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#2 スキキライ・金子みすゞとダイバーシティ|広告マンの徒然草

「スキ」について、まとめたいと思います。

●スキキライを持ちなさい

大学工学部建築学科にて、一年生のころ「現代アート実技」のような講座がありました。
そこで講師で来ていただいた現代アーティストからの一言。
「スキキライを持ちなさい。」
子供の頃から「スキキライを無くしなさい!」と教育されてきた自分にとって、結構衝撃的な発言でした。しかしながら、その真意を聞くと、深く納得できるものでした。

『これからあなたたちは、自分が良いと胸を張れるモノ(建築・デザイン)を人に提案していきます。その中で、どうすれば「これが良いのである」と自信を持って言えるのでしょうか。本当に良いもの作りたいのあれば、今自分が「スキだ!」と思える物事と向き合い、好きだと思える理由を考えなさい。逆に「キライだ!」と思う物事も、何故そう思ったのか理由を考えなさい。そうやって見つけた理由が、あなたが作る「良いもの」の理由になっていきます。スキキライの無い人に、良いものは作れません。』

このスキキライは、今思えば子供の頃に言われていた「食べ物の好き嫌いをつくってはいけません。」とは次元が違う話。私がパクチーが嫌いなのに「不味い」以外の理由はないけど(笑)、世の中のスキなことキライなことには、確かに自分の琴線に触れる理由があります。
そしてその理由は、広告的にいうと自分自身の「インサイト」なのかなと。
*インサイトについての解説はまた後日

●ダイバーシティの履き違え

「好き嫌いを持つこと=悪いこと」として、どこで刷り込まれただろうか?
一因として、小学校の頃の国語の教科書に載っていた『私と小鳥と鈴と(金子みすゞ)』というドメジャーな詩の効力があったのかなと思います。

「鈴と、小鳥と、それから私、みんなちがつて、みんないい。」
当時音楽の授業でも、この詩にメロディをつけて合唱していました。

時は経ち、とある記事で出会った京都大学酒井教授の発言に感銘を受けました。
(参考)世界が滅んでも生き残るため、京大生よ変人たれ。酒井教授が語る、カオスに立ち向かうための「京大の役割」
https://kyodai.360-degrees.jp/articles/35

酒井教授はインタビューの中でこう応えています。

『多様性は、「みんな色々でいいですね、楽しいですね!」ではない。大嫌いな奴。絶対合わない、目も合わせたくもない。そんな奴も含めての多様性だ。カエルにとってヘビや、人間にとってのゴキブリこそが多様性だ。本当に多様なら、価値観が違うべきなんだ。(中略)理解しなくてもいい。ただ存在はみとめるべき。それこそが真の多様性だ。』

そうなんです!「みんなちがって、みんないい」なんてことはない。
大切なのは、「みんなちがって」ることを認識するまでで、「みんないい」までは行き過ぎなのです。
ゴキブリのことを「いいよね」って言えますか?

「ダイバーシティ(多様性)」はともすると、「みんなをスキになろう」と誤解されがちですが、「スキはスキ」「キライはキライ」はいいんです。

●「イイネ!」からはじまる思考停止状態

2009年にFacebookにて実走された「イイネ(Like)」ボタン。
ノンバーバルコミュニケーションの先駆けであり、その後ほぼ全てのSNSに同様のボタンが設置されたことは言うまでもない。
しかしながら、この新たなシステムの中で我々が失ったものがあるのではないか?

電通のコピーライター梅田悟司さんが書いた『「言葉にできる」は武器になる。出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社』の中で、(うるおぼえですが)下記のような文節がありました。

「『カワイイ!』『イイネ!』がすぐに表明できる時代で、僕たち(コピーライター)は『カワイイ!』『イイネ!』をやめなければならない。『何故カワイイ!と思ったのか?』『何がイイのか?』という内なる言葉に耳を傾ける必要がある。ボタンを押しているだけでは思考停止に陥ってしまう。」

つまり、「スキ(キライ)」だけじゃだめで、その理由を考えることが必要という、まさに現代アート講師が言っていた内容と同義ですね。

●キライのその先へ

金子みすゞから大学のアート講師、京大の教授、コピーライターと、人生を通して接してきた「スキキライ」情報を説明してまいりましたが、
最後に、そんなことを超越した「最強の人」を紹介したいと思います。

詩人・谷川俊太郎さんです。「すき好きノート」という、親子で一緒に好きなことを書いていく書籍の中に、こんな一説が。

すきっていいね あかるいね
すきがあるって たのしいな
すきってだいじな きもちだよ
すきだと やさしくなれるもの

だれもきらいは すきじゃない
だけどきらいも だいじだよ
いつかきらいが すきになる
それもなかなか いいきもち

キライでも、いつかスキになる可能性はあって、それは素敵なことだと。
キライのその先には、実はスキが待っているかもしれないですね!

●まとめ

・スキキライを持とう!
・その理由を考えよう!
・スキキライを受け入れた上で生きていこう!
・スキキライは変わっていく!
・キライのその先はスキ!?

簡単にまとめるとこんな感じです。

以上、僕にまつわるスキキライの話でした。
広告マン・不健康法師の徒然草。

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