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老いと別れの気配

祖父が救急搬送されたと連絡があった。

難病があって、一時は首から下が麻痺してしまったがリハビリの結果、自分の陣地である介護ベッドに座って、固まった指で器用にペンを持ち、文章を書いたり、リモコンを操作して撮りためた映画やドラマを見て楽しめるようになっていた。

直ちに命に関わる状態ではないが、脳に出血が見られたらしい。手術ができる年齢ではない。よくなることを祈るしかない。そんな状態だという。

もう80歳を過ぎていて、いつ何があってもおかしくない年齢にさしかかっている。会うたびに痩せてしわが増えて、それでもいつもうれしそうに「よく来たよく来た」と迎えてくれる。

そんなはずはないのに、老いてしまっていても、帰ればいつもの場所に座っていて笑いかけてくれるような感覚になってしまう。

突然の別れの気配にガツンと頭を殴られて、私は身動きができないでいる。

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