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他のマガジンに含めていた映画評や書評などを抜き出してここに独立させました。
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2006-2023「『キネマ旬報ベストテン』の20位以内に入ってほしい邦画10本」

「『キネマ旬報ベストテン』の20位以内に入ってほしい邦画10本」という記事を毎年自分のブログに書いています。そして、そのリストを note にも、毎年最新分を追記して新しい記事として、ここに上げています。 文章まで転載すると長くなるので、note では表題と順位だけにしています。もしもご興味がありましたら、リンクをたどってブログの記事をお読みください。 さて、その選考基準は下記の通りです: 以下がそのリストです。タイトルの後のカッコ内の数字はキネマ旬報ベストテン投票にお

フリーレンの登場人物たちの名前の意味

かく言う私もそのひとりですが、日テレのアニメ『葬送のフリーレン』が終わってしまって、フリーレン・ロスに呆然としている御仁も少なからずおられるのではないかと推察します。 ある人の note で、フリーレンという名はドイツ語の frieren という動詞(英語の freeze に当たる;「凍らせる」の意)から来ているという話を読みました。 そう言われると、他のキャラクター名もドイツ語っぽい響きを持っていますよね。ひょっとしたら全員かもしれません。 幸いにして私の大学時代の第

オープン・エンディングを糾弾するよりも大切なこと

オープン・エンディングというものが今や批判の対象になっていると知って大きなショックを受けました。日本がまさかそんな社会になってきているなんて、夢にも思いませんでした。 僕がそれを知ったのは朝日新聞での「映画『怪物』クィアめぐる批判と是枝裕和監督の応答 3時間半の対話」という記事(有料)でした。 是枝裕和監督、ライターの坪井里緒氏、映画文筆家の児玉美月氏によるこの鼎談で議論されているのは、主に「クィア」をめぐる表現や発信のあり方についてであり、それはそれでとても意義の深いも

2023キネマ旬報ベストテン得票分析

これは自分のブログに毎年書いている記事なんですが、今回(2023年度分)は割合分かりやすい結果が出たので、note にも転載することにしました。 以下がその記事の全文です: 【2月9日 記】毎年恒例のキネマ旬報ベストテンの得票分析をしてみます。 キネマ旬報ベストテンは、審査員がそれぞれ合計55点を持って、1位には 10点、2位には 9点、…、10位には1点と入れて行き、その合計得点で順位が決められています。今回 2023年第97回の審査員は、前回と同じく「本誌編集部」を

2012-2023邦画:私の「掘り出しモノ賞」

2023年度の掘り出しモノ賞には『交換ウソ日記』を選んでおこうと思います。 掘り出しモノ賞というのは、かつて twitter ベースの映画賞であった coco賞の投票部門の一部で、自分が勝手に作った賞に投票できるという企画でした。 僕は毎年「掘り出しモノ賞」と名前をつけた賞に投票してきたのですが、このサイトがなくなった今でも、そのコンセプトが大変気に入ってしまって、引き続き勝手に選び続けている次第です(笑) 今年見た 60本の邦画の中からこの映画を選んだのは、いつもは大

あなたが映画館で2回観た映画は何ですか? ──映画の見方を考える

以前、「泣いた映画が必ずしも良い映画ではない」みたいなことを書きました。 今回も似たような話かもしれません。 実は「何度も観た映画が必ずしも良い映画ではない」と言うか「観た回数と映画の評価は必ずしも比例しない」ような気がして書き始めたのですが、書いている途中でいろんなことに気づいて、映画というものの見方はいろいろあるような気がしてきたのです。 皆さんは同じ映画を何度も見に行くことがありますか? 世の中には気に入った映画を何度も何度も観る人がいます。 僕の周りだと、古

「癒やし」「泣ける」「実話に基づく」 ~僕が避けている3つのフレーズ

皆さんは、例えば映画の宣伝文句で、聞いただけで萎えてしまって観る気にならないようなものがあるでしょうか? 僕が気難しい人間だからなのかもしれませんが、僕にはそういうのがいくつかあります。萎えた気持ちで観たって却々のめりこめないので、そういうフレーズで売っている映画はついつい観るのを避けてしまいます。 それは「癒やし」「泣ける」「実話」の3つです。 まあ、でも昨今そういう売りの映画が大変多いですから、完璧に避けるのは難しいし、宣伝文句には拒否感が強くても他に観たくなる要

