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Pickleballをやってみた

カリフォルニアはパロアルトに住み着いて5年。近所の大きな公園のテニスコートが半分くらいピックルボール用にコンバートされていて、そこを通るたびに老若男女が楽しそうにプレーしている見ていて、活気があるなーと感心してた。長いこと特にはじめてみようとは思わずにいたのだけど、ついに手を出すことになったので、思ったことをあれこれ書いてみる。

そもそもピックルボールって?

一言でいうと、テニスをダウンサイズしてゲーム性を高めたスポーツ。小さなコートで、穴の開いたプラスチックのボールを卓球のパドルを大きくしたようなパドルでポコポコ打ってポイントを競うゲーム。背の高い人やパワープレーが有利になりすぎないようなルールが設定されていて、小さなコートや軽くて小さいパドルやボールのおかげで身体的負担も少なく、老若男女を問わず楽しめる…という感じ。

カンクンのホテルに置いてあったので、長男とちょろっとプレー

1960年代のアメリカが発祥だけど、この10年くらいで人気に火がついて、特にここ数年はピックルボール専用コートや専用施設があちこちで建設されるほどになってる。2022年のアメリカのテニスの競技人口は23.6 million (2360万人)とされるようだけど、ピックルボールの競技人口は8.9 million (890万人)で、2022年は競技人口が85%増えたという統計がある。ピックルボール人気は留まるところを知らず、このまま人気スポーツとして定着するのではないか…というのがアメリカ国内の雰囲気。

実際にやってみる

大学までそこそこまじめにテニスをやっていたのと、卓球、バドミントン、スカッシュ…と一通りかじっているので、やってみたらそこそこできるだろうなーという感触はあった。何か月か前に会社のチームイベントでちょろっとお試しでやってみた時は、みな初心者だったこともあって「敷居が低くて、ゲーム性が高いテニスなのかな」という印象。昨年から9歳の長男がテニスのレッスンを受けて一緒にラリーできるレベルになったので、ついでにピックルボールもできる体制を整えておこうと思って適当なパドルとボールを入手。裏庭のミニコートでポコポコ打ったりしていて、妻や長男とも一緒にできそうだなという感触は掴めた。

件の近所の公園のコートを本拠地にしているPalo Alto Pickleball Clubのウェブサイトを漁っていたところ、初心者向けのセッション(パロアルト在住者向け)をやっていたので、平日の朝7:30から参加させてもらうことにした。

公園の照明付きコートでは6amから10pmまでプレー可能

ちょっと早めにコートに着くと、照明のついたコートの半分くらいはすでに埋まっていてみな集中してプレーしている。蛍光ベストを着たボランティアの人が隅っこのコートにいたので合流したけど、雨が降りそうな天気なこともあって参加者は自分のみ(途中からもう一人参加)。ボレー禁止ゾーンの手前から優しく打ち合うDinkingで感覚を掴み、試合の流れからスコアのつけ方まで実技を交えて教えてもらい、最後にコートでのエチケットやルールなどを聞いて終了。パドルを貸してもらえるので、ピックルボールを初めてやる人にはこれ以上ないよいセッションだなと思った。

せっかく来たので早速適当なコートにジョインしてみるか…と思ったけど、人が足りてないコートもないし…とあれこれ観察していたところ、ちょうどよく現れたおじさんに声をかけてちょっと打ってもらう。「初めてだけどよいかな」と話すと微妙な反応だったけど、テニス経験者だよというと「どの程度の経験だ」というので大学でプレーしてたといったら「まーやってみるか」と納得してもらえた模様。聞くところによると、彼(グレッグ)は朝に来るメンバーの中でもトップクラスに上手いプレイヤーとのこと。

ポコポコ打って感覚を掴んでいると、ちょうどゲームが終わったペアと一緒にダブルスをやることになったので、さっそくゲーム開始。基本的なポジショニング(サーバーサイドのペアは二人ともベースラインに立って、レシーバーサイドでレシーバーじゃない人は最初からキッチンラインに立つ)を忘れがちなので、ちょこちょこ注意されながら試合が進む。グレッグは終始安定感のあるプレーで、ここぞというところは積極的に打って確実に決めてくれる。自分が相手の足元に沈めたショットが甘く返ってきて、詰めてたグレッグがバシッと決める、みたいなパターンで点を取れることが多かったと思う。相手のペアの一人は日本人の方で、とても上手。もう一人の女性も安定したプレーで手強かったものの、接戦を制して勝利。

