_テレビの企画_ヤギワタルさんのイラスト

よかったかどうかの「答え合わせ」は、また後で

企画メシ第6回のゲスト講師として、「ゴッドタン」などの人気番組を担当している東京テレビプロデューサー佐久間宣行さんをお迎えして、テレビの企画が開催されました。

企画メシとは、電通のコピーライターの阿部広太郎さんが主催する企画講座。この講座は、2部構成で、前半はゲスト講師へのインタビュー、後半が事前に提出した企画への講評の時間となっています。この記事では、前半のインタビュー部分をまとめています。


学生時代は、引き出しを作る絶好の時間

10代の頃は、カルチャーが本当に好きだったと語る佐久間さん。半蔵門のチケットぴあ本社の前で、徹夜して並んでるとチケットが取りやすかったという学生時代。

大学よりチケットぴあに朝1で並んで、観たい演劇、舞台のチケットを手に入れる。そして、大学に行かずに、それを観るという生活を送り続けてました。そのため、1年生の時には、前後期合わせて2単位しか取れず、大学を卒業するのに5年かけたんだそうです。

この好きなものにどっぷり浸かる時期は、すごい必要で、テレビと掛け合わせられる引き出しを作る時間になりました。大学5年の間に、音楽、映画、舞台など死ぬほどカルチャーにどっぷり浸かっていたことが、今の仕事に、全部繋がっている。この時期があったから、今の僕がいるんです。


くだらなかったADの仕事が、サッカーボールのおにぎりで、面白くなった。

佐久間さんはテレビ東京に入社後、深夜ドラマの担当に。深夜ドラマの体制は、チーフADが1人、セカンドからフォースまでのAD3人体制が普通。しかし、その番組では、ADだけでなくバイトも、逃げ出したドラマだったため、1人3役をこなしていたんだそうです。

「本当にあれは、地獄で、リアルに寝る暇がなかった。思い出したくもないですね。笑」と佐久間さんは、言ってました。しかし、この思い出したくもない時期に、意識の変化が芽生えたんだそうです。

最初ドラマのADの仕事はくだらねぇな。と思っていたんです。これは、俺のやりたかったクリエイションと何が繋がってるんだろうって。そんなときに、サッカー部のマネージャーが先輩のためにつくるお弁当が急遽必要になって、「居酒屋でバイトしたことがあるなら、できるでしょ?」って任されちゃったんですよ。それで、女子高生がつくるリアルな弁当ってなんだろう? と考えて、サッカーボールのおにぎりを作ったんですよ。あとは、冷凍食品もちょっと入れて、女子高生だと、これぐらいしか作れないかなと提案したら、監督と役者が喜んでくれて、それで台本が変わったんですよ。

この経験を通して、つまらなかったADの仕事も、自分のやりたいクリエイションに繋がっているかもしれないと思えるようになり、意識が変わっていったんだそうです。

そこから意識も変わり、ひとつひとつの作業に、自分の色やアイデアを入れていき、それを面白いと評価してもらえると、任せてもらえる分量が増えていくという、仕事が仕事を呼ぶ法則を発見し、違う番組にも呼ばれるようになったとのことでした。


時間がないテレビマンの企画書は、情報であり、名刺である。

当時は、企画を考える時間を確保するのも難しかったという佐久間さん。仕事の合間に、とにかくメモに"企画のタマゴ"を作りまくる。そして、その企画のタマゴたちを、3日サイクルのオーディションで篩(ふるい)に掛ける。

それを繰り返して、純度の高い、勝負できる企画を手にして、企画会議に挑んできたそうです。また、それ以外にも、あえて通らない企画も作っていたんだとか。その訳を聞いてみました。

音楽や舞台が死ぬほど好きだったので、カルチャーを絡めた企画を、必ず1本は出していました。通らなくても「芝居とお笑いに詳しい佐久間というヤツがいるぞ」という認識をつくれればいいやと。それが、うまくいって、他の番組で呼ばれるようになったんですよ。もし、僕が通る企画だけ考えていたら、カルチャーよりの番組をやらせてもらえてなかったはず、じぶんの色を出し続けていたから、呼ばれたんだと思っています。

フリーランスでも、サラリーマンでも、自分のキャラクターを考えなければいけなくて、出す企画に自分を入れておく。通らなくても、「俺の得意分野ここだよ。」と発信しないとチャンスすらもらえない。

