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訪日中国人が使うOTAサービスをまとめてみた

少しデータは古くなりますが、中国におけるオンライントラベルの流通総額は、2017年には7,384億元(1,072億米ドルに相当)に達しました。前年比では24.3%増えました。iResearchによると、中国人旅行者数と消費金額の上昇に伴い、オンライントラベル市場が拡大しており、その流通総額は、2018年以降は約14%の成長率が持続すると予測されています。特に2022年は、北京冬季オリンピックという要因により、2021年より伸びると思われます。

また現在、中国でパスポートを保有している人は全人口の約5%で、2019年には訪日中国人がいよいよ1,000万人目前になると予想されています。中国におけるオンライントラベル市場は急速な成長を見せていますが、これは中国経済の発展により、中国人の生活水準が向上しているためで、これまでのような観光名所を巡る旅行から、レジャーを求める人たちが増えています。

そこで、今回は訪日中国人が使う主要なOTAサービスをまとめてみたいと思います。

1, 携程旅行网(Ctrip / シートリップ)

携程(Ctrip / シートリップ)は1999年に中国の上海で設立された中国発のOTAで、オンライン旅行サイトとして中国首位、世界第3位の規模となっています。旅行予約サイト「Trip.com」を世界に展開し、航空券やホテル、鉄道の予約などを受け付けています。

同サイト会員数は中国国内で約3億人にものぼり、全人口の約4分の1が使用するほどの人気です。2018年の春節に来日した中国人観光客の約2,000人に百度(バイドゥ)が調査したところ、約5割がCtripを利用していることが明らかになりました。また、同サイト利用による訪日客は90%以上が中国大陸からとなっており、さまざまなサイトからの在庫共有がされていることから、潤沢に宿泊施設を供給できる点が強みとなっています。

現在、中国以外では日本、韓国、シンガポール、香港、台湾に支社を開設して、アジアへの進出を積極的に進めています。2014年5月には、日本法人「シートリップジャパン」が東京の日本橋茅場町に開設されており、今後の一層の拡大が注目されるサイトです。

2, 大众点评(Dianping / たいしゅうてんぴょう)

大众点评(Dianping / たいしゅうてんぴょう)は、2003年に上海で創業された中国最大の口コミ投稿サイトです。2015年8月には、美団(Meituan)と合併し、新会社「美団点評」を設立しています。新会社の評価額は100億ドルを超え、中国最大のユニコーン企業と呼ばれています。

「中国版食べログ」とも呼ばれ、飲食店への口コミやレビューを中心とした情報を提供しています。日本の食べログと異なる点は、飲食店だけでなく、映画、ホテル、娯楽、美容など、生活に必要なサービスを幅広くカバーしている点です。2003年から運営を開始したこのサービスは、今や中国国内シェア85%以上を獲得しており、中国人にとっては生活に欠かせないインフラサービスに成長しています。

2015年の時点では、月間アクティブユーザー数は2億人、登録された店舗数は1,400万件を突破しています。月間のPV数は150憶PV以上、そのうちモバイル端末からのアクセスは85%を占めています。日本を訪れる中国の個人旅行者(FIT)の約半数が「大众点评」を利用しており、日本のサービスを選ぶうえで欠かせないサイトです。

3, Fliggy(フリギー)

Fliggy(フリギー)は中国人2.7億人が登録する、中国人向け旅行サービスプラットフォームです。2014年に旅行専用プラットフォーム「Alitrip(アリトリップ)」としてオープンしましたが、2016年10月に名称を「Fliggy」に変更しています。Fliggyを運営するのは、世界最大の流通総額を持つ中国のオンラインモバイルコマース会社「アリババグループ」です。

プラットフォーム内で、25万軒以上のホテルや宿泊施設、200万点以上の旅行サービス商品、500カ所以上の世界の観光スポットなど、旅行に関するあらゆる情報を扱っています。プラットフォーム内の支払いはすべて「Alipay(アリペイ)」で決済します。ちなみにAlipayもアリババグループのスマホ決済サービスです。2019年1月にはAlipayのユーザー数が10億人を超えたことが発表され、今いかに勢いがあるかがわかります。

