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「新宿2丁目が楽なのよ」と言うファリコ


iyamori(スナック)

***

たまに忙しいけどほぼヒマな、とある横浜のスナックの店内。

***

「てかですよ!
、、結婚してた間の2年間、SEXという行為そのものが無かったんですよ!!」(ファリコ)

一同絶句。
結婚したのに?
アレ?結婚する前は?


***

いつも1人で来店する常連のお客様のコッパさん(男性63歳)。
ママとは本当に長い長いお付き合い。
コッパさん曰く、ママとは「お客とママ」という関係以上では決して無い、とのこと。

うむ。
別に誰もそこは疑っていないと思うぞ???
てか、yamoは疑っていないし、別に以上でも以下でもどうでも大丈夫。

以下ってどんなだ 笑笑

コッパさんは本当にいわゆる「良いお客様」で、毎週2〜3回は通って来てくれる。
新参者であるyamoのお誕生日には夏、豪華な花束と、色々と差し入れも用意してくれた。
又、寿司を食べさせてやるだの、イタリアンの上手い店が有るだのと言っちゃあyamoを外に連れ出そうとしてくれる。
(この行為を「同伴のお誘い」だということをyamoは後で知る)
ところがyamoはこれをやんわりと断る 笑

「それを断ってはいけないというならここでのバイトは続けていけません」

ピシャリと断ってるな。
全然やんわりではないか? 笑

そこを経て結果、バイトを続けている。ありがたいありがたい。

そのコッパさんが、その日は珍しく女性を伴ってご来店。
見た目は地味で真面目そうだけど、気さくで明るいおばちゃんというイメージの女性。
全くのノーメイク。髪は白髪混じりで一つに引っ詰められて、上から下まで全てワークマンで揃えましたけど何か?という見た目。

ここに来る前に飲んでいたカラオケスナックで、席が隣同士になって意気投合して、もう一件行こうぜ〜という流れでお連れしたらしい。
で、連れてこられたもう一件もまたカラオケスナックなんだから、二人ともどんだけカラオケスナックが好きなのかって話しだ。

いいのか?それで。
いいんだな。それで。


女性はファリコと名乗った。
ファリコさんは55歳で現在は独身だそうだ。
とある有名大学の大学院をご卒業(法律)。
だからって現在どんな仕事に就いているのかってことは言わない。

コッパさんのウィスキーを🥃ロックでクイクイと飲む。つおい。


「え?お二人は子供って産んだことありますか?」(ファリコ)

「ママはね、男の子と女の子一人ずつ。二人」
「私は女の子二人」

「私は産んでません」

「、、、」(ママが困った顔でyamoを見る👀)

「、、、、え?なにがもんだいですか、、?」(yamo)

「ともだちも妹も産んでるんですよ」(ロレツが怪しいファリコ)

「(だいぶ酔ってるな〜)え?スミマセン、ファリコさんは産みたいんですか?子供」(yamo)

「もうムリだってことはわあってますよ」

「あ、、あ、じゃあ産みたかったんですか?でも産めなかったとかですか?」

「うみたいと思えばうめたと思おんです!!でも出来なかったんですよ!」

あ!はい、もう分かった!yamoちゃんここはもうママに任せなさい💪と、yamoの発言しようとするのを制止させてママ。

「ファリちゃん!アナタそれはもうどうしようもしょうがないじゃない。あなたさっきお歳おいくつって言ったかしら?」

「(コソコソと)55」(yamo)

「うんうん、、👍
もう自分を責めるのはよしなさい。子供が産めなかったなんて今更後悔したところでどうしようもないでしょ。ファリちゃんにはファリちゃんの人生があって」云々かんぬん。。。。

そうねそうねとyamo。


「いや!!お二人は何も分かってない!!
てかですよ!
結婚していた二年間、SEXという行為そのものが無かったんですよ!」

コッパさん居眠り中💤 

ママとyamoは絶句。


yamoは内心、そう来たか、なかなかヘビーなお客様をコッパさん連れてきたなという気持ち。

とは言え、

結婚はしてたのか。
それは最近の話しなのだろうか。
二年間全くの0だったのだろうか?
欲情しまくってやる気満々だっただろうに花嫁は。
てか、そういう2人だから「結婚」するもんだとyamoは理解しているが?
なぜ結婚に至ったのだろう??

あああ、、いかんいかん。
またyamoはすぐ人がちょっと呟いた程度のことを掘り下げたがる。

相手が酔っ払っていることを忘れてしまう。

でも止められないyamoの妄想。

あ!お相手が急に勃たなくなったのか?
重大な病気とか。
で、なければ男性にも色々と女には解らない都合が有るって言うしな。
そっちか。
「結婚相手には欲情出来ない男」が居るってこともあるかも(マジで?)。
結婚してみて分かるとかか?


