墓参り

 春の彼岸を少し過ぎていたが、免許を持たぬ母を連れ、妻と週末に父の墓参りをしてきた。東京の下町では、散歩の途中でたびたび寺の一角に小さな墓地を見掛けたが、北海道内の町村の墓地は往々にして町の外れにあるように感じる

▼故郷の公営墓地も丘の上だ。実家からだと1キロほどだが、30メートルくらい高いところにあり、道は結構な勾配で徒歩だと大変。だが母は「彼岸のうちに一度は」と歩いて墓参りを済ませていた

▼それだけ歩けるのは健康な証拠でありがたい話。だがふと、運転もできず、身内が近くにいない独居のお年寄りが盆や彼岸に墓参りをしたい場合、どうしているのかと思った

▼バス停が近ければ良いが田舎では厳しい。タクシーは自宅から墓地が遠いと年金暮らしには負担大。隣近所でも付き合いが薄ければ気も許せない昨今、「墓参り代行」があるのもうなずける

▼こんな時こそ行政が、期間限定の「墓参バス」を運行できないだろうか。「行けるうちは自分の足で夫に会いに墓まで行きたい」。住民のそんな小さな願いをサポートできるマチ。老いても穏やかに暮らす親の様子を見た子らは、将来はここに住もうと思ってくれるかもしれない

▼墓参に限らず、小規模自治体だからこそできる、細かな気配りの利いた公約を掲げる人はいないかな。統一地方選を前に、墓を眺めつつそんなことを考えた。

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