見出し画像

ビートルズ曲解説 It's Only Love

ビートルズに出会って40年。
集大成として1曲づつ曲解説を書いています。

この曲に関して、ジョンは亡くなる前のプレイボーイ誌のインタビューで次のように語っていた。「僕の中で最悪の作品。詩がとにかくひどい。いつも、つまらん歌だと思ってきた。ずっと嫌いだった。」

私は中学生だった頃、アルバム「ヘルプ」(*1)がホームステイ先にあり、毎日聴いていた。特に「イッツ・オンリー・ラブ」は何だか切ない感じがして、さすがジョンだなぁ、などと思い大好きな一曲だった。もしかしたら、ホームシックの影響で感傷的になっていたのかもしれない。

以前、桑田佳祐氏のインタビューにて、桑田氏もビートルズの楽曲の中で大好きな1曲だったが、上記のジョンの発言を聞いてズッコケたと話していた。

歌詞は凝っていて‘①My oh myとEvery night ②Just driesとtime bright ③ButterfliesとVery brightどの語句も「アイ」で韻を踏んでいる。この辺りはボブ・ディランの影響だろうか?

ストレートな純愛ラブソング。Just the sight of you makes nighttime bright(きみの姿が目に入るだけで夜が明るくなるんだ)てな感じで、少し恥ずかしくなるような歌詞であることは否めない。

ジョンによる「君のことが好きだ」みたいな純愛ラブソングはこの後見られなくなる。ポールはこの曲の歌詞について次のように語っていた。「歌詞がつまらなくても僕らは言い争ったりしなかった。そんなに細かいことにはこだわらなかった。僕らが書いているのは文学作品ではなくロックンロールだからね。」

ちなみに、この曲の収録の前日には、「夢の人」、「アイムダウン」、「イエスタデイ」を録音している。名曲を量産するうえで歌詞については、あまりこだわらなかったのだろうか。

韻を踏む箇所でコードはG→Gaugとジャズではよく使われるが、ロックではあまり使われることないオーギュメントコードを使っている。中学生の時に受けた切ない感じはこのようなコード使いにあったのかもしれない。

ジョージはレズリースピーカー(*2)と言われるスピーカー自体が回転して音が揺らいで聞こえる機材を使っている。これによりギターの音が浮遊している様な感じを出している。
こういった新たな機材をレコーディングに使用する点でもビートルズは先駆者だといえる。

次作アルバム「ラバーソウル」あたりから実験的なスタジオワークが始まるが、この作品は、その予兆として貴重な存在だと思う。今は亡きジョンにはこんな言葉を掛けてあげたい。私が言うのも何だが、「決して駄作ではないですよ」と。
 

(*1)アルバム「ヘルプ」にはヘルプは勿論、「涙の乗車券」、「イエスタデイ」、「恋のアドバイス」、「夢の人」等、名曲揃いだ。しかし、一番好きなアルバムに挙げる方は少ない。何故だろう?最終収録曲の「デイジー・ミス・リジー」が浮いている感じがするから・・。かな?

(*2)ビートルズが使用した後、ロックミュージシャンに好んで使用されるようになった。プロコル・ハルム の「青い影」やアニマルズの「朝日のあたる家」が有名である。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?