EVO'23直前!EVOの楽しみ方講座(主にスト6


はじめに

山岡です。ということでEVOも直前になってきているので、ここでEVOの楽しみ方講座、という形で自分向けを兼ねて情報整理をしていきたいなと思ってます。例によって基本敬称略です。


昨今のスト6ブームで格ゲー人気復活が期待される中、今年も暑い夏、EVOの戦いが始まります。EVOとはアメリカのラスベガスで行われる世界最大規模の格闘ゲーム大会で、2日かけて予選を行い、決勝を最終日に行う、といった日程で例年この八月初頭の週末に行われています。

EVOの歴史は古く、「格ゲー史上もっとも有名な動画」とも言われるウメハラのレッツゴージャスティーン、も2004年のEVOでの一幕だったりします。時々「ポッと出のゲームがeスポーツとか言いやがってよー」というのを見ますが、実は名前がついていなかっただけでガチな奴らがガチってたのは昔々からだったりもするのです。世の中の大抵の物事がそうであるように。

そんなEVOの一番の特徴は、参加制限なしのオープントーナメント、という点でしょう。そう、締め切りまでに申し込みさえすれば私もあなたも参加することが出来ますし、出れば優勝する可能性は(限りなくゼロに近いとはいえ)ゼロではありません。そのため、地元NAキッズ、同窓会気分で集まる格ゲーおじさん、記念参加と腕試しを兼ねて各国各地域から集まるアマチュア、一発名を挙げるために優勝を目指して世界中から飛んでくるプロやアマチュア強豪、それらが一緒くたになって同条件で戦っていくことになります。

もちろんこのEVOきっかけで飛躍した人もおり、現に過去にはアマチュアで渡米し、8月のEVOで活躍し、帰ってきたら声が掛かって9月にはプロになっていた、という人もいます。あれくらい俺でもできる、ゲームくらい俺でもチャンスがあればできる、なーんて方、来年のEVOご参加を格ゲーマー一同お待ちしております。渡米が大変だ、という方は、実は冬から春のあたりにEVOJAPANというイベントも(例年通りなら)もありますので是非。

この、なかなか他のeスポーツにはない「天下一武道会感」「なんでもあり感」がEVOの魅力のひとつといってもいいでしょう。現にEVOの冠言葉に「格闘ゲームの祭典」とつくことがあります。真剣勝負の場でもあり、またフェスティバル的な要素もあるというわけですね。多くのメーカーが一堂に会し大会をするわけで、色々なメーカーがEVOに合わせて新作情報等を発表したりすることも少なくありません。

ただ、その規模、参加人数は年々拡大しつつあり、今年はスト6だけでエントリーが7061名、他タイトルもあわせた延べ人数は約15000人となっており、その分日程がタイトになったりと、年々「安定した勝利」はしづらい環境になっています。また、最近の格ゲーはPC版とコンシューマー(PS5等)版があり、基本問題なくできるものの、その内部処理能力等でPC版とコンシューマー版で「操作感が違う」と感じているプロも少なくありません。もちろんPC版のほうが望ましい環境なのですが、ただ、この人数のトーナメントを捌くためには膨大な数の筐体が必要であり、当然ですがハイスペックPCをそんな数用意することは困難です。今年の場合全種目の総参加者は約15000人、ダブルイリミネーションの試合数は参加人数の約三倍、つまり2日で45000試合を処理する必要があります。もちろんプールごとに分けてなので並列で45000試合するわけではありませんが、同時に回す筐体数が10や20ではとても足りないのはお分かりいただけるでしょう。そのため、EVOではコンシューマー機での対戦となっています。また、モニタも同数必要であり、これもPC同様コストの都合で最上級のものではない場合が多くあります。

つまり、プロゲーマーやゲーミングPCを使うアマチュアゲーマーたちが家庭や練習部屋で構築している環境よりラグが多かったり、言ってしまえば環境が一枚落ちる、実力を100発揮するのは難しい環境と言ってもいいでしょう。これが招待制の大会との一番の違いと言っていいかもしれません。

トッププロでもシードはあって1回、ベスト8くらいに上がるまでは基本的に1つのモニターを肘が当たるほど近い対戦相手と横並びで見る「横対戦」が続く。そしてその周りにはトッププロになると取材陣がついてまわり、そのさらに外には一目見たい格ゲーファンや研究をしたいライバルプロが二重三重と囲む形となり、人気選手ほど集中するのが難しい状況と言える。
この写真画面中央右下の紫パーカーがウメハラ、左隣が対戦相手、残り全員がギャラリー。

