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Spotifyの新ポリシーは、真っ当な音楽家への分配増を目指す。その影響は?

 昨秋発表済のSpotifyの新ポリシーが4/1から正式に実施されるというニュースです。ざっくり3つのポイントを上げます


分配対象楽曲は月に1000回以上再生された楽曲に

 これが一番大きな方針転換でしょう。12ヶ月以内に1000回以上再生されていない楽曲には収益分配を行わないということです。Spotifyの説明によると「99.5%は、少なくとも年間1,000ストリームの楽曲であり、これらの楽曲は、このポリシーのもとではより多くの収入を得ることになる」とのことです。元々のSpotifyの方針は、音楽配信の「民主化」だったはずですが、あまりに民主化が進みすぎたということなのかもしれません。TuneCoreなどのディストリビューションサービスを使えば誰でもストリーミングサービスに自分の作品を並べることができます。その中で、収益分配を得るのは、年間1,000再生以上の曲に限る、ということなので、妥当な判断かなと思いました。
 Spotifyのアーティスト向けの説明ページ「Loud and Clear」の年間レポートでは、収益分配が1万ドルレベルのアーティストも増やしてきたし、今後も応援していくと表明しています。国にもよりますが、1再生は約0.03ドルと言われていますので、1000再生が10曲あると約300ドルという計算になります。僕は出自が音楽プロデューサーなので、1万ドル(150万円)クラスの音楽家を増やす、1000再生以下には分配しないというロジックには矛盾は感じませんが、アマチュア音楽家を中心に考えると違和感があるかもしれません。ロングテールを中心に据えた、別のポリシーのサービスがほしいと考えるユーザーも出てくるかもしれないなと思いました。

少人数リスナーは対象外。人工ストリーミングには課金。悪質「推し活」はNG?

 少数のユーザー(アカウント)だけが再生している楽曲も収益分配の対象外になります。人為的な再生を無意味にするための施策です。最低アカウント数はいくつなのかは、業者などの悪用を避けるために公表しないとしています。同時に、レーベルや配信者のコンテンツで 「悪質な人工的ストリーミング 」が検出された場合、1曲ごとに罰金を科すともしています。
 普通にリスニングされた曲が収益分配対象ですよ、ということなので当然かなと思います。
 日本でもLINE MUSICなどで、ランキングを上げるために一部のファンが再生回数を上げる活動が問題視されていますね。自分のお金をつぎ込むことが「推し活」ではなく、アーティストや楽曲の魅力を伝えていくことが、重要だというカルチャーになっていくと良いですね。

非音楽的なトラックは2分以上が必要

 記事の中では、Functional genresという表現がされています。非音楽的な、自然音や機械音などのトラックについては、少なくとも2分以上が必要となりました。この方針についてスポティファイは、「リスナーは、これらの機能的なジャンルをバックグラウンドで何時間もストリーミングすることが多く、これは、ロイヤリティの発生するストリームを最大化するために、芸術的なメリットのない、人為的にトラックを短くカットする悪質な行為者によって悪用されることがある」と説明しています。「最小のトラック長を設定することで、これらのトラックは、これまで得ていた額の何分の一かの収入になり(ノイズ録音を2分間聴くことで、4ストリームではなく1ストリームのロイヤリティが発生するため)、その余分なお金は、正直で勤勉なアーティストのためのロイヤリティ・プールに戻すことができる」。
 このFuctional genresにも存在価値自体は認めているのが面白いなと思いました。
 いち早く、再生回数による分配ではなく、アーティストに分配する(artist-centric model)方法を選択したDeezerは、この件でも、数ヶ月の間に2600万曲以上の楽曲を削除したと発表しています。
 音楽ビジネスの幹となったストリーミングサービスが、どういう収益分配方針を取るのかは、音楽ビジネスに大きな影響を与えるようになりました。


モチベーションあがります(^_-)