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日本のスポーツクラブを取り巻く経営状況(Jリーグ・プロ野球)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大により、日本の2大スポーツであるJリーグとプロ野球も延期が続いています。売上の目途が立たず、世界のビッグクラブでも経営難が騒がれている中、今回は日本の各クラブが元々どのような経営状況にあるのかを見ていきます。

Jリーグ、プロ野球ともに公開されている貸借対照表をもとに、財務分析の基本となる「流動比率」・「自己資本比率」・「ROE」の3点を比較していきます。なお、各クラブの決算時期に合わせて、下記時点でのデータを用いています。

【Jリーグ】※対象:2018シーズンにJ1所属の18クラブ
2018/12/31:神戸、長崎
2019/1/31:札幌、仙台、鹿島、浦和、FC東京、川崎F、横浜FM、清水、名古屋、G大阪、C大阪、広島、鳥栖
2019/3/31:柏、湘南、磐田

【プロ野球】※対象:非公開の巨人と中日を除く10クラブ
2018/12/31:広島、ヤクルト、DeNA、日本ハム、ロッテ、楽天
2019/2/28:ソフトバンク
2019/3/31:阪神、西武、オリックス

※Jリーグは2月開幕、プロ野球は4月開幕であることから、1~3月にかけてシーズンチケット等の収入が入ってくることが想定されます。そのため、同じ状況下での比較にはなっていないことを予めご了承願います。

①流動比率(=流動資産/流動負債)

「流動比率」とは、企業の短期的な支払い能力を示す指標。一般的には200%以上が理想とされ、120%以上でも健全な状態といえる。

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Jリーグから全体の3分の1にあたる6クラブ、プロ野球からは半分の5クラブがランクイン。Jリーグ、プロ野球ともにほぼ同じクラブ数となっている一方で、流動資産を比較するとプロ野球クラブの方が総じて豊富な流動資産を保有していることがわかる(下表)。

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阪神の流動資産は約165億円(2019年3月末)となっており、Jリーグ・プロ野球の全体で比較してもかなり潤沢なキャッシュを保有している。

②自己資本比率(=自己資本/総資産)

「自己資本比率」とは、総資産に占める自己資本の割合のことで、倒産のしにくさを示す指標。70%以上が理想、40%以上で倒産しにくいといえる。

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Jリーグから8クラブ、プロ野球から4クラブがランクイン。流動比率でも上位にいたクラブの多くがランクインしており、FC東京と日本ハムは非常に安定した経営基盤を持っていることが伺える。

③ROE(=当期純利益/自己資本)

「ROE(Return on Equity)」とは、自己資本利益率の略で、自己資本からどれだけ効率的に利益を生み出しているかを示す指標。20%以上が理想、10%以上が健全な状態であるといえる。

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Jクラブから6クラブ、プロ野球から4クラブがランクイン。イニエスタをはじめ多くのスター選手を獲得している神戸と、近年の経営改革が有名なロッテの2クラブが断トツで高い結果に。また順位が上位のクラブだけでなく、中位~下位まで満遍なく入っており、各クラブの取組みによって差が出ていることが伺える。

おわりに

【まとめ】
・堅実な経営をしているのは、FC東京と北海道日本ハム
・プロ野球の方が、Jリーグに比べてキャッシュを豊富に保有
・効率的に利益を生み出しているのは、ヴィッセル神戸と千葉ロッテ

Jリーグ・プロ野球ともに6月以降での再開を目指しています。無観客試合での再開となった場合は、チケット収入やスポンサー収入が減少し、さらに財政的に困難になる可能性もあります。ただ、困難を乗り越えれば、必ずより良い世界が待ち受けています。BBB(=build back better)のもと、コロナ後がより良い社会になることを信じ、スポーツが我々の日常に戻ってくる日が1日でも早く来ることを願って待ちたいと思います。

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