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【掌編小説】なんでも商品券

 わたしは帰り道、謎の老婆から、世の中のどんなものでも買える商品券「なんでも商品券」を譲り受けた。その商品券は凶々しいオーラをまとっており、本来、この世にあってはならないものだという。
 老婆は言った。
「せいぜい気をつけなさってください。この商品券に心まで取り込まれないように」


 わたしは一晩じっくり考えて、そのなんでも商品券を破り捨てた。金持ちのわたしにとっては、これはただの小切手ではないか。そして、値段というものを愚弄している。亡者に取り憑かれるリスクがあるなら、破り捨ててしまえ。

(了)


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