不幸過ぎる。


***

「差し支え無ければでいいんですが、、」(yamo)

「なんですか」

「その元旦那さんとはどこで知り合って結婚に至ったんですか?」

ちょっと考えてからファリコさんは、マトモなコトキクンデスネと薄笑いを浮かべた。
何もかもに疲れてしまった為に、この瞬間まで思考を止めていたのにな〜ハアア〜ア〜という印象の顔つきから、「マジメにコタエテいいですか?」とも言った。

はああ〜あ〜じゃねえし。
そっちが話したがっていたはずだ。

とは言え、

yamoはママと目が合って👀、良いよ良いよ⭕️🆗ぜひ聞きたいよと請け負う。


「会社の同僚」

「普通ですね」

(こらyamoちゃん)肘でyamoにママ。

「(苦笑)、、結婚してからだったのか、それより前からだったのかまではもう今更すぎて思い出せないんだけど、仕事上で私の評価が彼より上がった時があって、、。その後も上がり続けて、、」

「あるあるですね。
てか、そこがSEX無しの理由なら(お相手が)クズで最低ですね」(yamo)

「クク、、そう。単なるあるあるだと私も思ったの」

「違ったんですね?」

「ケンカみたいにもなった」

「言える範囲で良いんですけど、結婚前には?抱かれていた?」

「一回だけ」

ーー‼️‼️ママとyamoは隠しようが無いくらい目を剥いた。

二人とも分かりやす過ぎ〜〜〜とファリコさんはママとyamoを指さして笑ってくれた。
ワハハハと泣きそうだったようにyamoには見えた。


女にとって好きな男に触ってもらえないという傷は深い。
触りたいのに近寄れないのも同じだ。


かわいそうに。
だいぶ傷ついている。
ひどいもんだ。

聞けば、元旦那さんという男性は、どうもガチのロリコンだったようだ。

結婚していた当時、毎日悶々と葛藤するファリコさんは、ある日夫のパソコンを勝手に開いた。
そこにはまさにそれっぽい画像が数々保存されていたとのことなので、ファリコさんの衝撃も想像に容易い。
年頃は13〜16、17歳くらいまで。
幼いイメージのフリフリドレスを可愛らしく着こなす女の「子供」の写真だ。

「不思議と気持ち悪いとは思わなかったの」

あああ、、なるほど、、と思った程度。

それよりも、

じゃあなぜ私と付き合ったりしたのか?
なぜ私に愛を囁いたりしたのか?


結婚しようよなんて言わなきゃ良かったじゃないか。

私のことなんて好きじゃなかったんじゃないのか?
だって、そもそも「普通の女」はムリなんだろう?
そういうことだろ?
生理的にムリだったんだろうよ。

だとすればだよ!!


好きだ言われて、
幸せになろうよなんてセリフを真に受けた自分はバカみたいじゃないか!!
真に受けて名字まで変えてよおおおお!!


ファリコ吠える 笑笑


ファリコさんは旦那さんだった人を深いところで許している。
傷ついてもいるからなかなかそこが気づけないでいるけれど、彼は彼で何がムリだったのかが分かっていなかったのかもしれないと、本当に深いところで「しょうがなかった」と諦めがついている。

出会うタイミングやシチュエーションが違っていれば親友になれたのではないかな。

と、yamoは思っている。
見た目よりファリコさんは良い女かもしれない。


よし!
しょうがない!
歌おう🎶
yamoも歌うよん♬


ファリコさんはそのロリコン旦那との離婚成立後、新宿2丁目に通い出したらしい。

ちょっと🤏
いわゆる普通じゃない場所に行ってみたかったのだと言う。

行ってみたら普通じゃないそこは、すごく居心地が良いと感じたのだと言う。
そこに集う人たちは陽気で元気で楽しいのだそう。
見た目に男なのか女なのかが分からない。
本当はどっちなの?と問う人は居ない。
分からないから良いという世界観の渦。
渦に巻き込まれてとにかく明るくて、その明るさに救われたのだと呟くようにファリコさんは言う。
ひどい言い方かもしれないけれどと断ってから控えめに、「最低じゃないと自分のことを思えた」場所だったのだそうだ。

分かる気がする、、というyamoも(よく知りもしないでイメージだけで言うのは)新宿2丁目さんに失礼かもしれないが、瞬間分かる気がしてしまった。

ちょっと行ってみようと思った場所がホストクラブではない辺りが良いね👍と思う。
上っ面だけでムダにチヤホヤされたいわけではない感じ。
(ホストの皆さん、又はホスト好きの皆さんスミマセン。偏見です)

とは言え、ファリコさんは離婚がいつだったのかyamoは聞けていないが、もう何年も新宿2丁目に通い詰めているらしかった。

その日の夜もファリコさんは、他のお客さんやyamoと小泉今日子や中森明菜を熱唱して🎤、深夜、閉店のお願いをしてお会計を済ませたからタクシーの手配かなと思いきや、「あ、駅に行く。これから新宿行く」と言って本当に駅に向かって歩き出し、どんどん遠のくファリコさんの背中に向かって、また来てくださいね〜と大きく声をかけたyamoに対して、振り向かないまま小さく手を振って返してくれただけだった。


***

誰もが自分と他者に優劣を付けて生きている。
そんなことないと言う人ほどそうだったりする。
yamoだってそう。
一々誰かと比べて勝手にソワソワと不安になる。

は!yamoも新宿2丁目に行ってみればいいのか? 笑
ムリムリ 怖い怖い 横浜のヒマなスナックでバイトが精一杯 笑


つまり、日常はいつだってドラマに満ちているってことだ。
yamoが生きるこんな狭い世界でだってドラマは日々展開されている。




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