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人は理性や感情ではなく、空気で動く

いまの仕事になってからは皆無なのだが、以前の職場ではよく面接をしていた。前職はベンチャー企業で社員が10名程度しかおらず、しかも自分はマネージャーの立ち位置だったので、面接をするのは自然な流れだった。

会社規模は小さかったが、業務で外国語をメインに使うことが必要な関係上、結構高学歴の人が面接を受けにくることが多かった。新卒は取っていなかったのだが、経歴的にはほぼ新卒の人もいたし、それなりに経験が豊富な人もいたりと千差万別だった。

面接はそれほど頻度が高いわけではなかったが、ふた月に一度ぐらいはやっていただろうか。一度に複数人面接するので、累計人数でいえばそれなりかな、と思う。

面接をして気づいたことがある。それは、相手が緊張しているとこっちまで緊張してくる、ということだ。相手ほど緊張することはもちろんないが、ある程度は伝染してしまう。であれば、自分が新卒のときに面接を受けた際、ピリッとした空気を感じたのだが、あれは自分の空気が重かったのも一因かもしれない。

最近、相手が緊張していたり、人見知りだったりするときに、意図的にちょっと間延びしたトーンでしゃべる、ということを心がけている(以前からやっていたかもしれないが、より意識的に行うようになった)。営業で客先に行ったりしたとき、相手の様子次第であえてちょっとだけ気の抜けた感じで声をかける。

別に普通にビジネス的にクールなトーンでもいいのだが、こちらの雰囲気次第で、「空気」がコントロールできることがわかってきたような気がするのだ。営業でいうと、いかにも「営業です」みたいなトーンだと身構えられる。ちょっと遊びにきました、みたいな感じだと、相手も少しは警戒を解く。

そういえば、映画やドラマなどでは、老練な手だれほど、つかみどころがないというか、ひょうひょうとしたところがあるが、その感覚に少し近いかもしれない。

相手が怒っているとき、そのままのテンションで対応すると、喧嘩になってしまう。当たり前だ。かといって、相手の気に屈服したような態度で接すると、さらに相手が図に乗ってしまう。大事なのは「受け流す」というか、受け止めつつ、まともにはぶつからない、みたいな態度かな、と思っている。なかなか抽象的で難しいことなのだが、だんだんそういうことができるようになってきたかも。

常にそうできるとは限らないのだが、こちら側の雰囲気で、少しでも空気をいい方向に持っていくことが大事だな、と思っている。カメラマンとかライターの人にも必須の能力だろう。

それは人間の感覚がいい加減だからできることだろう、と思う。人間は理性で動いているように見えて、実はぜんぜん理性で動いていない。では感情で動いているかというと、感情だけでも動いていない。仮に感情で動いていたとしたら、むしろ理性がそれを戒めるほどだ。

じゃあ何で動くのかというと、「空気」で動くのだと思う。空気、雰囲気、その場の思いつき、反応、みたいなもので人は動く。であれば、相手が緊張している場合、それを少しでも緩和してあげられるように接することが大事なのかな、と。

ChatGPTなどの生成AIと会話をしていると、むしろ人間っぽいな、と感じることが多い。生成AIは計算機と違い、正確な情報を必ずしも返してくれるわけではない。むしろ、その場の空気というか、雰囲気で回答してくるようなところがある。「空気」を会得しはじめたのが最近のAIというところだろうか。

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