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掲載の喜び

優秀賞を、頂きました。
私のような市井の主婦からすると、優秀賞、天下の文藝春秋という響きが精神に与える効果は絶大だった。
泥臭く、地味に、育児に奮闘中の日々だが、受賞の喜びがあるだけで日常はビビットに彩られた。

抱えてる2歳児が重くて、靴も履かなくて、いつだって私の思った通りの方向に進むことは困難な毎日だ。
不機嫌顔が多くなりがちだが、「ほとんどのことはうまく行かないが、なんと言ったって優秀賞をもらえたんだから!」と思えばニコニコしてやり過ごせるようになった。
理不尽にクラクションを鳴らされようとも「私、ちょっとだけ文才があるもので」と思うだけですっかり心が晴れた。

昔から本が大好きで、近年は特にエッセイが好きだ。こどもの習い事の待ち時間や隙間時間に5分でもいいから図書館に立ち寄って、目についたエッセイやインタビュー記事を片っ端から読みふけるのが密かな楽しみだ。

自分が並べた言葉たちが、活字になって、印刷されて、全国の書店に並ぶなんて。
これはもう本の虫、大興奮である。

実は2022年の4月に夫の海外駐在への帯同を終えて日本に帰ってきた。
待ってましたとばかりに前職から復職の誘いがあったが、断った。
理由はいろいろあるが、就労という形での自己実現を諦めた。

世は両親共にバリバリキャリアのパワーカップルを後押しする風潮ではあるが、我が家では経済的に慎ましくともマンパワーの余裕、夫婦の心の余裕を選んだ。

同じ大学を出て、立派に子育てをしながら働く友人に、一体毎日なにやって過ごしてるの、どういう気持ち?と叱咤されたこともあった。



環境問題や捨てられていたものを活かす、といったことが我々夫婦の関心ごとのひとつだ。
夫は企業に属しながら環境によいビジネスモデルを新たに作ることに熱心に取り組んでいる。

膨大な量のインプット、思考の整理、クリエイティビティが必要な仕事であると思う。

私は夫のビジネスの方向性に共感するし、アイデアが次々生まれるような環境を整えたい。だって私には到底できないことだもの。一つでも多く実現してほしい。

夫が思い切り仕事ができるよう(多少散らかってても目を瞑ってもらって)家事は一手に引き受ける。
夫が家で落ち着いて本を読んでいればお茶を淹れながらそっと応援する。
夫の趣味やリフレッシュには気持ちよく取り組めるよう笑顔で送り出すことと決めている。

趣味には山の開拓も含まれており、夫婦の服は買えなくとも、山の開拓に必要なものに経済的資源は自然と集中していった。

夫の仕事はとにかく捗っているようで、いつもご機嫌で助かる。

私は私で家事育児の主担当として奔走する。
羽が生えたように一人で好きな場所を好きなように歩くことも、誰かの役に立つことも、育児主担当としては人の手を借りなければ難しくて、自分の非力を呪っていた。2023年は1月から10月くらいまで、そんな感じ。

サービスを提供される。消費する。その繰り返し。
私はいつまで提供される側でいるんだろう。
これは今でも悩んでいる。

幸運なことに、ささやかではあるが、副産物的に山の開拓や育児を通して私自身の経験や深めた考えが蓄積してきた。

エッセイを書く時間こそが私の世界を描くこと。
エッセイを読んでもらうことで誰かの心を動かすことができれば、最高の自己実現だと思う。

腐らずにしたため続けようと思う。

今回の受賞は、我が家の時代と逆行している昭和的な姿や、一見無意味に見える山開拓という行動をも肯定してくれたようでありがたい。

山開拓を応援してくれる母、面白がって進捗を聞いてくれる近くに住む友人たち、叱咤しつつ立派だと褒めてくれた親友Aちゃん、たくさんの記事からスキの少ない私の記事を見出してくださったnoteの担当者の方々、審査員の皆様、記事を読んでくださったみなさんに、感謝したい。


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