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経済法論証集

1.「共同して」(2条6項)の意味(A)
「共同して」(2条6項)とは、意思の連絡があることを意味する。
そして、意思の連絡とは,複数事業者間で相互に当該行為の実施を認識ないし予測し,これと歩調をそろえる意思があることを意味し,一方の行為を他方が単に認識,認容するのみでは足りないが,事業者間相互で拘束し合うことを明示して合意することまでは必要でなく,相互に他の事業者の行為を認識して,暗黙のうちに認容することで足りると解するのが相当である。(東芝ケミカル事件判決)

2. 「相互にその事業活動を拘束し」(2条6項)の意味(A-)
「相互にその事業活動を拘束し」(2条6項)の要件を満たすためには、①相互に一定の制限を課し(拘束の相互性),②制限を共通に設定していること(拘束内容の共通性)が必要である。(新聞販路協定事件)
もっとも、②拘束内容の共通性の要件を満たすためには、拘束の内容が行為者全てに同一である必要はなく、特定の事業者を排除する等共通の目的の達成に向けられたものであれば足りる。(流通取引ガイドライン第2部第2の3注2)

3.「一定の取引分野」(2条6項)の意味(A+)
「一定の取引分野」(2条6項)とは、競争の行われる場である市場を指す。
そして市場は、主に商品範囲と地理的範囲について、基本的には需要者にとっての代替性の観点から、必要に応じて供給者にとっての代替性の観点も加味して画定する。

4.「競争を実質的に制限する」(2条6項)の意味(A)
「競争を実質的に制限する」(2条6項)とは、競争自体が減少して、特定の事業者又は事業者団体がその意思で、ある程度自由に、価格等の競争変数を左右することによって、市場支配力を形成・維持・強化することを意味する。(東宝スバル事件・NTT東日本事件)

5.正当化事由(A+)
現に行われた行為が形式的に2条6項の要件を満たす場合であっても,独占禁止法の保護法益である自由競争経済秩序と当該行為によって守られる利益とを比較衡量して,『一般消費者の利益を確保するとともに,国民経済の民主的で健全な発達を促進する』という独占禁止法の究極の目的(同法1条参照)に実質的に反しないと認められる場合には、例外的に当該行為は『不当な取引制限』に当たらないと解すべきである。(石油価格協定刑事事件)
そして、このような正当化事由の有無は、①目的の正当性と②手段の相当性の観点から判断する。

6.不当な取引制限における合意からの離脱(B+)
合意から離脱したことが認められるためには,離脱者が離脱の意思を参加者に対し明示的に伝達することまでは要しないが,離脱者が自らの内心において離脱を決意したにとどまるだけでは足りず,少なくとも離脱者の行動等から他の参加者が離脱者の離脱の事実を窺い知るに十分な事情の存在が必要であるというべきである。(岡崎管工事件)

7.「排除」(2条5項)の意味(B)
「排除」(2条5項)の要件を満たすためには、①正常な競争手段の範囲を逸脱するような人為性を有するものであり(人為性)、②他の事業者の本件市場への参入や事業継続を著しく困難にするなどの効果を有すること(排除効果)が必要である。(JASRAC事件)

8.当該行為が事業者団体の行為といえるか(8条各号)(B)
事業者団体の何らかの機関で決定がされた場合において、その決定が構成員により実質的に団体の決定として遵守すべきものとして認識されたときは、その決定は団体の決定といえる。(大阪バス協定事件・兵庫県牛乳商業組合事件)

9.「購入させ」(一般指定10項)の意味(B-)
「購入させ」(一般指定10項)の要件を満たすためには、ある商品の供給を受けるのに際し,客観的にみて少なからぬ顧客が他の商品の購入を余儀なくされるような抱き合わせ販売であることが必要であると解する。(藤田屋事件)

10.「拘束」(2条9項4号)の意味(A)
「拘束」(2条9項4号) があるというためには,必ずしもその取引条件に従うことが契約上の義務として定められていることを要せず,それに従わない場合に経済上なんらかの不利益を伴うことにより現実にその実効性が確保されていれば足りる。(第一次育児用粉ミルク(和光堂)事件)
(※一般指定11項・12項の「条件」も同様に考えて大丈夫だと思います。)

11.資生堂東京販売事件判決(B-)
メーカーや卸売業者が販売政策や販売方法について有する選択の自由は原則として尊重されるべきであることにかんがみると,これらの者が,小売業者に対して,商品の販売に当たり顧客に商品の説明をすることを義務付けたり,商品の品質管理の方法や陳列方法を指示したりするなどの形態によって販売方法に関する制限を課することは,それが当該商品の販売のためのそれなりの合理的な理由に基づくものと認められ,かつ,他の取引先に対しても同等の制限が課せられている限り,それ自体としては公正な競争秩序に悪影響を及ぼすおそれはなく、一般指定12項にいう相手方の事業活動を『不当に』拘束する条件を付けた取引に当たるものではない。(資生堂東京販売事件判決)

(注)
・この論証集に登場する条文は、特に断りのない限り独占禁止法の条文を意味しています。
・この論証集には、僕の独断で判例の文言を勝手に改造した部分が何箇所かあります。ご了承ください。
・この論証集は、予備試験に受かったわけでもない暇な大学2年生が作ったものです。あまり信頼しすぎず、使う際は自己責任でお願いします。
・なにか間違いを見つけた場合は、コメント欄やDMで教えてもらえると嬉しいです。


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