こういった環境要素と膨大な試合数により荒れる要素があり、個人的には昨今「最強」を決める大会という意味合いは以前より多少薄れているように見受けられます。ただ、それでも、ストリートファイターシリーズでは各国の予選を勝ち抜いた人間だけが参加できる冬の「カプコンカップ」と並ぶ2大格ゲー大会のひとつであり、格ゲーマーにとっての最上級の誉れであるのもまた確かです。競馬の日本ダービーが「最も運のいい馬が勝つ」と言われていますが、運だけでなく、当落線上に持っていけるだけの実力があったうえで、かつ運が必要なわけです。そういった意味では、他に例を見ない超巨大オフライン対戦イベントのEVOもまた「(実力も備わった)最も運のいいプレイヤーが勝つ」と言ってもいいのかもしれません。

日程と視聴方法

今年のevoは8/4-6、時差がありますので8/5の朝2時~昼13時ごろ、2日目が8/6の2時~13時ごろ、最終日が8/6の2時から14時ごろ、となっています。

日程はこちら。スト6に関しては日本語での配信中継もありますので、基本的にはストリートファイター6を追う分にはそちらで問題ないでしょう。ただ日本語配信チャンネルがカプコンYoutubeのため、ギルティギア等は別。気になる方はゲームタイトルの公式ツイッター等を追うといいでしょう。

こんなまる三日、それも12時間ずつなんて見れないよー、という方はとりあえず月曜の決勝をひとつお勧めします。ただ「月曜」なんですね。自分も働いていたころはこの月曜を毎年有給で確保していました。もし決勝ナマで見たい、という人がいたら、この日程調整を頑張ってください。

月曜日は見られないけど雰囲気楽しみたい、という方にお勧めしたいのは「8/6(日)の朝9時ごろ」から始まる、ストリートファイター6の「ベスト96→ベスト6」です。参加者7000人からベスト96に絞られるのがこの時間で、ここから最終日にプレイできる今年は6名まで削る実力者だらけのヘルトーナメントになります。ここらへんになるといくらプロといえども体調や組み合わせ、あるいは2本先取という「ブレ」のあるルールに翻弄され、敗退しても全く珍しくありません。もうこの96に残るあたりはいわゆる「ネームド」、つまり名声が界隈には轟いているプロやプロに近い実力を持つハイアマチュア、要は界隈の有名人ばかりで、一つ一つの試合も非常にハイレベルとなっていきます。

この7000人から96に残るには、基本的にシードありのプロでもウイナーズで抜けるには6連勝が必要です。簡単に6連勝といいますが、上の写真のような環境で2本取られたら終わりの6連勝なのでなかなかに難しいです。EVOは基本的に2ライフ制なので1度負けてもルーザーズのトーナメントを勝ち進めば決勝へ行けるのですが、ルーザーズはウイナーズから落ちてきた相手と戦う都合上基本的に倍程度試合数が増えます。たとえばシードでも初戦で負けると、ベスト96までに12連勝が必要になるわけです。

進行中の様子などは「格ゲーチェッカー」https://kakuge-checker.com/ 
というサイトが人気の配信を並べていたり情報をまとめていたりするので見てみるのがおススメです。

その他「個の選手を追いたい!」という方は一番いいのはTwitterで選手の挙動を見ることでしょう。だいたいの選手は試合前につぶやくと思います。ただ直前なので深夜のうちに終わってしまうかもしれない。そういうときのためにあらかじめ試合時間を調べておくのも良いでしょう。あるいは私のTwitterにレスとかで聞いてくれても構わないのですが。どうせ期間中大体見てるので。寝てたらごめんなさい。

上のリンクはEVOのスト6トーナメント表です。この検索欄に名前を入れると、トーナメントのどこにいるのかが分かります。例えばウメハラ、彼はDaigoで登録してるのでDaigoで検索してみましょう。そうするとPoolH212、4日のPM5時と出てきます。時差は16時間なので足して33、日本時間で4日の33時、すなわち5日の朝9時ごろ、というのがわかります。ただ、基本的には目安なので9時くらいと思っておくとよいでしょう。

心構え 気楽に見よう

格ゲーの大会でもっとも「あるある」なのが「進行遅延」、何らかのトラブルでストップしてしまったり開始が遅れたりというのはザラもザラ。国内よりも海外大会のほうがそれが顕著な傾向があります。前日のうちに昼寝してスマホゲーやお菓子、参加者ツイッターなどを眺めつつ、参加者の現地配信なんかを覗きながらダラダラみるのが一番続くと思います。初日の1回戦から「全部見るぞ!」と気合入れても疲れてしまうのでね。1日目は早めに切り上げて寝て起きてアーカイブ見るとかでもよいでしょう。

一人暮らししていたころは徒歩10分くらいでマクドがある界隈に住んでいたため、2時くらいからの試合を見て、小腹も空いて集中切れたタイミングでいい隙間を見つけて朝マックを買いに行く、というのもルーチン化していて楽しかった記憶があります。

