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コンフリクトを恐れず高成果の組織に

こんにちは。今日は葛藤、対立、衝突とも訳される「コンフリクト」を取り上げます。他人と一緒に働く時、対立があるとへこみますよね。衝突を恐れるあまり、自分の意見を言わないでおくこともあるのではないでしょうか。
今日は、コンフリクトもその種類に気を付ければ、集団のパフォーマンスを高めてくれるかもしれない、という話です。

今日の一言サマリ

いい対立とわるい対立を見きわめよう


参考にした論文

Frank R C de Wit, 2012, The paradox of intragroup conflict: a meta-analysis


コンフリクトを3つに分類する

コンフリクトと集団のパフォーマンスの関係を見ていく前に、集団の中で起こるコンフリクトにはどんなものがあるのかを整理しましょう。コンフリクトは「何についての対立か」によって3つのタイプに分類することができます。

タスクコンフリクト
タスクコンフリクトとは、実行中のタスクの内容や成果に関する、メンバー間の意見の相違です。仕事の中身について対立しているということです。

プロセスコンフリクト
プロセスコンフリクトとは、タスクや責任の委譲など、タスク達成のためのロジスティックスに関するメンバー間の意見の相違です。仕事の進め方について対立しているということです。

関係性コンフリクト
関係性コンフリクトとは、人間性や規範、価値観の違いなど人間関係の問題でのメンバー間の意見の相違です。人間関係がうまく行ってない状態ということです。

コンフリクトと集団パフォーマンスへの影響

De Witらは、116の過去の研究に対するメタ分析により、コンフリクトと集団パフォーマンス(成果)の関係性について調査しました。主な結果を以下に記載します。

  • 3タイプのコンフリクトは、「集団パフォーマンス」といった遠くの結果より、「信頼」「メンバーの満足度」「メンバーのコミットメント」などの近くの結果により強く影響する

  • 関係性コンフリクトとプロセスコンフリクトは、タスクコンフリクトよりも集団パフォーマンスとの負の関係性が強い

  • タスクコンフリクトと関係性コンフリクトの相関が強いほど、タスクコンフリクトと集団パフォーマンスとの負の関係が強まる(*図2)

  • 集団がトップマネジメントの場合は、組織の下位のときと比較してタスクコンフリクトと集団パフォーマンスの関係がよりポジティブ

  • 集団パフォーマンスを「意思決定の質」「財務パフォーマンス」で計測したとき、タスクコンフリクトと集団パフォーマンスの関係はよりポジティブ

(*図2) タスクコンフリクトと関係性コンフリクトの相関が強まるほど、タスクコンフリクトと集団パフォーマンスの負の関係が強まる

タスクコンフリクトは、関係性コンフリクトと関連が弱いとき、集団が下位層でなくトップマネジメントのとき、パフォーマンスが意思決定の質や財務で測られるとき、集団パフォーマンスとポジティブな関係があるのです。

実践への示唆

上記のことは多くのことを私たちに語っています。まず集団の中に対立が起こっていることに気づいたとき、3つのタイプのうちどれに当てはまるのかを整理するだけでも、その影響を予測し、適切な対応を取ることができます。
さらに、関係性コンフリクトやプロセスコンフリクトは集団のパフォーマンスに常にネガティブに影響しますから、解消したり悪影響を小さくする対応が必要です。チームビルディングや集団内の仕事の進め方について明確にすることなどは、これらのコンフリクト解消に役立つでしょう。

もっとも気を付けたいのはタスクコンフリクトとの付き合い方です。集団が取り組んでいるタスクの内容について意見の対立が見られても、それが関係性コンフリクト=仲違いに発展さえしなければ、中長期的な集団のパフォーマンスを向上させる可能性があるのです。
例えば飲み会の店について幹事チームの中で対立があっても、幹事チームが崩壊してしまって飲み会が企画できないほどエスカレートしなければ、よりいい店を選び楽しい飲み会になるかもしれません。
対立は、常に避けるべきものとは限らないのです。

ある先生から言われたのですが、ディベートに慣れていない日本人は、"I don't agree with you."と言われると"I don't like you."と言われたと受け止めてしまう傾向にあるそうです。私たちはタスクの中身については侃々諤々の議論をしても、関係性はいい状態を保つことを学ぶ必要がありそうです。
スポーツでも強いチームは外からはケンカしているかと思うくらい激しく言い合っていますが、あれもタスクコンフリクトをパフォーマンスにつなげている例と言えるかもしれません。

本稿は普段あまり歓迎したくない「対立」について、解像度を上げてうまく付き合う方法について見てきました。対立を成果につなげる、大人でプロフェッショナルなチームを増やしていきたいですね。

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