見出し画像

竹細工したい妻(2023.05.07)

私は車のタイヤを替えなければならない。

先日車検の見積もりをいつも車検をお願いしている工場にお願いしたところ、「タイヤまじやべぇっす。ギリギリっすよ」という意味の事を言われ、よっぽどやばかったのか、予約した車検予定日より早く、他店でもいいからGW中に替えた方が良いとのアドバイスを頂いた。

なので、妻の実家へ行かなくてもよくなった今日、上記のような事情を妻に話し、オートバックスとかに行きたいと私は言った。すると妻はどうあっても私を一人で行かせたくないのか、私と妻の車2台でオートバックス的な店へ行って、タイヤ交換の間は妻の車に乘って公園などに行き、子供らを遊ばせたら良いじゃん?というような事を言う。

「どんだけおれを一人にさせたくないんだよ」と思い、皆でカー用品店へ行く事の無意味さと危険性を説いたが立て板に水。馬耳東風。妻は全く聞く耳を持たない。私たちはケンカし、結婚そのものを否定し、数年後に別れる事で何度目かの同意を得た。結局私は折れたものの、最悪な雰囲気になった。

というわけで、私たちは家族5人でぞろぞろと車2台に分かれてオートバックスへ行った。本当はタイヤ館とか色々回って品定めしたかったが、こういう状況となってはそれも難しい。オートバックスへ着くなりタイヤコーナーにいた織田無道似、もしくはコロチキナダル似の店員さんを捕まえ、一番下から二番目に安いタイヤへの交換を依頼した。

それから私たちは近所の公園を目指したのだが、途中、「別府市竹細工伝統産業会館」の横を通った。別府の竹細工は有名で、別府市は市を挙げて竹細工文化の普及と作り手の育成に力を入れている。この施設はその一環で、工芸品としての竹細工の展示を行っており、同時に作り手の育成を目的として竹細工教室を開催している。

妻が竹細工に興味があるのは知っていた。そして私も以前この施設に来たことがあり、精密に作られた竹細工を見て感動していたので、ちょっと寄ってみることにした。

が、おそらく静かで子供などいないであろう施設。年端もいかない子供らを連れて行ってはうるさくして大変な事になりそうなので、とりあえず妻に様子を見てきてはくれまいかと話した。

すると妻は重大な事を打ち明けるように「実は、竹細工教室に申し込もうかと思ってるんよね」と言う。

妻が竹細工に強い興味を持っている事は知っていたし、いずれは竹細工をやるだろうとは思っていたものの、「今?この状況で?」とはやはり思った。我が家は現在絶賛子育て期間中で大変だし、経済的にもけっして裕福であるとは言えないからだ。

話を詳しく聞くと、妻はずっと竹細工教室に通いたいと考えており、別府に住んで3年目となる今年、6月から始まる教室にいよいよ申し込みたいと考えていたという。趣味や友達と遊びに行くなどという事が全くない妻なので、その妻が本気でやりたいという事は出来るだけ無下にはしたくないと思った。

妻は竹細工教室について調べ尽くしており、今日は丁度竹細工教室の募集開始日だった。だから妻にとって、今日この竹細工伝統産業会館にたまたま来たのは運命的であったという。その大いなるディスティニーを背に妻は一人、竹細工伝統産業会館へ入って行った。様子見と、竹細工教室事務局への訪問を兼ねて。

しばらくして戻ってきた妻。手には申し込みの書類といくつかのパンフレット類を持っていて、声が弾んでいる。家を出る時にケンカして険悪になっていた時の声とは大違いだ。

聞くと、この竹細工教室がけっこうガチで、週一回という頻度は良いとして、時間が9時~15時と比較的ガッツリあって、道具代として7万円ちょいかかるという。そして今日が募集初日であるにもかかわらず20名の定員に対して既に12名の応募があったという。

こういう類の状況で私はいつもGOの判断をしてきた。長期的に見るとそれは良かったと思うが、いずれも短期的に見ると苦しい結果を招いてきたように思う。今回もどちらかというと「YOUやっちゃいなよ」と思うが、難しいところではある。結局のところ妻の熱意と覚悟次第だと思う。

ガス抜きの機会がない妻。竹細工教室を通して別のコミュニティーに繋がり、世界が拡がれば、それにこしたことはないと思うが、あとは妻が考える事だ。

ちなみに妻はいつの間にか申し込み用の写真をしれっと撮っていた。「申し込む気まんまんじゃん」と私は思った。







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?