注目選手紹介

ウメハラ

言わずと知れた格ゲー界の”王”。生きる伝説にしてスト2世代の生き残り、レジェンドオブレジェンドビーストダイゴ。国内格ゲーシーンで過去類を見ない視聴数を叩き出したCRカップでも一番いいところを持っていき、多数の視聴者に「ザ・ウメハラ」を焼き付けたのも記憶に新しいところ。

ただ本来彼自身の著書にもある通り「一日ひとつだけ強くなる」が信条であり、「新作のスタートダッシュ」はそこまで得意ではないプレイヤーでもある。そのうえ、富も名誉も余るほど手に入れている以上、このEVOの冠を渇望するモチベーションはそこまで高くないと思われる。だいたいもうスト4だけで2度もEVOを勝っている。そしてアメリカに行く数も少ないため、試合の合間にスポンサードメーカーによるイベントが入ったり、会場を移動するだけで人だかりが出来たりと、単純にプレイ以外も大変な状況で、ある意味最もヘビーな重りを背負っている感すらある。

また、もはや求道者に近い位置になっており、この「2先で紛れのあるPS環境のEVO」よりも、「実力者同士のハイスペックPC環境での言い訳の利かない長期戦」に重きを置いている感もある。こういった都合上、おそらくこのEVOに向けて仕上げてくる、といった感ではないため、このEVOでの活躍は難しそうだが、それでも「ウメハラ」なら、と思わせてしまう「主人公力」を持っているのは先のCRカップを見た方ならご存じの通り。伝説の「ウメハラ白ケン」が久々にEVOに出てくる、というだけでも一見の価値は十分といっていいだろう。

ときど

いまやウメハラと並び称される格ゲー界の至宝、東大卒プロゲーマーのときど。先日幕を降ろしたストリートファイター5プロシーン最後のTOPANGAによる招待制大会では、国内外の強豪を相手に7先で全勝優勝を果たし、「格ゲー星人」を倒すために腕を磨いてきたときどこそが格ゲー星人なのでは、なんて話が出るほどの圧倒的な仕上がりを見せていた。

ただ、そのスト5の大会は5月の末も末、6月にすぐスト6発売、なんなら4月くらいからベータ版や体験版でスト6が機能制限状態ながら触れる環境で、多くのプロが新システム等を試していた中、ときどは6を封印して5に最後まで集中していたためスタートダッシュで出遅れることになった。使用キャラクターも迷走した感があり仕上がりに不安も囁かれていたものの、7月のSFLでは元気に2戦2勝を叩き出し健在をアピール。

ただ、このEVOは発売2カ月の大会で、例えば来年、1年2カ月で2カ月体験版触ってない、はそこまでマイナスにならないだろうが、体験版から実質4カ月程度の体感で前半触っていない、は他のプレイヤーと比べると一枚辛い部分があるだろう、どこかしら無理をしている部分もあるのかもしれない。ウメハラやときどといった国内のアイコンが優勝すれば国内格ゲーシーンがさらに人気になる可能性もあるだけに頑張ってほしいが、ときどといえど今回ばかりは険しい道に見えてくる。

shuto

日本の若手実力派プレイヤー、CRカップ視聴者にはかるびマリーザを仕上げた男という印象が強いだろうか。個人的に日本勢で誰が上に行きそう、と見るとシュートを個人的には推していきたい。

シュートの強みはもちろん実力もそうなのだが、プロでも珍しい「モダン」プレイヤー、かつ「クラシックも実戦レベル」という点にある。今回発売直後のスト6、あまりよくない環境、そして攻めが強い現状、また画面端に追い込まれると噛み合えば2手3手のジャンケンに負けるだけで試合が終わるゲーム性、等を考えると「モダンの強み」がアドバンテージになる可能性は十分ある。トッププロのなかにはPC版に比べてPS版に違和感を覚えている選手も少なくないが、その違和感が本番で1ミスにつながる可能性もある。1回対空が出ないだけで例えばケンやラシードなら画面端に運ばれてしまうし、そこからは平等なジャンケンが待っている、負け筋としてあり得るわけで。そのヤバいシーンをコマンド入力で凌ぐか、ワンボタンで凌ぐか、どちらがミスが少ないか、と考えればワンボタンでSAまで出るモダンのほうが安全なのは多くの人が納得するのではないだろうか。

モダンはダメージが少ない、というハンデもあるが、じゃあ実際対空をワンボタンで出してダメージ差いくつよ、という話で。もちろんその差が勝負を分けることもあるかもしれないが、恩恵としてはワンボタンの安心感が勝るのでは、と踏んでいる。もちろんこれが5年6年経って攻略が煮詰まって、攻撃があまり通らないゲーム性になった場合、打てる技の少ないモダンのディスアドバンテージも重くなってくるだろうが、現状全キャラの対策完璧、なんて人がいるはずもない今年のEVOでは特にモダンが猛威を振るうのではないか、そしてモダンの最前線にshutoがいるのでは、と個人的には期待している。

