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あんたみたいなもんははどうせこんなんが好きなんやろ?その2(2023.12.15)

晩飯後、機嫌の良い妻。棚の高いところをガサゴソして何やらスナック菓子を取り出し、子供に見えないように、私だけに見せる。

それがこれだ。

パッケージに踊る文字
「五島灘の塩」
「揚げにんにく味」
「ビール好きが認めた」
「絶品」
全てが私の心の琴線に触れるキーワードだ。ほとんど数え役満じゃないか。

妻は黄金色に輝くかっぱえびせんの袋をヒラヒラさせながら「どうせこんなんが好きなんやろ?わかっとるで」と言う。「みてみ?なんやええところの塩を使うとるらしいで。しかも揚げにんにく味とかたまらんやろ?そんでビール好きが認めたとかいいよんで。最高やろ?」

確かに最高だった。おっしゃるとおりだった。私は自然と口をついて妻に「ありがとう」と言っていた。これは、完全に私のためだけのかっぱえびせんだったから。

私は掌の上で泳がされてる感を存分に感じながらも、甘んじてそれを受け入れた。そして美味いスナック菓子と、それから家庭内の平和を、一時的にしろ同時に手に入れる事ができる事を素直に喜んだ。

深夜。皆がようやく寝静まって、私は例のかっぱえびせんを探していた。なかなか見つからずゴソゴソしていると、暗闇の奥から妻がスーッと幽霊みたいにやってきて、かっぱえびせんを棚の高いところから探し出して私にくれた。

不敵な笑みを浮かべる妻。すべてお見通しといった表情をしている。

「おたのしみが始まるんやろ?だけど明日は朝からチビらを公園に連れていかな自分の首を絞める事になるんで?気ぃつけな」

「わかっとるわ」

そうして、妻は再び床についた。

真夜中に食べた「かっぱえびせん五島灘の塩と揚げにんにく味」はとてもにんにくが効いており、パンチのある味だった。なるほどビールに良く合うだろうと思ったが、あいにくビールの在庫がもうなかった。

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