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Plastic Treeは「つかみどころのない、海月なバンド」

音楽を好むようになってから、ずっと好きなバンドがPlastic Treeだ。
勿論他にも好きなバンドやアーティストは沢山あるし、そういう大きな括りでの音楽話は別でやるとして、ちょっと「本命バンド」について書こうと思う。

丁度私のTwitterアカウントが凍結された日にライブがあり、その配信チケットを買っていたおかげで私は理性を保っていたところがある。
ライブ配信のアーカイブ視聴期限ぎりぎりまで再生ボタンを押した。
セットリストも凝っているし、ライブアレンジされた楽曲は心地よく、相変わらず照明などが凝っている。
で、まあそういうことと同時に思ったのが。

この人達、相変わらず年齢不詳だな……

だった。

しれっと「まだまだ若手ですけど?」みたいな感じで活動しているが、結成されたのは1993年とかあの辺である。
メンバーは、

  • 有村竜太朗(ボーカル、ギター)

  • 長谷川正(ベース)

  • ナカヤマアキラ(ギター)

  • 佐藤ケンケン(ドラム)

ドラムだけ脱退と加入があるものの、他のバンドが活動休止や解散をしているのを横目に活動を続けている。
因みに、ファンのことは「海月」という。
ヴィジュアル系の中にはいるものの、音がオルタナティブだったりシューゲイザー系だったりするので、そういう音楽を求めている人にはオススメしたい。

で、年齢不詳の話だ。
結成時期でまあまあ予測はつくとしても、結構なお年の筈である。
近い時期に結成された元PIERROTのキリトが50歳を迎えたと公表したし、まあそれくらいの年齢ではあろう。
ドラムのケンケンが一番若いが、それでも45歳だ。
でも、45歳の見た目かと言われると「いやいやいや」と首を傾げたくなる。

Plastic Treeの話をしようとして検索をしたらウィキペディアにメンバーの生年月日が載っており、そこから計算すると他三人は今年で50歳と既に50代だった。マジかよ。ありがたいことだが、推しが50代になるとは思わなかった。
いや、まあ同期のバンドマンとか後輩バンドが……と考えればそりゃそうなのだが。確かに若いバンドマンと比べれば色々違うのだが。
なんでか、年齢不詳感がすごい。

虜とラーがアクロの丘とメギドの丘で宗教戦争をしている時には絶望の丘にいて、GACKTがマリスミゼルで月下の夜想曲を歌い踊っている時には「Sink」で夢の中に溺れていたと書けば、バンギャの方には理解してもらえると思う。
バンギャ以外には怪文書だが。

もう少しかみ砕こう。
その昔、Dir en greyのファン(虜)とPIERROTのファン(ラー、ピエラー)は対立していたそうだ。90年代の二大派閥というか何なのか……原宿の神宮橋でそれぞれのファンが集まっていたとか、ファン同士で牽制しあっていたとか……時を超え、まさかの対バンが果たされた時にはひっくり返ったものである。
どちらもカリスマ性のあるバンドなので、是非それぞれのライブ映像を見て欲しい。ファンの動きで腑に落ちるものがあるので。蛮族と軍隊が見れるYO。
で、そういう二大カリスマのファンがバチバチやっている時にPlastic Treeは既に活動していたわけだ。
音楽だけでなく格付けチェックで毎年話題になるGACKTも、昔はバンドのボーカルだった。マリスミゼル。此方もとんでもないカリスマバンドだ。
多分此方もライブ映像を見て貰った方が早い。宝塚かな?となるがバンドのライブである。
そういやマリスミゼルのメンバーだったMana様も年齢不詳感がすごい。
で、そんなGACKTボーカル時代の有名曲が月下の夜想曲。多分90年代のヴィジュアル系の知識がある人は今でも何となく踊れるのではないだろうか。
そしてマリスミゼルがそうやって活動している時に、Plastic Treeは「金田一少年の事件簿」のアニメEDに曲が使われていた。もしかすると聞いてみて「聞いたことある!」となる人が一定数居そうである。

こうやってつらつら並べていくと、「やっぱり長く活動しているんだよなあ」と実感する。
実感するのだが、やっぱり何処か年齢不詳感がすごい。
このあとの、ネオヴィジュアルとかの流れにもしれっといるのだから不思議なバンドだ。

理由をあれこれ考えて出たひとつの仮説が、「化粧と衣装」である。

ヴィジュアル系は、お化粧して着飾ることにも比重を置いている。
びっくりするほど可愛いメンバーがいたりすることも少なくない。性別が迷子がわりといる。
で、その化粧が薄くなったり衣装の方向が変わっていくことに対してファンは不安を感じることが多いのだ。
このままヴィジュアル系ではなくなってしまうのではないか、バンドの音楽が変わってしまうのではないか、その他諸々。公式からの「大切なお知らせ」の文字が一番怖いのがバンギャである。

曲のMVによって衣装があったり、メイクがあったり。
ファンの中でも「あの時の衣装が好きで」みたいな話題が出るし、バンドマンのコスプレをする人も少なくない。

で。
Plastic Treeの場合だが、これがちょっと難しい。
なんというか、「だいたいこういう衣装とか化粧だったよね」はあるものの、明確に衣装をという話になるとぼんやりしてくるのだ。

目の周りを黒くして、たまに唇が黒い時もあって……だいたい有村氏は黒髪で、正さんが金髪で……くらいのもんである。
活動初期の頃辺りは、有村氏がぱっつん黒髪の半ズボンにニーハイだったよね、くらいのもんである。
明確に「あの衣装!」という話が出にくいと思う。他のバンドに比べて。
勿論衣装はおしゃれなので特に問題も何もないのだが、分かりやすい衣装というものがない。
つかみどころがないものの、だからといって形が消えるわけでもなく……何というかまさに海月といった感じだ。海月という生き物の生態を考えると、更に「それっぽいなあ」と思う。
楽曲の世界観や衣装などが多少他の彩りを持っても、なんとなく馴染んで彼らの音だと理解できるのだ。
不思議だけれど、正直長く活動してくれているだけで有難いので良しとしよう。

そうやって堪能していたライブとそのアーカイブだが、MCの中で有村氏の口からいよいよ「老体に鞭打って」という言葉が飛び出した。
確かに、楽器弾いたり歌ったり煽ったりとライブはやることが多いし体力を使うもんだろう。
でも、彼らが頑張ってくれるのなら海月のひとりとしてついていく。
「まだまだ遊んでくれますか」「まだまだ遊んでくれるよね」と呼びかけられたなら、拳を上げる。
彼らの音は、楽しいのだ。

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