見出し画像

人材の市場価値と社内価値

(Twitterはこちら → @yanagi_092)

市場価値と社内価値、サラリーマンの宿命だと思います。私も悩みに悩んだ末、退職という選択をしました。恥ずかしながら、私は典型的な終身雇用の会社で出世に失敗しました。本当に悔しかったし、どうにかならないかと暗闇の中でもがき苦しみ、軽い円形脱毛症にもなりましたが、私の実力不足もあって光が射すことはありませんでした。

しかし、苦しいときほど冷静に今の状況を分析して、まずは自分の立ち位置を理解することに努めました。そのうえで、今後どうしていくことが最適解なのかを検討しよう、という考えに至りました。

以下は、私が苦しかったときに頭で考えていたことを、少し面白く言語化したものです。かつての私のように、働くことに疲れた人や、先行きが見えず苦しんでいる人が、今後を考えるヒントになればと願う次第です。


従業員を「市場価値&社内価値」で4象限に分ける

終身雇用の日本企業であればどこも似たようなものだと思いますが、市場価値と社内価値で分けた場合、概ね以下のようになると考えられますので、各象限の「①最強」「②社内有名人」「③異端児」「④諦め組」ごとにコメントしたいと思います。

画像1

※各図の大きさは人数比の目安を表しています。また、下段は生息域を表しています。


①「最強」カテゴリー

画像2

最強ゆえに希少性も高く、市場価値&社内価値を合わせ持つスーパーエリート。このカテゴリーは原則的に本社コーポレート部門の社員を指しますが、出世の道があるにもかかわらず、本社部門の内向きな業務や社内政治に嫌気が差して、一定数は転職していきます。市場価値も高いので、転職先の選択肢もそれなりにあります。

一方で社内での出世を目指す人は、後述の「②社内有名人」とノリを合わせて、時と場合に応じて会社LOVEなキラキラ感も出すことができる、まさにオールラウンダー。日本型終身雇用の大企業における、ロジャー・フェデラーですね。

とはいえ、もともと絶対数が少ないうえに一定数は転職していくので、役員になる人も相対的に少ないのですが、将来的には知識も豊富な経営のプロとしての役員になるカテゴリーと言えます。

なお、「最強」カテゴリーの人は、最初から本社コーポレートの配属の人が多いですが、現場配属からMBA留学等を経て、コーポレートに異動するパターンが一定数見受けられます。しかし、会社からすると、1千万円以上の社費負担でMBA留学をさせて、コーポレート人材として経営のプロになって欲しいと思っている矢先に転職してしまうという、何とも悩ましい人たちでもあります。


②「社内有名人」カテゴリー

画像3

会社大好きキラキラ系。「俺、会社は~~であるべきだと思うんだ!」と真顔で語ります。会社の悪いことは絶対に言わず、変革を熱く語るものの、会社を根本からひっくり返すような変革は望んでいません。また、社内政治に長けており、どの上司に好かれると良いか等の嗅覚が凄まじいのもこの人たち。

「社内有名人」カテゴリーの人の多くは「現場⇔本社(事業統括)」のキャリアを歩みますが、ここでいう本社は事業部の統括(営業企画とか事務開発とかの現場統括)であって、「最強」カテゴリーの人達が所属するコーポレート部門の経験をする訳ではありません。とはいえ、現場と事業統括を行ったり来たりする訳ですから、所属カンパニーにおける事業の経験や知識がどんどん積み重なっていき、上手くいけば社内価値を極大化することができます。

このような背景から、「社内有名人」はある程度出世が見込まれる一方、市場価値が低いのであまり転職をしません。「転職しない&社内価値が高い」という背景から、役員になる数が圧倒的に多いカテゴリーと言えます。

一方で、社内政治や事業のことは詳しくなるのですが、財務諸表を分析したり会社法が理解できるような経営スキルは身についていないため、役員になってから慌てて勉強をすることになるも、既に遅いといった問題が散見されます。日本の役員の多くが経営の素人だとか、身内経営だとか言われるのは、この辺りが関係しているのではないかと思っています。

最近は社外取締役の設置の流れ(東証のコーポレートガバナンス・コード等)が進んでいますが、従来型の日本企業にはまだまだ難しい側面も多いのではないでしょうか。


③「異端児」カテゴリー

画像4

市場価値はそこそこ高いものの、出世コースを外れた専門家集団。社内有名人カテゴリーのキラキラ系に「あいつら、頭良いけどは会社のこと分かってないよな。バランス感覚が無いんだよ。」とディスられがちですが、異端児はコーポレート部門で会社の様々なことを知っているが故に、そこまで会社のことが好きではなく、社内有名人キラキラ系とは一線を置いています。

