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ビートルズ曲解説 I Call Your Name

ビートルズに出会って40年。
集大成として1曲づつ曲解説を書いています。

ジョンはこの曲を15歳の頃に書き、1963年に加筆修正して仕上げたらしい。後に次のように語っている。「この曲の大半は、ポールがLove Me Doを書いている頃に作った。俺はこの曲を何となく取っておいた。そしてブルース風に工夫をしてみた。初めて曲を書こうとした頃の1曲」。

15歳というと、高校1年生位だろうか。若い頃から多才だった事が伺える。
リード・ヴォーカルはもちろんジョン。めずらしくコーラスを入れず、ジョンがソロで歌う。

聴きどころはジョージの12弦ギター。ジョンのヴォーカルに合わせリフを弾き、それがコーラスの代わりになっているように思える。ギタリストとしてあまり評価されていないジョージであるが、この曲を含め、ジョージのギター無くしてビートルズの楽曲は成り立たないと思う。

また、12弦ギターを初めてロックに取り入れたのはジョージではないだろうか。その後バーズのロジャー・マッギンが触発され使用し、バーズサウンドのトレードマークとなった。そういった意味でもジョージの功績は大きい。

ジョージは決して世界3大ギタリストに負けていない。ジミー・ペイジの様な派手さ、勢いは無いが、エリック・クラプトンの様なブルージーな渋さは無いが、そしてジェフ・ベックの様な神業的なテクニックは無いが、それでもジョージのギターが好きだ。控えめでヴォーカルを引き立たせ、強く主張しないのが良い。そして馴染みやすい素敵なフレーズを挟み込む。

間奏部分はスウィングしたテンポに変化して、初めてスカのリズムを取り入れている。この曲が収録された1964年といえば、まだボブ・マリーもレゲエのスカリズムもマイナーな存在だった。こうした曲調を初めてロックに取り入れた事でも先駆者といえる。

また、他にも途中でリズムが変わる曲がある。「Rock And Roll Music」の Don’t care to hear them play a tango(タンゴに興味はないよ)からリンゴの叩くシンバルのリズムがラテン調に変わる。きっと歌詞に出てくるタンゴを意識しての事だろう。聴く者を飽きさせない工夫がされている。

歌詞「名前を呼んでも、そこにあなたはいない」の「あなた」とは誰の事か?後にポールは、ジョンが母親の死を受けて、叔母のミミの家で書いた曲であることを明かしており、恋人ではなく母にあてた曲だと考えられる。

1990年リバプールで行われたジョンのトリビュート・コンサート「Greening of the world」でリンゴがこの曲をカバーしている。この時のリンゴにとっての「あなた」は勿論ジョンだろう。ジョンの後ろでドラムを叩いていた頃の事を想い出しながら歌ったに違いない。

トムペティ、ジェフ・リンがサポートしていて豪華だなぁ。リンゴ&ヒズオールスターズにみられるようにリンゴの人柄に引かれるのだろう。

また、ママス&パパスがアルバム『夢のカリフォルニア』でもカバーしている。間奏で「John... John」と囁いているが、これはジョンへの敬意を表したものと言われている。

元々この曲はビリー・J・クレイマー&ザ・ダコタスというバンドにプレゼントした曲だった。後に自分達でもレコーディングし、唯一のセルフカバー曲となった。
きっとジョンにとって思い出深い、大切な一曲だったのだろう。

そういえば、私自身にとっての「あなた」は誰だろう・・・?そんな事を考えさせられる一曲。


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