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音楽生態系の変化に伴う衝突〜Spotifyソングライターページ続報〜

 前回に引き続きで、Spotifyのソングライターページのニュースを紹介します。今回は、イギリスの音楽専門のデジタルマーケティング会社MusicAllyによる踏み込んだ内容です。関係者のご努力で、日本語版の週刊のメールマガジンが発行され、世界のMusicTechの最前線の情報が把握できるようになりました。みなさんも是非購読してください。

 前回は良いことばかり書きましたが、ここではMusicAllyのニュースを踏まえて軋轢について触れましょう。


〜過去のソングライター主導による、米国での録音権に関するSpotifyへの訴訟はまだ記憶に新しいが、これらの論争はすべて、音楽ストリーミングから得られるロイヤリティに関する、ソングライター間における広範な不安を背景としている〜 

とあるように、Spotifyと音楽出版社/作詞作曲者は料率について争っています。もちろん双方言い分があるのですが、僕から見ると、音楽ビジネス生態系の「幹」がストリーミングに変わったことによる「新しいルール」を決めるための争いです。

 Spotifyに限らず、音楽ストリーミングサービスは音楽側への還元率が高いモデルです。著作権(楽曲の利用)で、売上の約12%、原盤の使用料が40〜50%というのが世界的な相場で、約6割ですから、ITサービスとしては非常に高いといえるでしょう。実は、音楽(権利者)側にも立場の違いがあって、楽曲著作権を持つ音楽出版社とソングライター側は、原盤権を持つレコード会社とアーティスト側より料率が低いことに不満があるのです。著作権については、どの曲も料率は同じで再生回数で分配するという校正なルールが標準的なのですが、大ヒット曲を持つ音楽出版社は特別な料率を要求するケースなどが出ているようです。

 さて、音楽出版権については、日本の業界慣習が欧米とは大きく違っているという別の問題があります。出版権が作曲家に紐付かず、アーティスト側がコントロールするという慣習と、特にタイアップ楽曲はテレビ局などの子会社が権利を持つというアメリカでは法律で禁じられていることが、日本では標準的な業界ルールになってしまってので、全く別の観点が必要になります。様々な分野が国際化していく中で、音楽出版権の国内外の格差は、解決するべき日本独自の懸案なのです。

 グローバルな音楽ビジネス生態系の変化に関する新しいルールの設定は音楽の未来に非常に重要で、僕は欧米の力のある音楽家がパワーゲーム的に動いているのは良くないことだと思っています。上記のソングライター側の言い分にも僕は眉に唾をつけて耳を傾けています。現時点での状況整理をやるために、
 4月のMusicTechRader(4/12,16時〜渋谷)では、最近ロンドンに拠点を移した世界有数の日本人知財弁護士山崎卓也に「グローバル著作権WARS」をテーマに話を伺うことにしています。まもなくセミナーの情報解禁しますので、興味のある方はpeatixをチェックして、是非いらしてください。


モチベーションあがります(^_-)