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ビートルズ曲解説 I’ll Be Back

ビートルズに出会って40年。
集大成として1曲づつ曲解説を書いています。

映画のサントラアルバム「ア・ハード・デイズナイト」の収録最終曲。
タラタターン♪というイントロが印象的な隠れた名曲であるが、実は映画の中ではこの曲は使用されていない。

実質的にはジョンの作品とされているが、ポールは自伝「メニー・イヤーズ・フロム・ナウ」の中で共作であると述べている。

曲は当初3拍子のワルツ調のリズムであっが、レコーディングセッション中に4拍子に変更された。ワルツのリズムの時にジョンが途中で「歌うのメッチャきつい!」と言って演奏を中断しているのがアンソロジー1にて確認できる。曲が完成する工程を垣間見ることが出来て興味深い。

ジョンはデル・シャノン(*1)の曲をギターで弾いていて、この曲のコード進行を思いついたそうだ。その曲とは恐らくビートルズが初期のライブでも演奏していた「悲しき街角」だろう。生前のインタビューでジョンは「デル・シャノンの曲のコードを僕流に手を加えた。僕の方がI’ll Be Back、ポールも同じ方法で曲を書いた」

ポールのその曲はコード進行より、おそらくThings We Said Todayではないかと考えられる。

https://youtu.be/H56qRqHfSRQ

歌詞は、男女の恋愛を歌っているが、実は久しぶりに再会したジョンの実父(アルフレッド・レノン)の事を歌っているとの説もある。

ジョンはアルフレッドとは、5歳の時からずっと会っていなかったが、有名になったジョンの前に突然姿を現した。その時、父アルフレッドは、船乗りではなく、ホテルの調理場で働いていたそうだ。

映画「ア・ハード・デイズナイト」の撮影中、実に18年ぶりの再会。曲はそのすぐ後に書かれている。ジョンは「俺が成功するまでは何の音沙汰も無かったくせに、マスコミを使って脅迫めいたやり方で俺の人生に突然入ってきた。初めは会うのも嫌だった。結局、自分が折れて面倒を見る事にしたんだけどね」と語っていた。

アルフレッドはその後ビートルズファンの女性と結婚。その女性はアルフレッドがビートルズに近い存在という理由で結婚したらしい。

例えは良くないが、元「嵐」の櫻井君の父(アルフレッドとは違い人格者だと思う)が櫻井君ファンの女性と結婚するようなものである。ジョンもさぞかし驚いたに違いない。

歌詞「もっと他にできることがあるだろう?僕の心を傷つけるよりも素敵なことが。今回は僕もはっきり示さなくては。本気で言っているんだという事を」はアルフレッドに向けた本心ではないか。(*2)

曲全体に何か切ない雰囲気が漂っているのは、そんなジョンの気持が表れているのだろう。
 
(*1)アメリカの歌手、シンガーソングライター。デビューシングル「悲しき街角」がビルボード1位を獲得。1963年にはロンドンのアルバート・ホールでビートルズと競演。

(*2)ソロアルバム【ジョンの魂】収録のマザーでは、「父さん、あなたは僕を置いて行ったね。僕にはあなたが必要だったのに。だから自分に言い聞かせるよ。父さん、さようなら」と哀しい親子関係を歌っている。


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