僕が悩む Pokémon GO と陰陽五行、アリストテレス、『マイ・エレメント』

Pokémon GO と「タイプ」僕は従来ポケモンというゲームやアニメとは全く接点がなかったのですが、iPhone のゲームとして Pokémon GO が始まってからはずっとプレイしています。 下手糞ですが7年経ってもやり続けているということはそれなりに満足している証拠なんでしょうね(笑) でも、どうも気に入らないと言うか、しっくり来ないと言うか、違和感を感じていることはあるんです。 それはポケモンの「タイプ」です。 ご存知ない方のためにご説明いたしますと、それぞれ

読書サイト「シミルボン」のサービス終了に寄せて

シミルボン閉鎖シミルボンというサイトをご存知でしょうか? そのホームページには、 という説明が載っています。運営しているのはブックリスタで、これはソニー、凸版印刷、KDDI、朝日新聞社が共同で設立した電子書籍事業会社です。 そのシミルボンが 2023年10月1日(日)24:00 を以て閉鎖し、サービスを終了するとの発表がありました(当初はその発表を掲載してあったページに、ここからリンクを張っていたのですが、当然のことながらそのページも消えています)。 今この文章を読ん

『君たちはどう生きるか』を君たちはどう観たのか ──「分からなかった」君へ

『君たちはどう生きるか』のついての議論がかまびすしいですね。 僕は好感を以て捉えました。映画評はいつも通り自分のブログに書きました(と言っても今回はあまり多くを語ってはいません)が、note にも「つぶやき」という形でほんの少し書いたりもしました。 僕と同じように肯定的に捉えた人、大絶賛している人もいる一方で、結構ボロカスに書いている人も少なからずいます。その文章を読んで僕がなるほどと納得するかどうかは別として、しかし、そういう人がいること自体には何の不思議もありません。

皆さんが上手いなと思う女優さんは誰ですか?

前に『皆さんがきれいだなと思う女優さんは誰ですか?』というタイトルで文章を書きました。僕が全然きれいだと思わないような女優さんが時々「美人女優」などと称されていて驚く、というような記事でした。 今回はそれの“演技力編”を書いてみたいと思います。そう、「美人女優」のときと同じで、僕が「この人はどうしようもなく下手だなあ」と思っている役者さんが時々「名優」などと書かれていて、これまた僕は驚くわけです。 語弊があるので今回も実名を挙げて説明するようなことはしませんが、僕が所謂大

三宅香帆・著『女の子の謎を解く』からの連想

三宅香帆・著『女の子の謎を解く』それまで全く知らなかったのですが、ここ note で三宅香帆さんを見つけて読んでみて、物の見方が非常にフラットなことに感銘を受けました。それで初めて彼女の著書『女の子の謎を解く』を読んでみたのですが、こちらも非常にフラットで、しかも明晰な分析です。 いや、フラットな上に明晰というのは雑な表現であって、物事の奥深いところまでしっかり見据えているからこそそのフラットさが維持できている、というのが正しい表現だと思います。 雑駁な言い方をすると、こ

皆さんがきれいだなと思う女優さんは誰ですか?

美醜の基準人の容貌の美醜を大っぴらに論じるのは昨今ではあまり感心しないことだと思われています。しかし、その対象が芸能人だとしたらあまりとやかく言われることはないでしょう。やっぱり誰もが、美女やイケメンを見てうっとりしたいので、それは仕方のないことだと思います。 ただ、その美しい/美しくないの基準は人によってかなり違います。皆さん、そうは思いませんか? 例えば、僕と妻との間では、ある女優やタレントさんが美人かどうかを巡って時々意見が割れます。2人の間で全く正反対、なんてこと

読書という競技について

他人が書いた書評を読んでいると、「えっ、そんな感じ方をする人がいるのか」と驚くことがあります。 いや、僕の理解が正しいのであってその人の読み方がとんでもなく勘違いな読み方だなどと言いたいのではありません。良いとか悪いとか言う以前に、まず自分と他人の違いに純粋に驚くわけです。 たとえば先日、上田岳弘の『引力の欠落』を読みました。芥川賞作家とは言え、ベストセラーでもなんでもなく、割とマイナーな作品なので、これを例として取り上げても共感していただくのは難しいかもしれませんが、一