Drop-in(飛び込み参加)のピックルボールは勝ったペアが残れる仕組みで、次にそのコートでやりたい人はパドルをネットの脇のポールに立て掛けておくのがしきたり。次に対戦したクリスチャンとミッシェルもかなり手ごわいペアで、クリスチャンの強烈で深いサーブが印象的。ミッシェルも低くて鋭いスライス系のサーブでバックサイドを上手に狙ってきていて、なかなか返すのは大変だったものの、グレッグが積極的に動いてポイントを稼ぐことができて勝利。

グレッグが交代する形で日本人のKさんと組んで、同じペアと試合。熱戦になったので、結局4試合することになって3勝1敗。かなり楽しめた。ピックルボールは11ポイント先取の15-20分くらいでひとつの試合が終わるので、回転が早いのも特筆すべき点と言えそう。Kさんにはいろいろとアドバイスをもらったり、トップ選手も使ってるというパドルを貸してもらったりして、ゲームに関する理解と戦術の重要性をいろいろ学べてよかった。感謝。

で、ピックルボールってどうなの?

一言でいうと「楽しい」。

テニスほどシビアなスイングや動きをしなくてもゲームを楽しめるのが何といっても大きくて、ラケットスポーツ未経験者でも10-20分くらい練習すればなんとなく試合ができてしまうのは素晴らしい利点。

と同時に、上達していけばショットの精度・バリエーションや、それに付随するより高度な戦略を使った勝ちパターンも作っていけるので、相応の奥深さもある。「パワープレー有利になりにくいルール」とは言いつつそこそこのパワープレーができてしまうのだけど、繊細なタッチやプレースメントでパワープレーを封じ込めることもできるので、子供や女性やシニアでも同じ土俵で戦いやすい、というのもとてもよいと思う。

例えば、サッカーをダウンサイズしたフットサルは、ある程度初心者でもとっつきやすい…と言いつつも、所詮はコートが小さくなっただけなので似たレベルのスキルを要求されるし、ある意味サッカーとは違った俊敏さや運動量を求めらることもあるので、大きく敷居を下げているかというとそうでもない。野球をとっつきやすくしたソフトボール(この解釈が適切かどうかは分からないけど)も、似たような傾向。ゴルフを簡略化してパターだけを打つパターゴルフは、敷居が圧倒的に低くなっている代わりに奥深さやゲーム性を大きく損なっている印象。色々とスポーツをしてきた経験から言って、敷居の低さとゲーム性の高さと奥深さをここまでちょうどよいバランスで成立させているスポーツは希有な存在だと感じる。

会社の実業団チーム時代

テニスとの比較ということで考えると、ピックルボールに比べてテニスの方が奥深さがあるのは間違いなさそう。テニスは何年間もの練習を積んで上級者になったとしてもトップレベルのアマチュアには簡単にはなれないし、初心者から中級者、それに上級者…そしてツアープロというレベルの違いが物凄い遠い関係にあるのかなと思う(競技人口の裾野が広い分だけピラミッドの高さも高い)。このレベル感の遠さによって同じレベルのプレイヤーを探す(=競った楽しいゲームができる)のが難しくなりがちという現実があるし、ある程度のレベルで試合ができるまでの道のりが遠いことでInclusiveなスポーツになりにくい要素があるのは否めない。これはゴルフなんかも同様(ただし、ゴルフは主に自分との闘いなのでそこそこプレーできれば誰とでも回れる利点はある)。

だらだら書いてきたけど、自分がこれで他のスポーツは放り出してピックルボールに専念するか…と言うとそんなことはなくて、たぶんテニスもやるし、ゴルフもやるし、自転車も乗るし、サーフィンもやると思う。ピックルボールはほかのスポーツにはない独自のよさを提供してくれるので、家族でやっても白熱するし、公園のコートにぶらっと行っても楽しめる気軽さが大きな魅力。さらには、まだ上達していける余地が多そう(40歳を超えると大きな経済的・時間的投資をしても大きく上達できそうな余地があるスポーツは多くはない)なので、週一くらいでやっていけたらよいかな。

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