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読書録:活断層とは何か

池田安隆ほか『活断層とは何か』(東京大学出版会)
私は幼稚園児のときに阪神・淡路大震災を、社会人1年目で東日本大震災を体験した。関西在住なので東日本大震災で直接の被害を受けることはなかったが、その後にニュースで流れた津波の映像は衝撃であった。
本書を手に取ったのは大学生時代かその後の下積み時代かのどちらかで、なぜ関心を持ったのかわからない。ただ、考古学ではときおり発掘調査で地震痕跡(噴砂など)を検出することがあるので、知識として仕入れておこうと思ったか。あるいは、地形学への関心の延長かもしれない。いずれにせよ、必要か必要でないかは後天的に決まるので、知識は広く持っておくに限る。
本書は下積み時代に読み始めたが、その後、多忙になって残業が毎日続き、本を読む余裕がなくなってしまった。そのため3年くらいは放置していたと思う。正職員での採用が決まり、時間と精神に余裕ができてやっと読み切ることができた。
本書は活断層についての概説書である。地震大国日本には、無数の断層がある。本書は地震学の概説書でもあるので、断層のうち活断層のみを取り上げていて、主に活断層がどのように活動すると地震が起きるかを説明している。一見、考古学とは関係なさそうだが、先にも述べた通り、遺跡の調査で地震痕跡を見つける可能性があるので、地震でどのような痕跡が残るかと、それがどのようなメカニズムでできるのかは知っておいた方が良い。他にも断層は断層崖という特徴的な地形を造り、それが古墳の立地に影響を与えている場合があるので、断層を知ることは考古学研究にとって有益である。
考古学は地面に残された生活痕跡を扱う学問なので、地形学との親和性が高い。そのため、地形学などの知識を積極的に吸収しておく必要がある。


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