謎の魚「オフィーリア」をめぐる、現代社会を生きる3人の群像劇。
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小説「きみはオフィーリアになれない」のkindle版配信開始しました!

以前書いた「きみはオフィーリアになれない」という作品に大幅に加筆・修正したkindle版を配信…

やひろ
3か月前
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「きみはオフィーリアになれない」あとがき

こんにちは、やひろです。 長きにわたりここで連載してきました、「きみはオフィーリアになれ…

やひろ
3年前
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「きみはオフィーリアになれない」 川嶋美禰子 後編 最終話

「なに?」  女性は、珍しい花でも見るような目つきでこちらを見ている。この女はすべてをわ…

やひろ
3年前
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「きみはオフィーリアになれない」まえがき

「きみはオフィーリアになれない」というタイトルの小説の連載をはじめます。 noteでは「黄泉…

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 安達凛子 前編 #001

●主要登場人物 安達凛子………旅行代理店勤務 梶原江利子……凛子の同僚 瀧本達郎………メン…

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 安達凛子 前編 #002

 先輩とは同じ大学に通っていたが、一緒の授業を受けていたわけではない。そもそも凛子は文学…

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 安達凛子 前編 #003

 凛子はその魚を一目で気に入った。休みの日に、先輩が車に水槽と用具一式を積んでやってきた。そして、飼い方の説明をしてくれた。エサは水槽に生えている水草とコケだけで十分で、特別に追加する必要はないらしい。  その日から魚との同居生活が始まった。水槽やコケを食べているところを見たことがなく、死んでしまうのではないかと焦ったが、魚はときどき生きていることを思い出したようにぐるりと水槽をまわる。光沢のない純白のウロコをしていて、見つめていると、鏡を至近距離で見つめているような、不思議

「きみはオフィーリアになれない」 安達凛子 前編 #004

 凛子は手すりを掴むと、台によじのぼるような動きで、柵の上に立った。普段は全く意識しない…

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 安達凛子 前編 #005

 しかし、ちょっと噛まれたぐらいで、こんなに効くなんて。これは猛毒ではないのか。  そう…

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 安達凛子 前編 #006

 どうすれば夢から覚めるのだろう、と凛子は考えた。夢から覚める方法について考えたことなど…

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 安達凛子 前編 #007

 不意に、凛子のすぐ右のドアに、何かをこすりつけるような音がした。ドアに何かがこすりつけ…

やひろ
4年前
27

「きみはオフィーリアになれない」 安達凛子 前編 #008

「エイジくんか。クラゲさんがどういう人かはわからないけど……たぶん、知らないと思う」 「…

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 安達凛子 前編 #009

「おやすみなさい」 「ちょっと、ちょっと、待って! あたしはどうすればいいの?」  凛子は…

やひろ
4年前
25

「きみはオフィーリアになれない」 安達凛子 前編 #010

 自分は疲れているだけなのだ。そう、ちょっと疲れているだけ……。  ちょっとだけ、眠らせて……。  うとうととして、コーヒーマグを自分の前から退け、テーブルに突っ伏して寝ようとした。  そのとき、ガタッと、玄関と部屋を繋ぐ引き戸が開いた。  あまりにも普通にドアが開いたので、一瞬、何が起きたのか理解できなかった。  エイジと名乗る少年が入ってきたのか、と瞬間、そう思った。  凛子は椅子をはねのけて立ち上がった。引き戸は開け放たれたものの、人が入ってくる気配はない。心臓が高鳴っ