朝、幸子（ポメラニアン♀）の散歩をしているといつも2階の窓から猫が見下ろしている家からおばあちゃんが足を少しひきずりながら出てきて、一目散に幸子に食いついてきた。

そして「これは何？」と言う。「いや犬ですよ」と言いたくなったが、その気持ちをグッと抑えて「ポメラニアンです」と答えた。

英語の授業の例文以外であまり「これは何？」と問う事はないと思う。ちょっと小さいクマのようにも見えるし、タヌキと勘違いした人も今までいたことはいたけど、それでもやっぱりどちらかと言えば犬だ。おばあちゃんは「この犬は何という犬種？」と聞くべきだったと思う。そしたら私は間髪入れずに「ポメラニアンなんですけど、ちょっと大きいんで皆さんなんだろうと思われるみたいなんですよ笑」とにこやかにスムーズに答えたのに。

聞けばおばあちゃんは今まで5頭の犬を飼った事があり、犬の事なら何でもわかると言う。犬には好かれると自信満々のおばあちゃん。しかし幸子はそんなおばあちゃんに「ウー」とうなり、敵対心を隠そうとしない。おばあちゃんはずんずん幸子の方に近づいて来て幸子に触れようとする気満々なので、私は「危ない！咬まれますよ！」と言ってリードを引っ張った。犬好きであろうがそうでなかろうが、幸子は初対面の人間には心を許さないのだ。

そんな幸子ちゃん。散歩から帰って、私がご飯の入った袋を縛ったゴムをほどくのにてこずっていると、ケージの中で暴れ回った挙句に、私に向かって唸ったり吠えたりした。

私も、あのおばあちゃんも、幸子にとってはあんまり差がないんだなと思った。