異端児は「本当に会社のことを分かってないのは君たちだよ・・・」と心の中で思いつつ、わざわざキラキラ系が盛り上がっているところに水を差すまでもない、と冷静に見ている陰キャが多い。

出世の壁に阻まれて冷や飯を食いますが、市場価値もそこそこあるため、近年ではこのカテゴリーからの人材流出が激しい。穴埋めをすべく専門人材の中途採用を試みるも、新卒しか採用してこなかったため、中途人材が定着できる文化がなく、すぐに辞めてしまう。

私はここのカテゴリーだったかな、、、いずれにせよ出世の壁は超えられなくて辛かったな(ボソッ

④「諦め組」カテゴリー

画像5

現場業務の知識と経験は豊富ですが、残念ながら市場価値は低め。転職サイトを調べてみても、「同業他社の求人&今より給料が低い」等の問題に直面し、「今の給料が高いから辞められない」という悩みを抱えます。やがて、出世の壁の存在を知り、降格しない程度にそこそこ仕事を回すことが最適解であることに気付き、終身雇用制度のなかで最強のコスパを実現していきます。

その結果、諦め組の高額給与を、安月給の若手・新人の頑張りで下支えするという公的年金と同じような構図になっています。こういったところからも、日本の終身雇用制度には限界がきているのだと理解しています。終身雇用で社員を抱え続ける会社は、本当に良い会社なのでしょうか。

画像10


不都合な事実を知ることが全ての出発点

画像7

いかがでしたでしょうか。不快に思われた方は申し訳ございません。しかし、どこの象限が良い・悪いといった話ではなくて、こういった不都合な事実に向き合うことが、本当の意味での働き方の改革に繋がるのでないかと思っています。

だって、出世しないことが分かってて、それでも頑張り続けるのですか?仮に「④諦め組」なら、頑張ることを止めて最強のコスパを狙い、もっと家庭を大事にするのも人生戦略の一つですし、多少給与を下げてでも市場価値の上がる職業(←会社ではなく「職業」という点が大事)に転職することもアリだと思います。

昭和的価値観に基づき、ただひたすら仕事を頑張ったところで、会社にとって都合のよい人員でしかなく、少なくとも令和の時代に報われることはありません。もちろん、報われる可能性はゼロではないので、同じ会社で頑張り続ける選択肢もあると思いますが。

いずれにせよ、この4象限のどこのカテゴリーに所属しているかを見定めないと、何も始まりません。自分の立ち位置を明確化することが、未来への戦略にも繋がるのではないでしょうか。

そして、若手の人は、こういった事実を前提として、どのような未来戦略を描きますか?若手の内に勉強しておくべきことも、その人のキャリア志向(「①最強」を目指すか「②社内有名人」を目指すか)によっても、変わってくるのではないかと思います。


不都合な事実と人事部の使命

画像10

一方で、どこの会社もこんな不都合な事実は教えてくれません。会社は「みんなに活躍してほしい」(←活躍って本当に都合の良い言葉ですよね・・・)とキレイゴトを言って従業員を働かせますが、入社10年前後の「出世の壁」で振り落した「③異端児」や「④諦め組」を待遇で報いるつもりはありません。

ここでちょっと視点を変えてみたいのですが、人事部の使命・目的について考えたことはありますでしょうか。彼らの仕事は「誰を昇格させる」だけではなく、彼らの大きな使命は「人件費ファンド」の管理・抑制です。大勢を出世させたら、ファンドがパンクしてしまいます。

近年の日本企業は収益状況が非常に厳しく、さらに「④諦め組」のコスパ最強従業員を支えるファンドも必要な状況(クビにできない&待遇も大幅に下げれない)にありますので、高度経済成長期のように簡単に「③異端児」と「④諦め組」を昇格させることが難しいこともあって、「活躍してほしい!活躍してほしい!」と連呼することしかできず、彼らも苦しい立場にあります。

日本人はお金のことを話すことがタブーな空気感がありますので、「活躍してほしい!○○の活躍推進!」「お金よりも活躍だろう(キラキラ」という根性論がフィットするのではないかと思います。海外だったら「で、結局いくら貰えるんだ?」と突っ込まれそうですが。

私の場合も、こういった不都合な事実に気づいたからこそ、転職に踏み切ることができたと言えます。なお、この辺りの話は、ジョブ型 or メンバーシップ型(+終身雇用)の話と親和性が高いのですが、また何かの機会で掲載したいと思います。

画像9

損害課からの出世を目指す

そして、私の新人時代の話に戻しますと、マツケンサンバ事件を経て損害課に配属された私は、会社を信じて出世を目指し、人生の全てを会社に奉げていくのです。

今後は、私がどのようにこのマップを歩んでいくのか等を書いていきたいと思います。

画像10

(続く)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?