見出し画像

キーワードは「土着化」。ものづくりで、地域ごとの特色を出す―『HIKE』 トークショーから②

こんにちは。「竹の、箸だけ。」に、こだわり続けてきた、熊本のお箸メーカー「ヤマチク」です。純国産の天然竹を人の手で一本一本刈り取り、削り、「竹の箸」を作り続けてきました。

ヤマチクがある南関町の隣町・玉名市にある『HIKE』(ハイク)というホステルは、地元食材を使用したカフェスペースや、手仕事による生活の道具を集めたショップも併設しています。

5月13日からは、熊本の伝統工芸である小代焼(しょうだいやき)を制作している、『小代焼 ふもと窯』井上尚之さんの個展が始まり、その初日にはトークショーが開催されました。

登壇したのは、『小代焼 ふもと窯』の井上尚之さん、『HIKE』の佐藤充さん、そして、『ヤマチク』から山崎彰悟です。

トークショー後半となるこの記事では、地域の特性を出すことについて話しました。

前半を読みたい方は、こちらから。

左から、佐藤陽子さん(HIKE)、井上さん(小代焼 ふもと窯)、山崎(ヤマチク)、佐藤充さん(HIKE)

地元でものを売るということ

HIKE・佐藤陽子さん
県北でものづくりをされているおふたりの作られたものを、HIKEで使っているということが少しずつ地元の方にも認知されてきているのかなと思います。熊本での認知の広がり方ってどうでしょう。理想的な認知の広がり方や、器やお箸の使われ方などもあれば、聞いてみたいなと思います。

小代焼 ふもと窯・井上尚之さん
おかげさまで名前が売れて、器も少しずつ売れるようになりました。
僕は、地元で売れて初めてそこからスタートで、他のところで売れても、地元で認知されなければ、それは何の人気でもないと思っています。ただ早くスタートに立つためには、地方である熊本より、都会から広げたほうがいいと考えました。実際、想像よりも少し早く広がってくれたので、もうすぐスタート地点に立てるんじゃないかなと思います。
最後の目標は「当たり前になること」です。普通に僕の器が食卓にあって、熊本の道端にあるうどん屋やラーメン屋でも何気なく使われているような。それが熊本の当たり前になったら幸せだなと思います。

ヤマチク・山崎彰悟
実はヤマチクってブランドを売ってきてまだ4年なんです。始めたころは僕も、熊本県外、東京や大阪まで出て宣伝するイメージが大きかったです。でも2020年5月にHIKEさんができて地元で広めてくださってからは、熊本県内からの取り扱いの問い合わせや工場見学が増えました。だからHIKEさんの存在は大きかったです。お客様にも働いている方にも若くておしゃれな人が多くて、そういう人たちがわざわざ来てるし、彼らに刺さる良いものとして、うちのお箸も置いてくれているんだなと感じます。

HIKE・佐藤充さん
地元で作られたものなのに、地元で買える場所がなかったですよね。

ヤマチク・山崎彰悟
なかったですね本当に。うちも、どこで買えますか?と聞かれたときにご案内するのが、近くても熊本市、福岡市内だったから。

HIKE・佐藤充さん
小代焼の器を僕たちが扱うきっかけになったのが、岡山や広島で尚之さんのポップアップショップをやっているのを見たことです。なんで?熊本で一切売っていないのに?と驚いて。これだけいいものが地元にあるのに、全部よそに行っちゃってる。「これやる人いないのかな」と疑問に思いました。

小代焼 ふもと窯・井上尚之さん
ありがたいです。「いいもの」と言ってもらうだけで本当に僕は嬉しいんですけども。

HIKE・佐藤充さん
飲食店、旅館、ホテル、と使える場所っていうのがどんどん増えていくと、地元からの発信がもっとできるのかなっていうのを、とても感じますね。

ヤマチク・山崎彰悟
さっきの尚之さんの「当たり前になる」っていうのは、僕も共感してます。究極のブランディングは、知らないうちに実は使ってたということで、一番良いなと思いました。風景になるってそういうことですよね。

地域ごとのオリジナリティ(土着性)

小代焼 ふもと窯・井上尚之さん
風景でふと思ったんですが、建物とかも昔は当たり前だったものがどんどんなくなっていますね。
先日、山陰の方に車で行ったとき、山陰方面に入った瞬間に黄色い屋根瓦が見えて、「きれいだな」と思ったんです。そういう風景は間違いなく九州にもあるとは思うんですが、どんどん少なくなってきているのが少しさみしく感じますね。
熊本も、ならではの建築方法で建てられた家が今も6〜7割を占めていたら、とても味わいがある町並みになっていたんだろうなと思うんです。

