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【読書感想文】愛情は仙術より強し、杜子春の選択『杜子春【現代語訳版】 名作現代語訳』

芥川龍之介の「杜子春」は、人間の欲望と愛情の間で揺れ動く心の葛藤を描いた作品です。主人公の杜子春は、貧しいながらも純朴な青年でした。彼の運命は、ある日、謎の老人に黄金のありかを教えられたことで一変します。一夜にして大金持ちとなった杜子春のもとには、多くの人々が集まり、賑やかで豪華な暮らしが始まります。しかし、富が尽きると、人々は冷たく背を向けます。この経験から、杜子春はお金の有無で態度を変える人間の本性に嫌気がさし、真の価値を求める旅に出ます。

老人が仙人であることを見抜いた杜子春は、仙人になることを願い出ます。仙人は彼を弟子にし、「自分が戻るまでは何があっても声を出してはならない」という厳しい条件を課します。杜子春は、どんな苦難にも耐え、声を出さずに試練に挑みます。しかし、地獄で苦しむ両親に出会い、母が鞭で打たれて倒れたとき、彼は思わず声を上げてしまいます。これにより、仙人になる資格を失った杜子春ですが、人間としての大切な価値に気づき、正直に生きることを決意します。

杜子春は仙人になる資格を失いますが、人間としての大切な価値に気づきます。鉄冠子は杜子春に、もし両親を見捨てていたら命を絶つつもりだったと告げ、家と畑を与えて去ります。この結末は、家族への愛情がいかに大切かを示しており、人間らしく正直に生きることの意味を教えてくれます。

芥川龍之介は、この物語を通じて、人間の欲望と道徳の間の葛藤を巧みに描き出しています。杜子春の物語は、現代社会においても色褪せることのない普遍的なメッセージを伝えているように感じました。

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