マゴ

なお、代替便で無事到着しました。

格ゲープロ黎明期に「ウメハラ」「ときど」とプロになり「マッドキャッツ三銃士」とも称されたマゴさん。その明るいキャラクターと確かな実力、プロの中でもきっての理論派の一面も持ち、盛り上げるためならビックマウスにも、あるときにはDJ2D神にもなり、ある時は壇上で「2D神合唱団」を先導したりと、とにかくサービス精神、そして漢気を持ち合わせており非常にファンの多い選手。そしてそんなファンの心を揺さぶって離さないのは、マゴさん自身の良くも悪くも「持っている」部分になるだろう。

今回のEVOも0回戦敗退(会場にたどり着けない等で、参加できずに敗退すること)を避けるために朝から何度も現在地のツイートをして、飛行機の座席に乗ったツイートまでしながら、その便がピンポイントで急遽飛ばなくなるというアクシデントのおかげで朝からの一連のツイートが「フリ」になってしまったりで、試合前からトレンドとなったり、ゲーム系メディアの記事にもなったりと話題を振りまいている。

プレイに関しては実力はもちろん、そこでも「持っている」プレイヤーであり。理論派でもあるのだから格下のプレイヤー相手に事故なく勝つのが得意か、と言われればそうでもなく、理論派でありながら、なぜか相手の一世一代のミラクルプレイに巻き込まれたり、滅多に起こらない状況に巡り合って負けたり、一番大事なところでたまたま今まで何万回打ってきた技が出なくて負けたりすることもあり、「昇天」と称される敗退も多々ある。

一方、その「持ってる」資質はウメハラ同様「主人公」の星の元だと感じるほど。ただ、ウメハラが「悟空」的なカリスマ強者主人公感なら、マゴさんはダイの大冒険の「ポップ」、あるいは呪術廻戦の「秤」といったところで。ポロっと負けてしまうことはあれど、「ノッてるときは誰よりも強い」と思わせるほどのプレイが持ち味であり醍醐味でもある。この認識はほぼ世界共通で、直近の大会を制したビッグバード選手がEVOのベスト8予想に「マゴ」を挙げ

「良い時は素晴らしいけどダメな時は全然ダメ、だからEVOにどっちのマゴが来るか次第」と評したほど。ネタのように言われてはいるものの、現世界最強候補の目からしても「良い時のマゴさんなら」という評価なわけで。

また、マゴさんはきっての漫画フリークでそういった部分での造詣が深いのも魅力の一つでもある。悪いほうが出たら序盤でも落ちてしまいかねないマゴさんの試合は、安定感を誇るときどの試合とはまた別の意味で全く見逃せない。さあ、みんなもマゴさんの試合にかぶりついて「ヒーロー見参!」と唱えよう!

メナRD

活躍が予想される海外勢のなかでも個人的に日本勢の壁となりそうなのがこのメナRD。スト5で唯一2度のカプコンカップ制覇を成し遂げているドミニカ出身のプレイヤー。貫禄のある見た目だが1999年生まれの若手プレイヤーになる。

スト5での実績もそうだが、日本勢、というか世界中が苦戦しそうなのが、プロプレイヤーの中でも非常に珍しい「ブランカ」を使用し、大会で優勝できるレベルにまで仕上げている点だ。ただでさえ勝負勘、肝の太さに定評がある上に多くのプレイヤーが対策を後回しにしているであろうブランカという意味で今年のEVOの中心と目しても間違いないだろう。

日本のトッププロはウメハラ以外上位がほぼストリートファイターリーグ(SFL)に参加しており、チーム戦なこともありお互いの相手チームのキャラクターを優先して攻略していると思われる。そういった意味でSFLにいない「リュウ」「キンバリー」「本田」「ブランカ」はまず対策漏れの可能性がある。そしてこの中でも特に馴染みのないキンバリー、これはさすがに対策をするであろうプロが多いはず。リュウは言うて道着系、となるとやはり本田、ブランカの対策漏れがありうる。本田のトッププレイヤーはEndingwalkerがいるが他は差し当たって、というなか、本田よりもブランカちゃん人形を使ったセットプレイまであるブランカの大暴れを個人的には予想している。日本勢を応援する意味では、彼には悪いがメナを早めに誰かが止めてくれるのを祈りたいところだ。

おわりに

ということでEVOがあと数時間で始まる。自分は今日の昼間も寝てこのあとせめて23-2時くらいまでついでに寝てそこからEVO観戦としゃれこみたいところ。いやー楽しみ。あなたの夢は何ですか。私の夢はマゴさん戴冠です。

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