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ブロック・L・アンディ他『ディスレクシアだから大丈夫!視点を変えると見えてくる特異性と才能』金子書房

ディクレシアという言葉は初めてなのに本書には説明がない。唯一、翻訳者のコラムに、「日本の法律では発達障害支援法にて発達障害の中でも全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する、推論するなどの特定の能力の習得と使用に著しい困難を示す、さまざまな障害であるLD(学習障害)の中の特に「読む、書く」の部分の困難さを示す」ものと記されている。

この本は、ディクレシアと診断された個々人がどのような人たちであるかについて書いた本とされている。ディクレシアの人が、どんな人たちなのかについての本である。

「発達性読み書き障害」とも訳され、読み書きの問題に焦点が当てがちであるが、それが唯一の問題ではない。脳に欠陥があるわけではないが、脳の回線が違うだけであり、困難を補って余りある特性を持つ。

空間認知能力が強い。空間イメージをまるで実物のように視覚で示すことができる。土地を見た瞬間に頭の中に新築の家を建てることができる。しかし、文字や記号の裏返し、鏡文字を書いてしまう。例えば、dとpの区別がつかない。

相互関係性把握能力が高い。物事の視点を変えて、俯瞰して見ることができる。しかし、言葉の読み違いや、言い間違いをしやすく、選択肢問題に苦しめられる。

物語理解能力がゆたかである。非常に強いエピソード記憶で、出来事や経験を覚えるのが得意である。エピソードを再構築することは、創造性に強く結びついている。しかし、抽象的で文脈のない知識は苦手である。

シミュレーション能力が強い。実社会のパターンを読む力、動的推論が得意である。常に変化する場合や、関係する変動要素があいまいな場合に、起こり得る未来の出来事を予測し、発明や動作の展開を予測することができる。しかし、洞察力は強いが、時間がかかり、受身的で、途中の説明ができない場合がある。

ディクレシアは、違った働き方をする脳神経システムを持つ。それは、読み書きに障害がある以上に、すばらしい優位性がある。本書には、その優位性を活かすために、読み書きの方法、高校、大学、職場での過ごし方が記載されている。

アインシュタインは、普段は言語を使わない思考スタイルを用いており、言葉に落とし込むのが困難であると言ったそうである。ディクレシアについて知ることができだだけでも貴重な本であると思う。



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