妻が美味しい栗ごはんを頂いてきた。

妻は訪問看護をしているのだが、その訪問先のおばあちゃんがお世話になっているみなさんへと、自家製の栗ごはんを作ってくれたのだ。

一足先に食卓についていた妻。栗ごはんを食べるなり絶賛の嵐。美味しい美味しいと言って食べている。

頂いた栗ごはんは2パック。プラスチックの容器には丁寧に包装紙が巻かれていて、栗ごはんの上には飾り付けに南天の葉までのせてある。

遅れて私も栗ごはんを食べた。確かにすごく美味しい。こんなに美味しい栗ごはんは食べた事がないと思った。ごはんが絶妙な塩梅で、栗もきれいに形を残して、上品な甘さがある。

妻が言うには、その訪問先のおばあちゃんはすごく丁寧なくらし（憧れる！）をなさっているとのこと。今回めでたく９０歳を迎えられたので、そのお祝いにと栗ごはんをふるまってくれたのだった。

素晴らしい人がいるもんだなぁと感心しながら食べていると、遠くの方から妻がしつこく「美味しいやろ？栗がまた素晴らしいやろ？」としつこい。最初のほうは丁寧に返事していたが、あまりにしつこいので、私も返事が雑になる。加えて、私の隣で食べている次男が頬張ったゆで卵を吐き出そうとして、面倒な事になりかけている。さらにまた隣の長女はたった今ジュースをあげたばかりなのに、再び「おかわりー！」とせがんでくる。そして長男はテレビばかり見ていて、いっこうに食事が進んでいない。

というような事があり、私には積りに積もった鬱憤があった。

その後、食事が終わって私が洗い物をしていると、目の前で妻が学校の準備の事で長男に色々と問い質していた。それに対して長男が非常に態度が悪かったので、私がその態度を注意すると、長男は私に対しても同じような腹立つ態度を取ったので、今度は私が長男を怒った。

んで、その怒った私を見て、今度は妻が「誰かさんにそっくりやな」と、怒った姿が父にそっくりだと揶揄するもんだから、今度は私は妻に腹が立ってわりと本気のケンカになった。

そうして家の中はとてもヘヴィーな雰囲気になってしまった。誰が悪いかというと、みんな悪い。私も悪い。

せっかく美味しい栗ごはんを頂いたのに、台無しになってしまった。丁寧な暮らしなど程遠いと思った。