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セピア色の思い出 2

「父の蝶ネクタイ」

寡黙な父は胸に蝶ネクタイの形をしたケロイド痕がありました。戦争で弾が胸をかすった跡だとか。
また潜水艦乗りだった父は、酔うと「メーンターン…」と意味不明な事を言ったりして、幼い私の耳にいつまでも残ったのです。それが後に、潜水浮上を制御するメインタンク(メーンターン)に海水を入れたり抜いたり、潜航したり浮上したりする合図の掛け声だと知りました。

父は原爆が投下された後の広島に、潜水艦で救済に行ったと言います。どういう状況だっのか、小学生の私には勿論わかりません。父の言う言葉を見つめ、幼い私は何を思い何を感じていたのでしょう。

父のケロイドの蝶ネクタイは、被曝の障害だったのでしょうか。被爆者手帳も無かったので分かりません。

そしてその後生まれた私には子供ができませんでした。無関係かも知れませんが。

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