また、2019年3月には新サービス「Fliggy Buy」を発表しています。これは海外旅行に行く前にオンラインサイトから商品を注文しておけば、旅行中に免税価格で商品を受け取ることができるというサービスです。これにより、中国人観光客が海外旅行先で費やす買い物時間を大幅に短縮することが可能です。今後も利用者の増加が期待されるプラットフォームです。

4, 马蜂窝 (mafengwo / マーフォンウォ)

马蜂窝(mafengwo / マーフォンウォ)は、中国最大の旅行口コミサイトです。2011年4月からサービスを立ち上げ、旅行に特化したブログ「旅行記」を一般ユーザーが投稿し、それに対しコメントをつけることができるサイトです。ユーザー参加型メディアで世界中の6万箇所以上の情報が掲載されています。

以前の訪日中国人は、団体旅行で訪れることが多かったのですが、今では個人旅行が増えてきています。理由としては、中国では1964年に海外観光旅行の自由化が行われ、訪日旅行ではビザの取得要件が年々緩和されたため、個人手配の旅行も気軽に利用されるようになってきました。こうした個人での旅行手配では、訪問先や宿泊先を自分で決めなければなりません。こうした旅程の検討の際、情報の収集に使われているのが马蜂窝です。

马蜂窝の登録ユーザー数は1.3億人、月間アクティブユーザー数は8,000万人です。 中国国内、そして世界中の観光地の口コミが掲載されています。ユーザーによる旅行ブログの公開と閲覧のサービスだけでなく、サイトから航空券やホテルの予約ができるようになっています。马蜂窝は日本ではWeChatやWeiboといったSNSほど知名度はありませんが、2019年7月には日本進出を発表しており、今後日本でもますます普及が予想されるサイトです。

5, 穷游(Qyer / チョンヨウ )

穷游は(Qyer / チョンヨウ)は2004年に中国人学生が立ち上げた旅行サイトで、安価で海外旅行に行きたい層に向けたサービスを展開しています。穷游では口コミがメインの情報元となっており、月間アクティブユーザー数は870万人です。実際に旅行したユーザーが書いた記事や写真を参考に独自のルートを作成することが可能で、旅行スケジュール作成の支援する便利な独自ツールを備えているのも特徴です。

穷游には、世界各国に旅行した人のブログが整理されています。例えば、東京で面白かった所、美味しかったお店などについて多くの人がブログを書いているので、それらを読んで情報を集めることできます。また、サイト上でイベントをよく開催しています。「日本で行くべき場所を紹介してください」と公募し、入賞者には賞金が支払われるというようなイベントには、多くの人が情報を投稿します。そうやって集められたネット上での評価を参考に、ホテルなどに点数が付けられていきます。

周囲と差別化を図りたいという思いが強く、まだあまり他人が経験したことのない旅行を求めている個人旅行者(FIT)の層は、ユーザーが投稿するオリジナルコンテンツ(UGC)が集積しているサービスに価値を見出し始めています。そのため、数々の旅行記が掲載されている「马蜂窝」と同じように、「穷游」は中国で人気の旅行サイトです。

まとめ

中国では携程旅行网(Ctrip)、Fliggy、马蜂窝、穷游などの旅行サイトや、大众点评などの総合口コミサイトなど、訪日旅行における航空券やホテルの予約、飲食店や旅行スポットの情報提供をしていて、億単位のユーザー数をかかえるサイトがたくさんあります。訪日中国人が、団体旅行よりも個人旅行が増えている流れからも、今後はより多くの中国人観光客が個人旅行という形で海外旅行へ出かけることが予想され、その際に旅先の情報を集めるためのこれらのサービスがますます利用されていくと考えられます。