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齧歯(げっし)目ネズミ亜目の動物。農産物や食糧、家屋に被害を及ぼす害獣ですが、それだけに人間社会との関わりも深いのです。

一般に齧歯目ネズミ亜目に属する哺乳類の総称。繁殖力が強く、ほぼ世界中に分布します。哺乳類最大のグループである齧歯目で最も繁栄しています。多くが小型で、体長9~20cmのものが大半。主として夜行性で、植物を主食とするものが多いです。普通はノネズミとイエネズミに分けられ、ノネズミ類は約20種で山林、原野、農耕地などに棲みます。イエネズミ類はドブネズミ、クマネズミ、ハツカネズミの3種で、人間社会に半ば寄生して人家や付近の畑などに棲みます。農産物や貯蔵食糧の食害、家屋の破壊のほか、各種疾病の媒介者となるため、駆除の対象とされます。一方、ラットやハツカネズミは実験動物として役立っています。

考古遺跡の高床式建物跡からネズミ除け(ネズミ返し)が発掘されるように、古くから害獣とされてきましたが、それだけに人間社会に身近な存在だったとも言えます。『古事記』上巻に、大国主神(おおくにぬしのかみ)が野火に囲まれた際、鼠が穴を教えて難を逃れた話がみえます。これは鼠が地中の世界の主で、火災など危機を予知するものと考えられてきたことを示唆します。鼠が大黒天(だいこくてん)の使いとされるのも、この神話を継承したものといいます。『枕草子』の「むつかしげなるもの」の段には、毛もまだ生えない鼠の子が巣から転がり出ることとあります。十二支の一番目、子(ね、し)にあてられる動物は鼠。昔話「鼠浄土」は穴に転げ込んだ団子を追って地下に入った老爺が、鼠に歓待されるという筋です。江戸時代、男女の小袖(こそで、着物)の色目として鼠色(たんに鼠とも)が多用されました。江戸末期の盗賊、鼠小僧次郎吉(ねずみこぞうじろきち)は義賊に仕立て上げられました。鼠小僧の名は、鼠のように小柄でどこにでも出没したことによるといいます。

鼠図

白井直賢筆 
東京国立博物館 
白井直賢は、写実的な画風を確立した円山応挙の門下で、特に鼠を主題とした描画を得意としました。黒い3匹の鼠の動きが写実的な描写で精妙に表現されています。黒漆で描いた鼠の両目が愛らしさを誘います。

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