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ビートルズ曲解説 Helter Skelter

ビートルズのコピーバンドを組み、この曲を演奏する事になりました。
大好きな曲なので解説します。

この曲を初めて聴いたのは「ホワイトアルバム」ではなく「ロックンロール・ミュージック」という編集アルバムだった。
1979年の夏、ユタ州の片田舎のレコード店で購入し、毎日のように聴いていた。(*1)
まさか翌年、日本でポールが逮捕され、ニューヨークでジョンが凶弾に倒れるとは思いもしなかった。

「ロックンロール・ミュージック」ジャケット
メンバーからは不評だったようだ
両開きジャケット
ビートルズとは世界観が違うな
妙にアメリカンな「センターラベル」


良い選曲のアルバムだと思って聴いていたが「Helter Skelter」のみ違和感を感じていた。
騒がしい曲、というのが正直な感想だった。

その後、「ホワイトアルバム」を聴きこみ、ポール来日公演では最も楽しみな曲となった。

「Helter Skelter」とはイギリスの遊園地にある螺旋形の滑り台の事。そこから転じて「無秩序」「混乱」を意味しているのだろう。因みに当初のタイトルは「Hell For Leather」(破れかぶれ)だったようだ。

螺旋形の滑り台(ヘルタースケルター)

ポールは「Black Bird」とほぼ同時に「Helter Skelter」を作り上げたそうだ。当初はアコースティックギターでブルージーに歌われていた。しかしポールは、ザ・フーのピートタウンゼントのインタビュー記事「俺たちは、今までのどの楽曲よりも激しく妥協のない新曲を作った」を目にし、「上等じゃねえか、俺たちもやってやるぜ!」とこのハードなバージョンを作り上げた。

ギターはジョージではなく、ポール。
サージェント・ペパーの「Good morning Good morning」でもそうだが、狂ったようなギターを弾いたらポールの右に出る者はいない。

この曲をバンドでギターのパートを演奏した。その時、気付いたことがある。
ハチャメチャな曲だと思っていたが、実に音楽理論に則って作られている。
イントロはクリシェ奏法(半音づつ下がる)、リフについてはブルースペンタトニック音階スケールに沿って作られている。
それにしても、印象的なイントロは1弦と2弦だけで破壊的なグルーブ感を出している。
スゴイなポール。

ベースはジョン。6弦ベースを「ダダダダ・ダダン」と迫り来るように弾いている。(*2)
この時代、6弦ベースを使用するロックバンドはビートルズの他には無かったのでは。こんなところにも新しいものに挑戦する姿勢がみられる。

曲終わりにリンゴが『おい、指に水膨れができちまったじゃないか!』と叫んでいる。猛然とドラムを叩き続けてテイクを重ねた末、本当に手から流血したそうだ。

この曲を「元祖ヘヴィメタル」「元祖パンクロック」という評者もいる。様々なバンドがカバーしているが、ポールのボーカルを超える者はいないと思う。

そういえば、この曲を聴いて“啓示”を受けたと勘違いし、惨殺事件が起こった。ジョンはインタビューで「俺達には一切関係ない」と迷惑がっていた。
そりゃそうだな。

(*1)米国版「ロックンロール・ミュージック」は全曲がステレオバージョンでの収録で、左右のミックスが既発売の音源とは逆になっていたり、ミックスをやり直して、左右からの音が中央寄りに変えられているトラックさえあるらしい。
しかし、私には違いが分からない。

(*2)映画「Get Back」では、ジョンが胡坐をかいて、プレイしている。「Hey Jude」のPVではジョージがプレイしている。


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