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薬の正しい使い方③~薬を指示通り飲まないとお金も時間も損する?~

どうも、薬剤師の川島です。

今日は薬の正しい使い方③『薬を指示通り飲まないと損するかも』というテーマで書こうと思います。

過去回はこちら↓

①『薬を指示通りに飲む理由』

②『副作用が出ても薬を飲み続ける?』

医療は科学?

まず、今の医療の基本的な考え方を共有させてください。

今の医療の考え方はEBMです。

逃げないでくださいね。

EBMとは科学的根拠に基づいた医療です。

まだわかりにくいですよね。

言い換えると

「過去のデータを根拠に現時点で最適な医療をあなたに提供します」

こんな感じです。伝わりますか?

科学的な思考のイメージを共有します!

ちょっと話がそれますが、科学的根拠に基づいた医療、の科学についても共有したいと思います。

言葉の定義はウィキペディア君にお任せするとして、(興味ある方はググってください)

ここで伝えたいのは科学的な思考のイメージです。

ざっと書くとこんな感じです。

(いわゆる理系脳の思考はこんな感じでしょうか)

理論上こうなるよね?(仮説をたてる)

⇒よし、やってみよう!(検証、実験)

⇒結果①その通りだった!(結果)

⇒この理論は正しかった!(考察)


結果が『思てたんと違う!』時は、こんな感じです。

理論上こうなるよね?(仮説)

⇒よし、やってみよう!(検証)

⇒結果②思ってたのと違う結果がでた!?(結果)

⇒なんでだ!?(考察)

理論が正しくなかったのか?実験の仕方が間違っていたのか?(考察)

⇒(仮説の改善、もしくは検証方法の改善)

この繰り返しで、仮説が正しかったかどうかを証明する。

このサイクルが、ここで伝えたい科学的な思考のイメージです。

医療も科学である?

このイメージを医療に当てはめてみましょう。

例えば、首から肩の痛み(五十肩かな?なんだろうな?)で受診したとします。

⇒医師の診察。

たしかに患者さんの言う通り『五十肩(関節炎)』っぽいな(仮説)

触診、レントゲンの結果、やはり『五十肩』だな。(仮説)

⇒EBMに基づいて治療方針を決定(仮説:理論上これで治るはずだ!

⇒患者さんに薬の処方&ストレッチの指導(仮説:理論上これで治るはずだ!

⇒患者さんが薬をきちんと飲む&ストレッチをする(検証)

⇒症状が和らいだ(※よい結果が出た!)

⇒仮説からたてた治療方針は間違ってなかった。

 治療終了、めでたしめでたし(考察)

こんなイメージです。

もし

⇒治らなかったぞ!(※よい結果が出なかった・・・)

という場合は、治療方針の見直し(薬の変更)や、診断のやり直し(違う病気の可能性を考える)をすることになります。

薬をきちんと飲まないとお金も時間も損する

では「治らなかったぞ!」の原因が、患者さんが医師の指示に従わなかった場合は?

今回のケースでは『薬をきちんと飲む&ストレッチをする』という指導のうち、自己判断で薬を途中でやめたとします。

(なんとなく不安だから薬を飲まなかった、という話はよく聞くので。)

もし薬をきちんと飲んでいたら治ったかもしれないが、薬を飲まなかったので治らなかった。という結果です。

これでは、今回の薬が効いたのか、効かなかったのかの検証ができません。

そうなると、再診した時の医師の指示はどうなるかというと?

『まずは前回処方した薬をきちんと飲んでみてね』

きちんと飲んでいれば効いたかもしれないわけですから、こうなります。

別の薬を処方する、というのは次の段階の話になります。

そもそも初めの薬で効いていたかもしれないわけですからね。

もう一つ付け加えるとEBMでは「過去のデータから最適な医療」を提供するので、一番初めに出される薬が、一番おススメなことが多いのです。

(この初めに使われる薬を専門用語で「第一選択薬」と言います。)

というわけで、薬をきちんと飲まないと、薬の効果ないだけでなく、治らなかった場合に「まずは薬をきちんと飲んでね」という医師の指導があって、治療が最初からやり直しになります。

お金も時間も、もったいないですよね。

『薬をきちんと飲むのが大事』そうは言っても・・・

というわけで、まずは「薬をきちんと飲む」というのが病気を治すのに大切なのがわかってもらえたでしょうか。

そうはいっても、薬を飲むのに不安がある。

自分は〇〇よりも△△の方が効くんだ。

といったこともあるかと思います。

そういう時には医師に遠慮なく話してくださいね。

また、医師には言いにくい、といって薬局薬剤師に相談される方も多くいらっしゃいます。

そんな時は、あなたの不安に寄り添って相談にのりますし、必要に応じて医師に問い合わせもします。

それが薬剤師(医療者)の使命だと思います。

※勇気を出して医師に相談したら「文句があるなら来なくて良い」と言われた!

医師に相談しにくいから薬剤師に相談したら、薬剤師から何も説明はなく「それは医師に相談してください」と言われた。

という話を聞くこともあります。

そういう医療者が一定数いることは事実ですが、多くの医療者は、親身に相談に乗ってくれます。医師・薬剤師を選ぶのも患者さんの自由です。

話がそれましたので戻します。

まとめ

・今の医療は過去のデータを基に、最適な薬を提案するEBMである

・実際の治療では医師の診断から治療方針が決まり、薬が決まる

・薬をきちんと飲んで治れば良いが、治らない時は別の治療法(薬)を選ぶ

・しかし薬をきちんと飲んでないと、その薬が効いてるかわからないので、別の薬を試せない。

・なので大原則として「薬をきちんと飲んでほしい」

・不安なことで医師に相談しにくいことは薬剤師に遠慮せず話してください

というお話でした。


では、今日はこの辺で。

薬剤師の川島でした。


※医療の考え方のイメージを持ってもらうための文章です。

※個々の治療方法・治療方針は医師の指示、薬の飲み方は薬剤師の指導に基づいて行っていただくのが大原則です。

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