だから、出す企画に自分の色、キャラクターを載せておかなければいけない。企画を実現することだけに囚われず、見つけてもらう努力をするのも大切だと教えてくれました。


桜木花道のリバウンドのような、佐久間さんの編集力

佐久間さんの番組は、お笑い芸人たちが、ノビノビと自由気ままに暴走しているのが面白いというのが、特徴のひとつ。その番組をどう作っているのかを伺いました。

ぼくらの番組づくりの場合は、「困った場合の出口(オチ)は、ここですけど、迷っていいですよ。迷ったところを番組にしますので。」っていう感じ。そうすると迷うところも頑張ってくれるんですよ。そういう番組ですって意思表示をしています。そうやっている番組だから、「今日はどうなるかわからないですけど、新企画です。」とやっても、楽しみにしながら、遊びにきてくれる芸人さんたちがいるんだと思います。

しかし、迷ったところを番組にするということは、スベったりするリスクが高くなるはず。それなのに、楽しみにしながら、遊びにきてくれる芸人さんがいるのは、どうしてなのかということも聞いてみました。

自分のストロングポイントが"編集"なんですよ。だから、どんなに現場が混乱しても、スベっても、どうにかするんです。「『スラムダンク』の桜木花道がリバウンドを取ってくれるから、シュートを撃てる」というのと同じように、「佐久間が編集するから、多少無茶しても大丈夫だ。」と、芸人さんに安心感を持ってもらってきた。編集のあがりで、僕は信頼関係を勝ち取ってきたと思っています。


できないを認められれば、企画の質はあがる

面白い番組をつくるためには、チーム編成が一番大事と力強く語る佐久間さん。いいチーム編成をするためには、「己を知っているかどうか」がポイントなんだそうです。

「自分が最初に書いた企画のどれを1番実現したいのか。」をもう一回考え直します。チーム編成も予算などの制限があるので、自分に1番足りない部品がどこかを判断します。それができれば、足さなきゃいけない部品がわかる。そして、その部品を持っているメンバーを優先して入れるんです。

一番欲しい武器が何かわかっていないとできないチーム編成を佐久間さんは、意識していました。悔しいけど、自分の"できない"を認めるのが、最終的に面白い番組に繋がると佐久間さんは言います。


好きなことをじぶんの武器にするために、アップデート時間を確保する

社会人になってからは、googleカレンダーに「テレビみる」「book」とか書いて、時間を確保しているんだそうです。今でも映画や舞台を見続けてる理由をこう語ってくれました。

ただ好きなだけなら、いいんです。趣味が終わるだけだから。でも、それを自分のストロングポイントだったり、武器にしたい場合は、アップデートしないとすげーダサくなる。時間がないときには、一番自分が時間があった頃の引き出しを開けちゃうから。ノスタルジーに浸る企画の時は、いいけど、そうじゃないときは、ダサいだけ。

自分が苦労していないのに、なぜか褒められることがストロングポイントであることが多い。年月の経過とともに、ストロングポイントをしっかりとアップデートし、新しい引き出しを増やし続けるの努力を怠らないこと。その姿勢を学びました。

また、「よかったかどうか、答え合わせは、また先にわかるんですけど」というフレーズを講義中に、よく耳にしました。現時点で正解かどうかはわからないけど、選択した道を、自分で正解にするんだという強い覚悟と自信を感じました。

佐久間さんは、将来暴露本を書くつもりらしいです。笑 そのつもりだから、どんな大変なことも大丈夫と仰ってました。きっと、その暴露本で、選択した道が、正解だったのかどうかも教えてくれるのではないでしょうか。暴露本を出すのが、本当かどうかはわかりませんが、その暴露本を読める日を楽しみにしています。笑


今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございます!企画メシで、阿部さんや佐久間さん、企画メシ仲間たちからもらった熱量を、少しでもおすそ分けできてたら、嬉しいです!

今回のテレビの企画のレポートも、違った切り口でまとめたものもあります!こちらもぜひ、読んでみてください!

・企画メシ2018インターンの皆川さんが書いてくれたレポートがこちら
・Careerhack編集部野村愛さんが書いてくれた記事がこちら


また、今回の表紙のイラストも、毎度お馴染みイラストレーターのヤギワタルさんです。今回は、テレビの企画なので、テレビのイラストをヤギさんが描いてくれました。ヤギさんの作品はこちらから、ぜひ見てみてください

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