俳優として、ひとりのときにやっている訓練法
昨日の定期稽古の座学の時間に、面白いトピックが出たので書いてみます。
普段、ひとりの時間にやっている芝居の訓練法ってなに?
というものでした。
たしかに、芝居の訓練っていうのは、相手がいないとなかなかやりづらいものです。
セリフを言い合うにも対象が必要だし、芝居における重要な能力のうちの70%ぐらいが、「目の前の相手にコミットしてそこから影響を受ける」ということだと思うから。
だから、ひとりでできることっていうのはかなり限られてくるし、メソッド的な訓練法だと「危ないからひとりでやらない方がいい」というものだってあるし。
ってことで、僕が日頃やっている、「芝居に役立つ(と思っている)訓練法」を書いてみまーす。
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1、戯曲を読む
ぜったい的に、これがいちばん重要だと僕は思っています。
戯曲は読めば読むほど、自分の血肉になります。
世の中に溢れている名作を知る、名作に触れる、っていう意味も大きいけれど、たくさんの戯曲を読むことで、たくさんの劇作法に触れる、ということもとても重要だと思っています。
戯曲、つまりお芝居の台本は、ある種の設計図のようなもの。
たくさんの設計図に触れておくことで、
・同じパターン
・普通とは違う書き方がしてある箇所
・それを立体として立ち上げるときに困難が伴うであろうところ
・絶対的に用意しておくべき材料
みたいなことが、一度読んだだけでわかるようになってきます。
じっさいに上演に関わる台本は、その稽古期間中に何回も読み直し、その都度あたらしい発見をしていくべきですが、
たくさん戯曲を読んでいるという経験をストックしておくことで、稽古初日に持っていけるアウトプットの「正解率の精度」が格段に上がります。
戯曲を読むことなら、ひとりの時間にいくらでもできます。
2、いろんな本を読む
戯曲を読むことに次いで重要な訓練法です。
小説・ビジネス書・自己啓発本・専門書、なんでもいいのでたくさんの本を読むことは、俳優にとって素晴らしい訓練法になります。
世界にあるさまざまな考え方を知り、さまざまなものの見方を知ることで、自分が演じられる役の幅が格段に広がります。
また、戯曲を読んだときに「引っかかる」ポイントも、増やすことができます。
演劇作品というのは、「人間の心」について扱っているものも多いですが、同時に「社会」について書かれているものもたくさんあります。
そういう「社会」について書かれた作品を上演するときには、「社会」について知らなければ、手も足も出ません。
また、戯曲に出てくる登場人物はさまざまなバックボーンを持っています。そのさまざまなバックボーンを変化自在に表現するためには、「さまざまなバックボーン」についての知識を持っていなければなりません。
「さまざまなバックボーン」のイメージを持ってそれを演技に反映させるのではなく、「さまざまなバックボーン」についての明確な知識を持っていることが重要なのだと思います。
ジャンル分け隔てなく、いろいろな本を読むことは、俳優自身の知識を広げてくれると同時に、好奇心の範囲もぐんぐん拡大してくれます。
たくさんのことに好奇心を持って向き合える、というのは、俳優にとって重要な資質だと思います。
3、ニュースに敏感でいる
演劇とは、社会との切っても切れない関係性を持っています。
どんな作品であっても、「ではなぜ、これを、いま、ここで上演するのか?」という問いに答えた上で製作がされているはずです。
ということは、その作品への理解はもちろん、その作品が上演される「いまの社会」についての理解もなければ、その作品が本当に着地すべきポイントを見つけることができなくなってしまいます。
なので、社会の動きには敏感でいた方がいいと、僕は思います。
いま世の中ではどれくらいの人が、何について悩み、困っているのか。
自分たちが住んでいる社会はどんな問題を抱え、あるいはどんな希望を内包しているのか。
そういったことを描く作品に関わることになったとき、社会についての知識が一切ないと、けっこう辛いことになりますから。
4、「それがベストか?」を考える
演劇を観に行ったり、ドラマや映画やCMを見るときには、可能な限り「それがベストか?」を考えるようにしています。
少しイヤな言い方をすると、見たものに対して「ダメだし」をするということです。
「ダメだし」という言い方には「ダメ」というフレーズが入っていることでネガティブに捉えられることがあるんですが、この言葉には、「ダメなところを洗い出すことで、改善点を明確にする」という意味があるのだと僕は理解しています。
改善点が明確になれば、そこを改善することで、全体のクオリティは確実に上がります。
作品の全体をよりよくするために必要な作業が、「ダメだし」なのです。
僕は、自分が見た演劇、ドラマ、映画、CMなどに、自分の頭の中で「ダメだし」をすることを習慣づけるようにしています。
それは、その作品の「粗探し」をしたいということではなく、「この作品の意図を伝えるためには、この表現形態がベストだったのだろうか?」ということを考えたい、ということです。
作品のコンセプトや「伝えたいこと」はとても素晴らしいのに、脚本や、編集や、演出や、音楽や、視覚効果や、俳優の技量など、さまざまな部分で「伝えたいこと」の形が正確に表現されないことが、多々あります。
それに気づく力を養いたいのです。
また、そういう本質的な「ダメだし」をするためには、「その作品のコンセプト」「その作品が伝えたいこと」を、一目見ただけで理解できなければいけません。
自分が見た作品に対して「それがベストか?」を考えることは、そういた視点を養うことにもつながると思います。
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はあ、なんか、書いてたら疲れてきちゃった。笑
まだまだ自分で気をつけて取り入れてることはあるので、また機会があったら書いてみたいと思います!
今日はとりあえずここまでっ。
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