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かき

カキノキ科の落葉高木。古くから栽培され、食用の果実をはじめ用途が多く、暮しを支えました。

カキノキ科の落葉高木。日本では本州〜九州、中国の山地に自生し、また古くから栽培されています。幹は直立し、高さ5~10メートル、よく分枝し、葉は短楕円形で光沢があり、秋に紅葉します。5月下旬から6月上旬に白い花が咲き、秋に黄赤色の実を結びます。果実は大小さまざま、形も円、楕円、円錐などがあります。甘柿と渋柿に大別されます。

10世紀の『本草和名(ほんぞうわみょう)』に柿は「錦葉」「蜜丸」「朱実」ともいうとあり、『和名抄(わみょうしょう)』では野生品と栽培品の区別がされています。『延喜式(えんぎしき)』によれば、神祭の供物や供御(くご)などに熟柿(じゅくし)や干柿子が用いられました。鎌倉時代には甘柿が栽培されており、『春日権現験記(かすがごんげんげんき)』や『慕帰絵詞(ぼきえことば)』に串柿がみえ、『庭訓往来(ていきんおうらい)』では樹淡(きざわし)・木練(こねり)を記します。柿渋を用いた柿色の衣は柿帷(かきかたびら)で、荘園領主や幕府に対抗した悪党集団も身にまといました。『毛吹草(けふきぐさ)』に西条柿、御所柿、蜂屋柿など、『雍州府志(ようしゅうふし)』に木練、筆柿、渋柿、木醂(きざわし)柿、醂柿、鈎(つるし)柿、転(ころ)柿が見え、脱渋法や干し柿乾燥法などが紹介されています。江戸時代後期の『本草綱目啓蒙(ほんぞうこうもくけいもう)』では200余品種があるとし、昭和初期には800~1000種とします。甘柿は福岡、岐阜、奈良の各県など、渋柿は山形、福島、和歌山の諸県でよく栽培されます。

渋柿は熟柿にするか、さわし柿または干し柿など人工的な渋抜きを行います。柿の葉鮨(かきのはずし)、柿なますも馴染みの品々。柿渋は、番傘や渋紙、渋うちわなど防水防腐に利用し、家具や漆器の下塗り、染色、日本酒の醸造にも重用されます。柿の心材は家具や細工物の用材となり、とくに黒柿は珍重されます。人魂が柿の木に寄りつくなど柿の俗信も多いです。

雀と柿、稲穂

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