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「クレジット表記不要」は日本国外で有効か ?

BOOTHでも割りと「権利表記不要」は見るのだけど、これはクリエイターに不利益かもよという話をします。

日本では権利表記がなくても著作権は留保される

回りくどくいうのは嫌いなので単刀直入に、日本の著作権法では、著作権表示がなされていないことによって著作権を放棄したとはみなされないので、著作権を保持しつつ「権利表記不要」というルールは有効です。

米国著作権法ではどうか?

GNUやBSD、MITライセンスなどのフリーソフトウェアライセンス、クリエイティブコモンズなどのデータに対するライセンスは米国著作権法に基づいています。

日本の著作権法と互換のある部分もあれば違う部分もあって、権利表示に関しては違うところの一つです。

第401条 著作権表示:可視的コピー
(a) 総則
本編に基づき保護される著作物が著作権者の権限により合衆国その他の場所で発行される場合には、直接または機械もしくは装置を用いて著作物を視覚的に覚知できる公に頒布されたコピーに、本条に規定する著作権表示を付加することができる。

(b) 表示の形式
コピーに表示がなされる場合、以下の三つの要素を含まなければならない。
  (1) C記号(丸の中にCの文字)、または「Copyright」の語、または「Copr.」の略語。
  (2) 著作物が最初に発行された年。既発行の素材を含む編集著作物または二次的著作物の場合、当該編集著作物または二次的著作物が最初に発行された年で足りる。絵画、図形または彫刻の著作物(付属する文章を伴う場合を含む)がグリーティング・カード、はがき、文房具、宝飾品、人形、玩具その他の実用品に複製される場合、発行年を省略することができる。また、
  (3) 著作物に対する著作権者の名称、または名称を認識できる略称、または当該著作権者を示す広く知られた他の表示。

(c) 表示の位置
表示は、著作権の主張につき合理的な告知を与える方法および位置に配置しなければならない。著作権局長は、例として、様々な著作物における上記要件を満たす表示の添付および配置の特定の方法を規則により定めなければならないが、これらの特定は限定的なものと解釈されてはならない。

(d) 表示の証拠能力
本条に定める形式および位置の著作権表示が、著作権侵害訴訟の被告が入手することのできた既発行のコピーになされている場合には、被告の善意の侵害に基づく抗弁は、第504条(c)(2)最終段に定める場合を除き、現実損害賠償額または法定損害賠償額を減殺するために一切考慮されない。

たとえば
 ©️ 2020 Yakumo Sayo. All rights reserved.
とか書くのですよね。

ちゃんと意味がありますし、パブリックドメインを除いてはクレジット表記不要をうたうライセンスが存在しないことも含めて、アメリカの法律は「権利は主張しなければ失われるものと思え」という考え方に基づいているのです。

ここでいう(d)の「善意の侵害の抗弁」というのは、要するに、著作権表示がなされていないことによって、被告側が誤って権利を侵害したとしても権利者側の過失となり、不法行為の責任が減免されることがあることを意味します。

表示の欠落は権利放棄の擬制か?

第405条は1988年のベルヌ条約試行法以前の著作物につき、401条の要件を満たしていなくても権利が喪失しないことを明記していますが、それ以降に「著作権者の権限により表示を欠いた場合」の権利救済を明言しません。

権利放棄とみなされるか、それでなくとも401条(d)項によって言及される善意の侵害の抗弁に対抗できないと考えるのが良いでしょう。

第405条 著作権表示:特定のコピーおよびにおける表示の欠落(a) 著作権に対する表示欠落の効果
1988年ベルヌ条約施行法の発効日より前に著作権者の権限により公に頒布されたコピーまたはレコードについては、著作権者の権限により公に頒布されたコピーまたはレコードから第401条ないし第403条に定める著作権表示が欠落していても、以下のいずれかの場合には著作物に対する著作権を無効にしない。

パブリックドメイン化したいのでなければ「日本においてのみ権利表記不要」と意思表示した方が無難であるかなと思うのです。

VRChatもYouTubeも海外のサービスである

忘れがちな事実ではあるけど、日本のサービスで日本人だけが使う閉じた運用であれば日本の法律だけ頭に入れていればいいのだけど、日本でしか通用しない法律を、海外のサービスに持ち込んで海外のユーザーに日本の法律の有効性を主張しても泣きを見るだけかと。

結論

インターネットで全世界に公開できるデジタル著作物は、その性質上「日本でだけ適用」など条件を付さずに「権利表記不要」と明記するのはあまりおすすめできないというのが私の意見です。

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