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外国の古い寓話①

大昔、大学の語学の授業で読んだ寓話の話が未だに忘れず私の頭の中に残っている。恐らくは有名でも何でもない寓話だったと思うが、原文で読んでいたので集中していたからか、何かが私の中に引っかかったからか分からないが、とにかく忘れようとしても忘れられず今でも覚えている話である。

文章の他に挿絵もあり、その絵は暗い夜道に一つだけ街灯が点いていて、その街灯の下で男がうずくまった姿勢で地面上に何かを探しており、そこに通りかかった別の男が、うずくまった男に問いかけている絵である。

通りかかった男はうずくまった男に「一緒に探してあげましょう」と親切に声を掛ける。そして小一時間すべて見える範囲を探し切ったが見つからない。一緒に探してやった男は「もう見つかりませんよ」と諦め顔で言ってみた。しかしうずくまった姿勢の男は「あれが見つからないと大変なことになるんですよ」と涙顔で言う。仕方がないなぁと思いながらも乗り掛かった舟だと、再び一緒に探したものの結果はやはり見つからなかった。

通りがかりの男は帰ろうとしたとき最後に確認として、「本当にここで落としたんですよね。歩いている途中で落としたってこと等はないですか?」と聞いてみた。するとうずくまった涙目の男は初めて顔を上げて、「いえね、本当は向こうで落としたんですが、向こうは暗いんで、こちらの明るい所で探しているんですよ」と言った。

話はこれで終わりとなる。
この話が、この歳になった今でもずっと頭の中に残っているのだ。凄い寓話だと思わないだろうか?
・・・<続く>
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【記】やく・たたず(屋久 佇(竚))

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