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なぜ結婚がニュースになるのかーーアイドル好きと現代の大衆性

野球選手の大谷翔平氏が結婚発表して以降、連日、各種報道機関で騒がれている。

有名人の結婚がなぜ政治の話さえ吹き飛ばすほどの威力を持つのだろう。おそらく半分くらいの人はそう感じているのでは。

スポーツ選手が結婚しようがしまいが、たとえファンであったとしても一般人には1ミリも利害関係がないはずだ。
私たちとしては、大谷選手が明日も変わらず素晴らしいプレーをしてくれればそれでいい。
籍を入れたからと言って彼の存在が激変するわけでもない。結婚したら変わる的な前世紀の幻想を抱いている人はさすがにもういないと思うんだけども……

公共の電波でこれほどしつこく流す必要がどこにあるのかいまいちわからない。
伝えなければならないニュースではなく、いささか下世話な視聴率をとるためのニュースに、ここまで時間を割くのは、報道機関としてのモラルやらポリシー的にどうなのかとちょっと思う。

しかし有名人の結婚に興味津々で、時に死ぬほどショックを受ける人が大勢いることも事実である。
これは有名人を性の対象として消費しているから起こる現象だと思われる。

自分の性的魅力を商品にしている芸能人はともかく、スポーツ選手まで性の対象として消費され、パパラッチされるのは気の毒としか言いようがない。

著名人が、スポーツ選手から王族や皇族でさえも、アイドルのように扱われ大衆に消費される昨今の流れ、端的に言って欲望がワンパターンすぎやしないかと思う。フロイトが喜ぶぞ!!

大衆的であること🟰アイドルが好きという図式が出来上がっている。
そこに神への信仰のようなものがあるのは前時代の大衆と同じなんだが、現代の大衆はその神を欲望し、消費する。そこが現代の大衆の特質だ。
神に対する畏敬をなくし、アイドル=「偶像」を自らの(ほとんどの場合性的な)欲望を満たすために崇拝し、消費する。
したがって、偶像が自分の欲望を満たしてくれなくなれば捨てるか、他の偶像に取り替える。

最近「推し」が流行っているが、ずっと同じものを「推し」続けている人は稀である。「推し」は信仰でも愛でもなく、単純な消費である。同じものを消費しつづければ必ず飽きがくる。恋愛や結婚をすることで「他の誰かのもの」となった「推し」は、もはや性的な欲望を充分に満たしてくれないので、傷つき、他の消費させてくれる「推し」に乗り換える。

あるいは、そこからまさに「家族」のような性的搾取ではない方法で、その人を「応援」するようになるかもしれない。
消費や搾取という形ではなく、他者を好きになること、関係を築くことは可能なのか。

著名人の結婚ニュースで阿鼻叫喚が巻き起こる度に、現代社会の他者との付き合い方について、なにか変化はあるのかなぁと思って見ている。