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LOCAL TRIBE vol.1 「林業とデニム」(繊研新聞 2023年12月15日付)

ファッション業界最大の専門誌「繊研新聞」で月一の連載を始めさせて頂くことになりました。同紙は東京、パリ、ミラノ、ニューヨークなど世界各地に取材網を持ち、トレンド情報からアパレル・小売り・素材メーカーの動向までファッション業界の情報を網羅する日刊紙で、約20万部を発行しています。

連載のタイトルは、「LOCAL TRIBE(ローカル・トライブ)」にしました。トライブとは、「同一の血統を持ち、族長が存在する部族」が語源ですが、共通の興味・関心やライフスタイルを持った集団を指す言葉でもあります。地方に期待の眼差しが向けられる昨今、岡山発のファッション・カルチャー誌プラグマガジンの編集長が、ローカルを生業にする者として、トライブの精神でいま伝えたい、岡山を中心とした瀬戸内地方のトピックを連載していきますのでぜひ読んでいただけると嬉しいです。

繊研新聞 2023年12月15日付

岡山は圧倒的ブルーオーシャン? 林業とデニム

 地方に期待の眼差しが向けられる昨今、岡山発のファッション・カルチャー誌「PLUG MAGAZINE」(プラグマガジン)の編集長YAMAMON(ヤマモン)氏に、「ローカルを生業にする者が、いま伝えたい地方都市のトピック」を、瀬戸内地方を中心に連載してもらいます。タイトルは「ローカルライブ」。トライブとは、「同一の血統を持ち、族長が存在する部族」が語源ですが、共通の興味・関心やライフスタイルを持った集団を指す言葉でもあります。第一回は「林業」と「デニム」について。

 課題解決の糸口に

 「地方は東京の流行が三年遅れてやってくる」とよく言われていました。世界中がインターネットで繋がれ、情報を得るスピード格差は無くなっているはずですが、受け取る側の肌感覚が追いつかず、結果として「三年遅れて・・・」という状態は、こと田舎において今も変わっていません。特に、一般企業にとってファッションの潮流というのはどこか無関係なことのように扱われがちだということを、私は身をもって知っています。
 学校は言うに及ばず、飲食店やサービス業などがファッションブランドやデザイナーに制服や作業着の制作を依頼する事例はもはや目新しいものではありません。日本国内では、名だたるブランドとスタッフのユニフォームを制作している博多ラーメンの「一風堂」などが好例です。最近ではフィンランド発のブランド「ヴェイン」が発表したマクドナルドの制服をアップサイクルしたコレクションも話題になりました。これはマクドナルドが若者の雇用を増やすための取り組みでしたが、実際に求人応募が60%以上も増加したそうです。
 私たちは、こうした事例も取り出しながら、地元の企業にもっとファッションを取り入れてみてはどうかと提案をしてきました。中小零細企業の多くは人材採用に苦心しており、特に製造業など若者に敬遠されがちな業種は、どのようにイメージアップを図るかが至上命題と言えます。ファッションはこうした課題解決の糸口になり得るはず。
 しかし、いくら熱弁しても糠(ぬか)に釘のごとく手応えはありませんでした。誰もが知る一般化された施策でなければ実施に至らない。これは間違いなく都市部よりも地方に多く見られる傾向だと思います。また、悪意なくファッションの力が侮られているような気さえしました。
 
木こりのジーンズ

 そんな中、岡山県北部で林業のリーディングカンパニーとして存在感を発揮する院庄林業(岡山県津山市)が興味を示してくれます。同社はプレカット材や集成材の生産、外国産材の輸入・製造、住宅建築まで手がける総合木材メーカー。植林基金の創設や子どもたちへの木育を通して環境意識を高める活動にも力を入れている企業です。
 今回制作したのは、言わば「木こり」のジーンズ。同社の伐採班へのヒアリングをもとに、作業効率を重視したポケット配置、耐久性を求めた15オンスのセルビッジデニムでカーゴパンツ風のジーンズを作りました。制作は同じく津山市でOEM(相手先ブランドによる生産)を手がけ、ファクトリーブランドも展開する内田縫製。オリジナルの革パッチには「MADE IN TSUYAMA」の型押しを施しました。ゴールドラッシュの時代に過酷な採掘者のために作られたジーンズの歴史を想えば、木こりのガーメントとしての機能性も十分。実際に伐採班のメンバーからも好評を得ており、就活の学生にも好印象を与えているそうです。一次産業の現場や中山間地域にこそ、ファッションの力が活かされるべきフロンティアがある。私たちはそう考えています。

https://senken.co.jp/

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