ヤマチク・山崎彰悟
HIKEのショップ『タシュロン』もそうですが、土着性は結構キーワードだと思っています。規格化されたものがいつでもどこでも何でも手に入る今は、それが当たり前に思うんだけど、コロナ禍で海外からの物流が滞りましたよね。日本国内で軒並み物資が不足して初めて、海外のものがいかに市場を占めていたかがわかったと思いますが、足りなくなったものを少しでもローカルでまかなえていれば、そんなに大パニックにはならなかったんだろうなと感じます。
それにさっきの建物の話のように、各地域地域に違いがあっていいはずなんですよね。本当はお箸屋さんも、もっとあっていいし、福井県のお箸屋さんと僕らが供給するものは違って当たり前なんですよね。彼らにしか出せない良さも、僕らにしか出せない良さもあって、お互いできないことだってある。それが各地域で表れればいいなと強く思うんです。

会場からの質問

HIKE・佐藤充さん
あっという間に1時間経ってしまいましたね。会場にいらしている方から質問があればと思いますが、いかがですか?

来場者Aさん
ものづくりをされているなかでモチベーションが下がったとき、どうやって上げていますか?

小代焼 ふもと窯・井上尚之さん
僕の場合は仕事なので、もうノルマみたいなのがあるんですよね。結局1ヶ月間で3,000個作らなきゃいけないとか。でも不思議と人ってボーッとして考えると何も浮かばないので、掃除でもいいので体を動かすと、やる気が出てくるんですよね。だから、モチベーションが下がったときにやる仕事をとってます。ちょっとした手のかかる模様付けとか。
それをやっていると、嫌々でも、これをやりたい、あれもやりたい、と思うようになるので、その瞬間に次のことに移ります。それもやりたくないときには、もうYouTubeでも見てます(笑)。

HIKE・佐藤充さん
山崎さんはどうですか?

ヤマチク・山崎彰悟
僕も仕事なので、モチベーションが下がってもパフォーマンスは落とさないようにしています。どうしても集中力が下がったり、やる気が出ないときは、単純作業をとりあえず5分だけやってみる。それでもいやだったらやめる。というふうにやってます。
体を動かすとかもそう。僕はものを作るより伝える作業の方が最近多いので、とりあえず企画書を一行書く。一行書くのも無理だったら書かない。というのをやってます。けど結局それでできなかったことは、今までないですね。

HIKE・佐藤充さん
次のご質問どうですか?

来場者Bさん
毎日ヤマチクさんのお箸を使わせてもらっています。尚之さんに、小代焼っていう看板があって伝統工芸、民芸としてやってるなかで、自分で作りたいものと伝統のバランスをどうとっているのかを聞きたいです。

小代焼 ふもと窯・井上尚之さん
始めたばかりの頃は、やはり親父の名前が大きすぎて、それに対して反発するほどではないけれども嫌な気分になることはありました。でも東日本大震災の後、僕らの仕事についてすごく考える機会があって、焼き物って実は何ひとつエコなことがないと思ったんです。粘土は自然素材だけれども、窯で焼くのは酸素を吸って二酸化炭素しか出さない。もし生まれてきたものが使われなかったら、言い方が悪いとごみになる。そう考えたときに、結局名前など背負うものよりも、作ったものをいかに1回でも多く使ってもらえるかが大事だと思うようになりました。
伝統だとか、2代目だから、というのを合わせても無理なものしかできないので、自宅で使っているサイズ感や僕自身のサイズに合わせて作って、それに合う人に使ってもらう。もうそれでいいかなと思っています。

HIKE・佐藤充さん
ありがとうございます。それでは時間になりましたので、会を締めたいと思います。今日はお集まりいただきありがとうございました。井上さん、山崎さんも、本当にありがとうございました。


***

ヤマチク、求人中です!
2023年11月11日オープン予定のショップのスタッフを募集しています。ご興味いただけましたら、ぜひのぞいてみてください。

ヤマチクでは、note記事・竹のお箸の感想お待ちしています!
noteを読んでの感想、竹のお箸を食卓に迎え入れてからのことを、もしよければ、ハッシュタグをつけてSNSなどに投稿いただけるとうれしいです。

#ヤマチク

こちらのハッシュタグがついた感想・投稿は、ヤマチクスタッフが有り難く目を通して、これからも「竹の、箸だけ。」つくり続ける上での大事な財産にして参ります。noteのフォローもとてもうれしいです。

ご感想、お待ちしてます!

また、ヤマチクではTwitter・Instagramのアカウントもやっております。
竹のお箸の色や形、作り手である社員の様子やイベント情報、2023年11月11日オープン予定の『拝啓』についてなどを発信しています。よかったら、のぞいてみてください。フォローいただけるとうれしいです。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?